フリーイベント後の自宅で/京流
フリーイベントをして、出たくも無かったけど一応打ち上げに少しだけ参加して。
アルコールが入った身体を冷ます為に、マンションの近くのコンビニで降ろしてもらって、ちょっと買い物して歩いてマンションまで帰った。
あー…ホンマ、早よ風呂入りたい。
時間がかかる特殊メイクは、落とすんも時間がかかる。
風呂入って頭から全身洗ってさっさと寝たいわ。
まだ明日最終調整のリハ入っとるし、何時間寝れんねんコレ。
コンビニの袋を持って、煙草を吸いながら星が全然見えへん夜空を目を細めて見上げる。
星は見えへんけど、満月か何かで月はえらい綺麗に見えた。
ちんたら歩きよるからなかなかマンションに着かへん。
コンビニからマンションへの道のりを歩くのは何となく好きやったりする。
涼しい中、つらつら下らん事を考えながら歩いて煙を吐き出す。
帰れば何や知らんけどよう喋る同居人が僕にまとわりついて来るから、1人でボーッと出来るし。
特に今日はフリーイベント行きたい行きたい抜かしとったけど、どうしても仕事が抜けれんかったらしくて。
僕としては来んでもえぇんやけど今度は写メ寄越せだの何だの電話かかって来てかなりウザかったな、アイツ。
何でか考えとる事がるきん事になって、マンションに到着。
もう夜が明けそうな時間やし、さすがに寝とるやろって思いつつエレベーターに乗って最上階へ。
煙草を携帯灰皿に入れて火を消して。
自宅の鍵を開けて玄関へ入るとリビングの電気は点いとって、聴き慣れた音楽がかかっとったから眉を寄せる。
アイツ起きとんかって思って靴を脱ぎよると、リビングの扉が開いた。
「京さん!お帰りなさい」
「うわ、起きとったん」
「そりゃ起きてましたよー。ライブは?どうでした?」
「別に」
「あー俺も行きたかったんすけど。仕事の調整とか今回出来なくて…京さんのあのメイクとか最強じゃないですか!」
「やっとる本人歌いにくいし最悪やけどな」
「写メ下さい」
「知らんわボケ」
部屋着に眼鏡、ついでに前髪縛っとるるきがテンション高く僕に近寄って来て。
廊下を歩く僕にまとわり付く。
ウザい。
何かライブ前に電話来て、ゾンビメイクなんやったら写メくれってめっちゃ言うて来とって。
ついうっかり喋ってもうた自分を恨んだわ。
溜め息を吐いて、リビングのソファに鞄を置く。
「えー写メ無いんすか写メ!俺だって京さんのゾンビメイク見たいのに虜の子達見てズルいですよー!」
「意味わからん事言うなアホ」
「京さんのケチ!」
「何やとコラ。そんな事言うてえぇと思っとん?」
「え、」
僕の後ろでギャーギャー煩いるきに舌打ちをして、自分の携帯を取り出す。
少し操作して呼び出す画像。
「オラ、薫君からや」
「は?え?」
るきに自分の携帯を見せつける。
るきは一瞬ワケわからんって顔して、じっと画面を見つめて驚いた顔した。
「これ…!」
「お前があんまり写メ写メ言うから、話聞こえとった薫君がそんくらい撮ったれよー言うて僕の携帯から撮ったんじゃボケ!何やねんお前薫君味方につけよってからに!」
「ちょっ、ちょっと下さいこの写メ!!」
「あかーん」
るきに見せた画像は、るきと電話終わった直後に薫君に撮られた僕の特殊メイクの画像。
上半身も真っ黒にしたゾンビの。
薫君め。
『ルキ君に宜しくな』とかおもろそうに言うとった所が腹立つわ。
るきが僕の携帯に手を伸ばすんを避ける。
「僕はケチやから?この写メるきにやる事は出来んわぁ」
「御免なさいすみません謝るんでその写メ俺に下さい京さんめちゃくちゃ格好良い…!」
「どうしよかなー」
「何でもしますから!」
「ふーん。ほなライブ来んなよ」
「あ、それは無理です!」
「何でもするんちゃうんかい。アホらし」
るきの即答の答えに飽きれつつ、まぁこんな写メぐらいどうでもえぇから、僕の携帯をるきに渡す。
必死なるき見るんおもろかったし。
風呂入って寝よ。
るきは携帯を受け取って、食い入る様に画像を見とった。
「うわー、PVでも観ましたけど、やっぱ京さん格好良いー」
「……」
「俺の携帯に赤外線で送って待ち受けにしよ。京さん有難う御座居ます!」
「はいはい」
「この京さんに生きたまま食われてぇー。絶対イケる自信がある俺」
「…キショ」
食ったら無くなるやん。
そんな勿体無い事せぇへんわ。
楽しそうにるきが僕と自分の携帯を操作しとるんを見て溜め息を吐いて風呂場へ向かう。
何でこんなファンみたいな奴と同居しとんやろ。
嬉しそうな顔を見ると、何も言う気になれへんのは。
諦めやと思っとく。
終
20110914
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