バカップルだから仕方無い/敏京
「京君何食べてんの?」
「飴」
「あ、いちごみるく?美味しいよね、これ」
「美味しい」
スタジオで休憩中。
ソファとテーブルが並べられた部屋で、テーブルの上に置かれとった菓子ん中から、いちごみるく味の飴を食べよると敏弥が隣に座って来た。
菓子入れる用か何かカゴの中にいっぱい入れられた飴を食べてはまた次に手を伸ばす。
美味いしな。
何か1回食べ出したら止まらん感じ。
「……京君、飴って舐めるモンだと思うよ?」
「やってこれ噛みやすいし。中の粉みたいなんが美味いねん」
「もー。飴噛むとか、京君欲求不満なんじゃねーの」
「はー?そんな訳あるか。ただの癖や」
「癖になる程欲求不満なの?」
「しつこいな」
敏弥は僕の顔を見て来ながらニヤニヤ言う。
ただ単にからかっとんはわかるけど、敏弥の表情と声色がムカつく。
じろっと睨むけど、にこにこ笑ったまま僕を見て。
もう敏弥なんか知らんって思ってまた飴に手を伸ばして包みを開けて口ん中に入れる。
したら敏弥に手首掴まれて、なん、と訝しげに敏弥の方を見た。
「京君、俺にも飴ちょうだい?」
「あ?勝手に好きなん取ったらえぇやん」
「京君のがいいのー」
「は。何、とし、…ッ」
敏弥が僕の方に向き直って、掴まれた手首がソファの背凭れに押し付けられた。
敏弥の顔が近くなって、一瞬何なんか理解出来ひんくて固まっとる間に敏弥に唇にキスされる。
敏弥の舌が口内に入り込んで来て、中で動きよって。
僕の口ん中の飴を捕らえようとしとんがわかって。
こんな所で何すんねんって思ったんと、ただ単に飴渡すんも癪やから舌で飴を逃がす。
したら、僕の手首を掴む敏弥の手の力が強くなった。
オラ、欲しかったらもっとちゃんと求めて来いや。
敏弥の空いとる片手が僕の後頭部に当てられて。
お互い、飴を奪い合う。
舌と口内の体温で、飴は段々と溶けていった。
息継ぎもままならんキスに、段々と息が苦しくなるけどお互い意地んなって唇は離さへん。
「……ッ、」
敏弥の舌を歯で軽く噛んで、拘束する。
その拍子に奥歯に持ってった小さくなった飴をガリッと噛んだ。
その音は敏弥にも伝わったみたいで。
歯を立てるんを止めたったら、甘ったるい口内から敏弥の舌が出てって。
唇に音を立ててキスをされて離れた。
口ん周りがお互いの唾液でベタついて。
舌を出して舐める。
「もう、噛むなよ」
「知らーん。取れんかったんが悪いんやん」
笑うと、敏弥は後頭部に当てた手で僕の髪を撫でて離れた。
そんでまた僕は、飴の所に手を伸ばして1つ手に取る。
「あーもう。京君欲求不満だから仕方無いね」
「そうなん。敏弥だけじゃ足りひんかもしれん」
「…怒るよ」
「嫌やわぁ。これで機嫌直し?」
敏弥と喋りながら包装を剥いた飴を歯で咥えて。
伸びをして敏弥の唇にキスすると舌で敏弥の口内に飴を突っ込んだ。
軽くしか唇は触れてへんけど、顔を離すと敏弥は嬉しそうにだらしない顔で笑って飴を舐めた。
単純。
キモい。
「んふふー」
「キショ。黙れ」
「またまたぁ。もう本当に京君可愛いんだから!」
「煩い」
取られるんはムカつくけど、僕が与えるんはえぇの。
そんな関係に甘んじる、敏弥も僕は結構好き。
「何やお前も飴噛むんかい」
「いや、確かにこれは噛みたくなる」
「この僕が相手やのに欲求不満とはどう言う事やコラ」
「もっと激しいプレイがしたいとか、そんな欲求」
「変態。勃起し過ぎて壊死しろ」
「無くなったら困るの京君だろ」
「困りません」
「まぁ舌と指で満足させ…ッ」
「黙れ変態」
「…痛い…」
人の事言うた癖に自分も飴をガリガリ噛んだ敏弥の、アホな事を言う顔面をべちっと叩く。
敏弥は痛がる反応をして顔を擦った。
でもすぐに笑って僕にくっついて来ようとする。
そう言う所がアホと言うか。
ウザい。
拒否る理由は無いけど。
「なぁ、」
「ん?どしたん堕威君」
「休憩中って、皆おるって事知っとる?」
「あ」
近づいて来た堕威君の言葉に、敏弥が悪いって事でもう一発シバいとく事にする。
アカンわー。
敏弥に流されてもうた。
「もー!何で叩くの!」
「何でも。離れぇや」
「絶対ぇヤだ!」
「ちょ、お前なぁ!」
「ヤだ!好きだもん休憩中でもラブラブしたいもん!」
「このアホ!」
「アホでいいから!イチャつこうよー!」
「嫌や!死ね!」
「嫌ー!」
「何くっついて痴話喧嘩しとんこのバカップル…」
終
20110902
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