レインボーローズ『奇跡』/京流



撮影を終えてメンバーと飯食って帰宅。
今日は京さんも飯食って帰って来るっつってたし、遅くなんのかなーって思いながら玄関のドアを開ける。

そしたら京さんの靴があったから、帰ってんだって何となくテンションが上がった。


自分もブーツを脱いで、手に持ったモンを抱え直して廊下に明かりが漏れてるリビングへ向かう。


「京さん、ただいまです。帰ってたんですね」
「んー、今さっき。もうシャワー浴びて寝、る」
「お風呂沸かしましょうか?」
「え?うん、るき、それ何?」
「あ、これ撮影で使ったんすけどあまりに珍しいんでもらっちゃいました。レインボーローズです」
「気持ち悪」
「いやいや、京さん」


ソファにいた京さんの方に回って話しかけたら、京さんは俺の方を見て一瞬固まる。

俺の手には撮影時に使ってで貰った色とりどりの薔薇の花束。


薔薇っつったら赤とか白が主流だけど、俺が持ってんのは花びらが虹色の薔薇。
確かに気持ち悪いかもしんねーけど。


嫌そうに顔を歪めた京さんに苦笑いして、ソファの隣に座る。


「うわ、ホンマに薔薇やこれ。本物?」
「本物ですよ。白い薔薇に特殊な液体を吸い上げさせて内部から着色するらしいです」
「はー…人間は何でも自然歪めて人工物造るなぁ…」
「はは。でもこんなのあるの知らなかったし、何かよくないですか?」
「いや、薔薇の概念覆されるわ。気持ち悪い」


京さんにレインボーローズの花束を見せる様に差し出すと、京さんは薔薇の花を手で触って。
室内に、薔薇の匂いが充満していく。


「これ高いらしいですよ。普通の薔薇より」
「ふーん。薔薇なんか買わんからわからんわ」
「ですよねー」
「この気持ち悪い薔薇飾るん?」
「んー…花瓶ねーし…。あ、京さん風呂入りましょうよ、風呂」
「は?」
「風呂に薔薇の花びら浮かべるの良くないですか?」
「え、何それ」
「じゃ、早速風呂溜めて来ますね!」
「……」


呆れた視線を向ける京さんを置いて、薔薇の花束を持って風呂場へと向かう。

自分で薔薇買って風呂に浮かべるなんて事しねーし。
せっかく貰ったんだからやってみてーじゃん。











「…で、お前も何で風呂に来とん」
「え?一緒に入る為ですけど」
「もー何なんお前。僕疲れとん。鬱陶しい」
「まぁまぁ、お風呂綺麗ですよー」
「……お前ってホンマ図太い神経なったよな」
「京さんのおかげです」
「は、ウザ」


嫌そうな顔をした京さんは全裸になって浴室へと入る。
俺も服を脱いで、京さんの後に続いた。


「うわ、ホンマに薔薇浮かべやがった」
「良くないですか?」
「良くないわ。この薔薇色キモいやん」
「こう言うの1回やってみたくて」
「頭ん中も湧いとんなー」
「京さん背中流します」
「んー」


広い風呂に湯を溜めて薔薇の花束の花びらを全部ちぎって(スゲーめんどうで途中で嫌になった)湯に浮かべた。
何か花びらがカラフルだから、一気に華やかになった気がする。


でも薔薇浮かべてる気がしない。

匂いは薔薇だけど。


京さんの背中を流して、俺も身体を洗って。
虹色の薔薇の花びらが浮かんだ浴槽へと身体を沈める。


京さんが選んだ男2人でも余裕で入れるそこに、いつもの様に京さんに背中を合わせてぴったりくっつく。


「…薔薇の匂いきつ…」
「これ見れば見る程、薔薇に見えないですよね」
「やから気持ち悪い色やん」
「気持ち悪くはないですって」


後ろから聞こえる京さんの声に笑いながら、花びらを1枚手に取って目の前に掲げる。


「京さん、このレインボーローズの花言葉は『奇跡』だそうです」
「ふーん」
「虹色って同性愛者とその人権擁護運動のシンボルカラーなんだそうですよ。レインボーローズそのまんま名前を冠した団体がいるぐらいで」
「…何でそんなん知っとん」
「この薔薇珍しいんで、どんなのかなーって調べました」
「あそー」
「俺らに合いそうな花だと思いません?」
「奇跡が?ありえんわ」
「あ、奇跡じゃなくて必然的な」
「うん、黙って」


京さんの溜め息が聞こえて来て、湯の中から出て来た京さんの濡れた手が俺の頭を軽く叩いた。


頭を後ろに倒して甘える様に、京さんの首筋に擦り寄る。


俺にとったら、一緒に暮らし始めた時は奇跡みたいなモンだったよ。
だって京さんが、俺と一緒に住むなんて思わなかったから。


今はもう、こんな風にしても大丈夫なぐらい。

俺の好きにさせてる京さん。
俺をそう言う行動にさせてんの、京さんじゃん。


彩りのある花びらが浮かぶ湯の中。
京さんの体温が心地良い。


昔は奇跡。

今は2人で培った、必然。




20110816



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