お祭りデート/敏京
「あっつい。何でこんなに暑いん。夜やのに腹立つわぁ」
「ホント暑いねー。クーラーの効いた部屋の中にずっと居たい」
「何や人も多いし…」
「あー…今日花火大会あったみたいだよ」
「ほうなん?皆こんな糞暑いのによう行くわぁ」
「…ね、俺らも行ってみようよ」
「はぁ?もう終わっとる時間やろ」
「でも屋台はまだあるだろうしさー。ね、今年花火大会行ってないし、行こうよ」
「んー…」
「かき氷買ってあげるからー」
「やっすいなぁ」
「イカ焼きも付けます」
「ふは、もうホンマお前はアホやぁ」
仕事帰り、京君と晩ご飯食べて帰ろうかって歩いてる時。
タクシー拾う前からスゲー人で。
近くで花火大会があったみたい。
いいなー花火大会。
京君と花火デートしたいなー。
もう21時を回ってて、終わったから皆帰ってんだろうけど。
花火大会って終わってもまだ屋台とかやってんだよね。
呆れた様に笑う京君の肩を抱いて、人の波とは逆らって歩いてく。
京君は溜め息を吐いて俺に付いて来た。
何だかんだ言って、京君優しいから。
ちょっと我儘言っても甘やかしてくれるんだよね。
「京君、まだ屋台あるよー。何食べたい?」
「かき氷とイカ焼き買ってくれるんやろ?」
「うん」
「後はー…たこ焼きと林檎飴買って」
「了解」
人が疎らになってる花火大会の会場。
でも屋台がスゲー並んでて、まだやってるしよかった。
花火は見えなかったけど、京君とお祭りデートしてるみたい。
「京君ーかき氷は何味?」
「いちご」
京君が欲しいって言ったたこ焼きとイカ焼き、林檎飴も買って。
俺がかき氷買ってる後ろでたこ焼き食べてる京君とか。
もう、何でそんなに可愛いの。
「はい、いちご。練乳付きだよー」
「ありがと。持っとって」
「俺にもたこ焼き頂戴」
「勝手に食ったら」
「あーん、して」
「は、絶対無理。ここ外やで」
「外じゃなきゃいいの?」
「どうやろ」
ふっと笑って京君が、半分ぐらい食べたたこ焼きを渡して来て。
俺の手からかき氷を取る。
こう言う所のって、雰囲気もあって美味しく感じるよねー。
たこ焼きを食べながら、かき氷を食べる京君を見つめる。
「他欲しいのある?」
「んーん。飯食いに行くしもういらん」
「え、食べに行くの?」
「うん。屋台だけやったら腹膨れへん。甘いモン食いたい」
「林檎飴買ったじゃん」
「アレは持って帰るヤツ。なぁ、どっか座ろうや」
「そうだね。あっちの暗い方行こっか」
「ん」
屋台がたくさん並んでる中、石の階段がある暗がりを指差すと京君は食べながらそっちに歩いて行く。
多分、花火が上がってる時には観客がここに座ってたんだろうなって場所に、京君と2人で並んで座る。
少し離れた場所で、屋台が並ぶ明るい場所を眺める。
「美味しい?」
「うん」
「ちょーだい」
「ん」
「あーん」
「も、お前しつこい」
とか言って。
暗がりだったからか、京君はストローみたいなスプーンにかき氷を乗せて俺に差し出して来た。
それに食い付くと、冷えたいちご味が口の中に広がる。
そしてまた食べ始める京君の横顔を見ると、嬉しくてついニヤけちゃう。
「大好きだよー京君」
「うわ、くっつくな。外や言うとるやろが」
京君の肩を抱き寄せようとしたら京君にじっと睨まれた。
暗闇に慣れた目は、京君の表情もよく見える。
そんな嫌がんなくてもいいじゃーん。
さっきはあーんしてくれたのに。
気紛れなんだから。
「…来年は花火も一緒に見たいね、こうして」
「……せやな」
ちょっとだけ、京君の方に身体を傾けて肩をくっつける。
人も疎らになって、屋台の人達も片付けに入ってってんだろうなって景色を見ながら。
片側の京君の体温が、心地良い。
いいね、夏の思い出。
「もういらん。イカ焼き寄越せ」
「ちょ、せっかく買ったのに全部食えよ」
「やって飽きる」
「イカ焼きは食べなよ」
「嫌」
「嫌ってもー。我儘ちゃんなんだから」
「キモい」
そんな所も可愛いと思っちゃう。
京君大好きだから、別にいいけどね。
終
20110810
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