だってそれはお互いが依存/京流




携帯を眺めて、折り返しの着信もメール受信も無いのに溜め息。
仕事の休憩中、喫煙所で煙草を吸いながらずっと携帯をイジる。

そんな事しても京さんからの連絡はねーけど。


煙を吐き出して煙草を持つ手で買った微糖缶コーヒーを取って、口をつける。


「ルーキ。どしたそんな携帯ばっか眺めて」
「れいた。やー…京さんから連絡ねーなーって」
「京さん海外じゃなかったっけ」
「海外なんだけど…」
「時差とかそんなんあるんじゃね」
「んー…」


休憩中だから、れいたも斜め前に座って一緒に煙草吸ってて。

少し苦味のあるコーヒーを流し込んで、れいたに曖昧な返事をしながら煙草を吸う。
胃に悪いんだろうなーって思いながら、やめらんない。


「やー…俺が心配する事じゃねーかもだけど、Wackenの事がさー…何か、ツイッターとか見てると心配で」
「京さんが?」
「ん。京さんだったら1人で抱え込んで、1人で自分を追い込む人だから。ま、すぐに駆け付けらんねー俺が心配してもどうにもなんねーんだけど。京さんもガキじゃねーんだし」
「ふーん?」


そう言って、携帯を閉じて自分の脇に置いた。
煙草の灰を灰皿に落として。


まぁ確かに、海外のバンドとか見ると日本人は見劣りするかもしれないし。
京さんも、もっと誰にも負けないぐらいの喉が欲しいってずっと言ってたのはわかってる。



ツイッターの京さんの言葉に、心配になるのはお門違いで失礼になるって事もわかる。
でも、1人の人間として、好きな人として心配はしていいんじゃねーかって考えもある訳で。


海外では愚痴でも何でも吐き出す為に連絡くれてた京さんが連絡くれなくなるのって、相当自分を追い込んでるなって事だから。


大嫌いな海外で、あの想いを吐露して。
今はどんな気持ちで過ごしてるんだろうって思うと、京さんの傍に行きたいって。

そんな感情が芽生えて来たんだ。


「あー京さんに会いてーなー」
「お前そんな事言うと本気で海外行きそうだから、仕事あってよかったわ」
「はは。確実行くよな。呼ばれてねーのに。呼ばれたら行くけど」
「パブロフの犬かよ」
「うーん。だって京さん、昔っから呼び出すのって何かあって必要な時だったからさ」
「…昔、なぁ」


れいたが目を細めて、何かを思い出す様な表情をして。
フーッと煙を吐き出す。


「昔のお前は手が付けらんねー程馬鹿だったよなー」
「はは。れいちゃんには色々お世話になりました」
「ホントによ。今は別の意味で馬鹿だけどなー」
「馬鹿馬鹿うっせーよ」
「ま、同じ馬鹿なら今の方がいいって言うね。惚気聞かされてウゼーけど」
「惚気てねーよ。日常報告」
「それが惚気なんだっつの」


そうかなー。
ただ京さんとの生活、話してるだけじゃん。


でもまぁ、昔よりは京さんとの関係も安定してて。
京さんも昔みたいに自分を傷付ける方法を取らなくなったから。
心配だけど、まだ安心、かな。


「あー…そろそろ戻っかなー」


休憩も終わるし、煙草を揉み消して。
少し残った缶コーヒーを飲み干す。

れいたも煙草を消して。
立ち上がって、少し伸びをした。


「じゃー残り頑張るかー」
「今日は何時に帰れんだろうな」
「わっかんねー」


れいたと話しながら、喫煙所を出る。

そん時、手に持った携帯が震えてメール受信を伝えて来た。

携帯を見ると、京さんから。


一言だけの内容だったけど、口元がニヤけんのを感じた。


「メール、来た。京さんから」
「よかったじゃん」
「大丈夫っぽい」
「そー。ならルキも大丈夫だな」
「何だよソレ」
「だってお前、京さん馬鹿じゃん。だからだよ」
「ん?」
「京さんの事、好き過ぎだって事」
「わかんねーよ」


苦笑いをして廊下を歩く。
れいたは笑ったまま、それ以上の事は言ってくんねーから、そのままになって。


京さんの事、心配してる俺の方が、京さんに安心させられてんなって。
後で気付いた。




20110809



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