好きって事やから/敏京



「…そんでな、さっき行こう思ったんやけどやっぱめんどなって止めたん」
「そっかぁ。ま、それはそれでいいんじゃない?」
「そやろ。あーもう、帰りたい。家帰ってゲームしたい」
「ゲーム好きだねー」
「敏弥もやんか」


仕事の休憩中、ソファの端っこで敏弥と話しよって用意されたお菓子に手を伸ばしながら話す。

あ、このチョコのヤツ美味い。


「そうだけど。……ね、今日も京君ち行っていい?」
「別にえぇよ」


食べよったら、敏弥の顔が近付いて来てこっそりと言われる。
返事をすると、敏弥の表情が嬉しそうになって。

髪の毛も長いし華奢やし、付き合うまでは思わんかったけど、そう言うんが可愛いなって思ってまう。
僕よりデカい癖に。


「敏弥、お茶淹れて。熱いん」
「自分で淹れて来なよー」
「早よ」
「はいはい、緑茶でいい?」
「ん」


敏弥は僕に言われて、ソファから立ち上がってお茶のセットとポットが置いてある所に歩いてった。

立ち上がる時、敏弥は僕の髪を軽く撫でて。

誰かに見られたらどなんすんねんって思いながら、撫でられた髪を直しながら周りに視線を移す。


メンバーは各々好きな事しとってこっちは見てへんかったけど。


敏弥と付き合って、まだメンバーに言うてへんから。

付き合う前から仲良かったけど、付き合ってからは何処までがボーダーラインでメンバーとしてのスキンシップなんか、ようわからん。

あからさまに人前でイチャつく趣味はないけど、いい加減コソコソすんのも嫌やし。
さっさとメンバーに言うてもうたらえぇんちゃうの。


コソコソするんて、メンバーを信用してへんくて言うてへん様で嫌やし。


何か敏弥は先に薫君に報告したい言うとったけど…ならいつ言うねんっちゅー話やんなぁ。


そんな事を考えながら、ボーッと敏弥の姿を見て、お菓子を口に運ぶ。
食べまくっとったら口ん中甘くなって来た。


「はい、京君お茶」
「どーも」
「熱いから気ぃ付けなよー?」
「いけるし」


敏弥は僕と自分の分のを紙コップに淹れて。
1つを僕に差し出して来た。


それを受け取って、軽く息を吹き掛けてゆっくりと口を付ける。


「あ゛つ…ッ!」
「ほら熱いって言ったじゃん。大丈夫?火傷してない?」
「いたー…むかつく…」


思ったよりもお茶が暑くて、思わずデカい声が出てもうた。
眉を寄せて、慌てて紙コップをテーブルに置く。

舌先がヒリヒリして顔を歪めて舌を出すと。
敏弥が僕の頭を両手で掴んで、顔を近付けて僕の舌を見に来た。


近いって。

心配そうな敏弥の顔が間近に見えて。

そのままキスされそうな距離に思わず後ずさりそうになった時。


「何しとん敏弥。京君襲うなや」
「ぁた。…なーに、薫君。京君が舌火傷してないか見てるだけだもん」
「もー離れぇや敏弥!死ね!」


上から薫君の声が降って来て、びっくりした。

ソファの後ろから、苦笑い気味の薫君が手に持った資料で敏弥の頭を軽く叩いた。


こんなシーン薫君に見られてもうたやんか!

最悪や敏弥死ね!

ムカつく!


敏弥が僕の頭から手を離して離れた。


「薫君聞いてや。敏弥わざと熱い茶を僕に飲ませたんやで」
「あーそうなんやー?敏弥酷いなぁ」
「ちょ、違うでしょ!俺熱いっつったじゃん!」
「酷いやろー?もう敏弥アカンわぁ」
「ホンマやなー」
「ちょ、2人共酷いー」


薫君は目を細めて僕の言葉に同意しよって。
敏弥はオーバーに手で顔を覆った。


「でな、薫君。そんな酷い敏弥が薫君に真剣な話があるから今度のオフに薫君ちに行ってえぇ?」
「えっ?京君?」
「ん?そうなん?別にオフん時来るんはえぇけど…」
「ホンマ?ほなXX時ぐらいに敏弥と行くわぁ」
「わかった。待っとるわ。京君これ、例の資料な」
「ん」


そう言うて、手に持っとった資料を僕に渡して薫君は去ってった。


残されたんは、また僕と敏弥。


「ちょっと京君。薫君ちに行くのってもしかして、あの話?」
「やって敏弥、いつまで経っても言わんやん。うじうじしとるヤツ嫌や」
「う…、……でもでも、メンバーに言った方が堂々とイチャイチャ出来るよね!俺頑張って薫君に言うよ」
「イチャイチャする予定はありません」


でも敏弥と付き合っとる事を、後ろめたい事にしたくないから。
認めて欲しいって気持ちもあるし、このメンバーなら大丈夫やろって信用しとるし。


「あー…次のオフ緊張するー…親に結婚の挨拶する心境だよ」
「アホちゃうの」


アホな事言う敏弥の頭を軽くぺちっと叩く。

八重歯見せて笑う敏弥は、やっぱかわえぇなって思った。




20110802



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