ベッドの上での日常会話/京流




ベッドの上。
俯せに身体を横たえて、枕に半分埋めた顔を隣に上体を起こして煙草を吸う京さんに向ける。

もう背中から肩、腕へと広がって手の甲まで描かれた刺青で煙草を持つ手がめちゃくちゃ綺麗。


空調の効いた部屋でコトに及んだのに、終わるとじっとりと汗ばんで暑い。

荒く息を吐きながら呼吸を整えて、肘を付いて少しだけ身体を起こした。


「…京さん、一口」
「…ん」


俺の言葉に、緩慢な動きで京さんが持ってた煙草を差し出された。

それを受け取って一口吸い、煙を吐き出す。

自分の吸ってるのとは違う。
京さんがいつも吸ってる匂い。


有難う御座居ます、と言って京さんに煙草を返すと京さんも一口吸ってベッドサイドに置いてる灰皿で揉み消した。

その時、背中の刺青が見えて。

京さんの背中は、俺と背丈もそんな変わらないのにスゲーでかい。


ライブ中は特に存在感が半端無いんだけど。


京さんから貰った、京さんのバンドスケジュールの用紙を見ても。
後半はほぼライブぶっ通しで。

しかも海外。


国内だけに留まるのは勿体無いし、海外ファンも待ち望んでる筈だから。
仕方無いと言えば仕方無いけど。


俺もライブツアーあるし、ほぼ会える機会ねーなぁ…。

それはそれで寂しい。


そんな事を考えながら、京さんの腕に手を伸ばして素肌を撫でる。


「…なん」
「京さん後期ライブばっかじゃないですか。海外だし。寂しいなーって」
「いつもの事やん。国内もあるし」
「そうですけど…もうすぐ海外行って、帰って来たら国内ツアーで、また海外ツアーじゃないですか。あれスケジュール過密過ぎですよ」
「僕に言われても知らんわ。僕やって海外や行きたないし」
「俺もツアーあるし、下手したら3ヶ月会えないかもしれないんですよー」
「ふーん」
「はー…京さんのライブ行けるかわかんねーし、寂しいなー」
「あーるきの顔見んで済むからえぇなぁ、それ」
「……」


しつこく、京さんの刺青を撫でる様に腕を触ってたら鬱陶しかったのか振り払われた。
京さんを見上げると、鼻で笑って。

何その表情めちゃくちゃ格好良い。

言ってる言葉は意地悪だけど。


肘を付いてんのが怠くなって、京さんの方に身体を向けて枕に頭を預けた。


「じゃ、テレビ電話しましょうよ、テレビ電話」
「嫌やそんなん」
「あー…でも3ヶ月禁欲しなきゃいけねーのってキツいですよね」
「…1人でしとったら」
「えー」
「もうそんな思考回路のるきには付き合い切れんわ」
「…京さんと同じ形のあったら1人でするんで型どって下さ、」
「うっさいわボケ。キショい事言うな!」
「ッてぇ…」


話してる途中で、京さんに思い切り殴られた。
殴られた場所を手で押さえながら京さんを見るとめちゃくちゃ嫌そうな顔。

冗談じゃん。

本気で京さんと同じ形あったら使うけどね。


「嘘ですよー。本物の京さんがいいですもん」
「触んな。もー何なん3ヶ月ぐらい『待て』しとけ。嫌ならメンバーとでもヤッて来い」
「ひでー。京さん以外の男とヤる意味わかりませんよ!」
「知らんわ!もーお前何なん性欲どっかに置いて来いついて行けんわ」
「まだ若いんで」
「…ふーん。あっそー。ほなもう僕若くないから無理。出来ひんから出来るヤツ探しに行きー」
「いやもう京さん以外とする気無いし、出来ないんで嫌です」


ぺしってさっきとは打って変わって軽く額を叩かれて。
寝転がったまま京さんの方に寄ってったら一瞬だけ眉を上げた。


だってもう、京さんとのセックス経験したら他は物足り無い、絶対。
今でスゲー満足してるし。


ツアー中会えないのはいつもの事だけど。
やっぱ寂しいじゃん。


触る事も、キスする事も、セックスする事も。

当たり前に出来無い忙しい日常で。


音楽的に充実してると言えばそうなんだけど。


京さんにも会いたいし。

でもライブはやって欲しい。
この矛盾。


人間は我儘だからなー。


そんな事をぐるぐる考えながら、京さんの顔を見上げる。


「あ!じゃーテレビ電話でお互いヤリませんか。テレフォンセックス」
「……ホンマ何なんコイツ」


呆れて溜め息を吐く京さんの視線。


だから好きなんですって。

京さんも。
京さんとのセックスも。




20110728



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