バカップルがする事/敏京
「京君ゲーセンある。寄ってこーよ」
「えぇよ。何や久々にゲーセン行く気ぃする」
「なかなか行かないよね。あ、俺格ゲー強いから」
「は?僕のが強いし」
「じゃー対戦ね。負けたら勝った方の言う事聞くってどう?」
「えぇな、それ。絶対負けへんし言う事聞かしたる」
「俺も負けないからね」
敏弥と仕事帰りにご飯食べに行って。
繁華街んトコだらだら歩きよったら敏弥が見つけたゲーセンに入る。
ゲーセンとか久々やー。
深夜に近い時間帯やけど、人はまばらにおって。
ゲームの台数も多そうやし。
お互いゲーム好きやし、敏弥には負けへんからな。
敏弥に何言う事聞いてもらおうとか考えながら敏弥と一緒に対戦する台を選ぶ。
「京君これは?」
「ん、じゃーこれ」
「よっしゃ。負けねーぞ」
「僕が勝つし。お前絶対言う事聞けよ」
「京君こそ」
笑う敏弥と拳を合わせて、それぞれのゲーム機の前に座る。
こう言うんに座るんとかホンマ久し振り。
よっしゃ。
負けへんでー。
「さて京君、何でも言う事聞いてくれるんだよね?」
「……。…何でお前あんな強いねん…ムカつく」
「そりゃ京君が何でも言う事聞いてくれるなら手加減しないよ」
「腹立つ。死ね」
「そんな事言わないの。じゃ、一緒にプリクラ撮ろ」
「は?」
「プリクラ。撮った事ないじゃん。ちゅープリ撮ろうよ」
「ちゅープリ?」
「キスしながらプリクラ撮るの」
「は!?嫌ムリ。何で僕がそんな事、」
「対戦で負けたら、勝った方の言う事聞くって約束だったよね?」
「………」
糞。
いつも家でゲームしよったら僕が勝つのに。
何で今日に限って勝てへんねん。
しかもプリクラとか。
キスしながらプリクラとか。
そんなキモい事。
ホンマ敏弥色々ムカつく。
「京君…一度約束した事も守れないの?男の癖に」
「……、…あ゛ー!もう!撮ればえぇんやろ!撮れば!」
「やった!ささ、行こ、京君!」
「引っ張んな離せ!」
もうしゃーない。
賭けに乗ってもうたん僕やし。
プリクラぐらい撮ったるわ。
嬉しそうに笑う敏弥に手を引っ張られてプリクラコーナーへと連れて行かれる。
ムカついて振り解いても気にする様子もない敏弥はききとして機械選んどった。
さすがにプリクラコーナーにはあんま人おらんかったけど…男2人でプリクラって撮るモンなん?
「京君これで撮ろ」
「もー何でもえぇわ…」
「早く入って入って」
「はいはい」
はー。
敏弥めっちゃ楽しそう。
敏弥が選んだ機械の中に入って。
金入れとる敏弥の背中を見て、溜め息。
キスとか普通にする事やのに。
こんな狭い機械ん中入って、プリクラとして残すって思うと凄い嫌やねんけど。
もう普通に撮るだけやアカンのか変態め。
敏弥が金入れたら、嫌に明るい声の女のアナウンスが流れて。
自分の複雑な心境と真逆の声に余計憂鬱んなる。
「はい、京君こっち来てー」
「……」
「最初普通に撮るよー」
「……」
操作した敏弥は、僕の手を引いて、機械ん中の真ん中ら辺に立った。
うわ。
画面に僕普通に写るのに、敏弥普通に立っとったら首切れとるし何やねん背ぇ高いからって腹立つ。
そんな事を思いながら、屈んだ敏弥は僕にベッタリくっついて笑って。
カウントダウンと共に、不機嫌そうな僕と楽しそうな敏弥のプリクラが取れた。
「もー。京君笑ってよ」
「知らん」
「あっ、ほらほら次!キスしよ」
「……ちょ、」
そう言われて、顔を無理矢理敏弥の方に向かされる。
別にえぇけど…もうちょっとこう丁寧に扱え。
僕を。
「もうホンマむかつく、お前」
「え、っ」
何でもかんでも敏弥に言われるままするんも癪やったから。
敏弥の首に腕を回して引き寄せて、唇に軽く噛み付く。
目ぇ開けたままキスしたら、敏弥は一瞬目を見開いて笑みの形を作って閉じられた。
すぐ僕の腰と後頭部に敏弥の手が回って。
噛み付いた唇に吸い付いて何度かキスしたると。
敏弥の舌に下唇を舐められて、薄く口を開くと舌が入り込んで来た。
「……ん…ッ」
その舌に舌を絡ませてキツく吸い付くと敏弥が小さい声漏らして、ちょっと気分がえぇ。
何度も角度を変えてキスをして、わざと音を立てて唇を離すと。
敏弥と目が合って、軽く触れるだけのキスされた。
いつの間にか、プリクラを撮る言うよりキスに夢中になっとって。
撮影は終わっとったみたい。
「あ、いっぱい撮れたね」
「うわー…」
最初の普通に撮ったん以外は全部僕と敏弥がキスしとる写真ばっか。
しかもちゃんと写っとるわ。
何これ。
痛すぎる。
「これとこれとー、これも」
「アカン選ぶな」
「選びますー。京君だってノリノリだったじゃん」
「それとこれとは別。って、あ゛ぁッ!」
「煩いなぁ。もう選んじゃったもんねー。さー落書きしよー」
「ホンマ腹立つ…」
「はいはい、拗ねないのー」
「拗ねてへんし」
機械から出て、落書きするっぽい所へ。
敏弥の後ろをついてっただけやけど。
敏弥は終始上機嫌。
「じゃ、これ半分こしようね」
「いらん」
「いりますぅー。俺携帯に貼るから、京君も貼ればいいよ」
「は!?貼る気なん!?」
「当たり前。このちゅーしてる京君の顔ちょーかわいー」
「やめろアホ。誰かに見られたらどないすんねんアホ」
「見せつければいいじゃん」
「嫌や死ね。お前ホンマありえん。そんな事したら許さんで」
「ふふ、京君とのちゅープリ嬉しいなー」
アカン聞いてへん。
ゲーセン内のハサミで切られたプリクラを半分敏弥に渡されて。
見事にキスしとる写真ばっかなんやけど…恥ずかしいわ。
ヘコむわ、こんな事した自分に。
敏弥とキスするんは好きやけど。
敏弥が全部落書きしたんやけど、ようこんな恥ずかしい事書けるわって言葉ばっかなんやけど…何これ。
ホンマ何これ。
ラブラブちゃうでな、ホンマに。
帰るかって事で、タクシー乗り場まで歩きよる間も敏弥は嬉しそうにプリクラ眺めとった。
そない嬉しいんか単純なヤツ。
男同士で、とか。
キスしながら、とか。
そんな痛い事あるかって思うけど、結局は敏弥の嬉しそうな顔見ると撮ってよかったかと思う自分が腹立つ。
恋人同士なんやから、えぇやんな。
そう思いながら、しまう場所がわからんくて手に持っとったままやったプリクラに視線を落とす。
…ま、敏弥かっこえぇ感じに写っとるから、許したるわ。
次は対戦絶対負けへんで。
終
20110723
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