待て、ぐらいは出来ます/京流




今日は比較的早く仕事が終わって。
でも京さんは撮影で京都行ってるし、帰ってもちゃんと飯作る気しねーなー。

最近暑いし、京さんと飯食うって大義名分なけりゃ手作りもしねーし食う気もしねー。


ま、あんまり京さんと時間が合う事とかなかなかねーんだけど。
都内にいないってわかってて家に帰ると、誰もいねー部屋も格別侘しく感じるっつーか。


メンバーと飯食いに行く気にも今日はなれなくて、一人で京さんと住むマンションに帰って来る。


コーディネートの為に履いたブーツを脱いで揃えて。


廊下を抜けて、リビングへと入って手探りで電気を点ける。
眩しさに一瞬目を細めて、いつも京さんが座るソファへと身を沈めて息を吐く。


大きな皮張りのソファに寝転がってソファの上に置いた鞄の中に手を突っ込み、手探りで携帯を探す。


京さん撮影終わったかな。
電話して大丈夫かな。


京都か。
一緒に旅行行こうって言ってるけど、実際問題2人が重なる長期オフなんて早々ねーし。

行くならライブ遠征とは違って豪華に行きてーしな。


…過去俺が貢いだ、京さんが使わなかった金って結構あったし。
何で使ってねーんだろ。

まぁ渡した金だから京さんがどう使おうが俺には関係無かったんだけど。


昔、自分がしてた事を思い出してたら、やっぱ京さんの声が聞きたくなって。
リダイヤルから京さんの番号を呼び出してコールする。


今の時間だと多分、撮影は終わってるだろうし。
京都だから、実家に泊まるとは言ってたけど。

もう実家かな。
したら電話出んのも微妙か。


そんな事を考えながら、コール音を聞いてると。


『…はい』
「あ、京さんお疲れ様です」


京さん独特の声色が耳に届いて。
本人がいるワケでも無いのに寝転がってた身体を起こしてソファの上に正座する。


『おー』
「撮影は終わったんですか?」
『終わったで。寺で撮影とか初めてやったし、えぇ写真なったわ』
「うわ、楽しみにしてます」
『関西しか買えんらしいでー。残念やなー』
「マジすか。…京さん事務所から貰えますよね!」
『知らーん』
「…絶対手に入れますから!」
『はぁ?んな必死んなってキモいわ』


電話口で、心底呆れたって感じのトーンになった京さんの声。

そんな声も、普段喋る少し舌足らずな高い声も、好き。
歌声も好きだし、京さんの声って総じて落ち着く。


撮影はどうでしたか、と聞くと京さんは撮影で行った場所とか、今日あった事を話してくれる。

機嫌が良さそうな声に、ホントにいい画が撮れたんだろうなって思って嬉しくなった。


「京さん今家ですか?」
『せやで。やっぱ京都は落ち着くわー。東京帰りたない』
「あはは。それは帰って来てくれなきゃ俺が寂しいんで困ります」
『知るか』
「飼い主いなきゃ生きていけないペットですから」
『そんな手間かかるペットいらん』
「責任持って最後まで飼って下さい」
『飯もトイレも自分で出来る癖に、図々しいペットやな』


京さんの言葉に笑って。
ソファの上に正座してた足を崩して膝を立て、背凭れに背中を預ける。


だって今まさに、京さんがいなきゃ食べる事も億劫。


「京さん八つ橋買って来て下さいよ、八つ橋」
『はぁ?知らんわ何処にあるんやんなモン』
「新幹線で帰るんですよね?絶対駅構内にありますって」
『あー…?土産とか買わんし知らん』
「八つ橋!あ、何なら京ばぁむでもいいです」
『それこそ何やねん』
「京さんの名前が入ってるバームクーヘンです」
『…絶対違うやろ。アホか』
「や、実際はあるんですって!」
『知らん。めんどい。絶対無理』
「えー」


お土産店で、京さんがお土産買うって姿想像しただけで…うん。
ありえねー。

まぁ、八つ橋とか食いたかったら通販も出来るしな。
別にいいけど。


『じゃーもう切るで。僕明日早いねん』
「あ、わかりました。気を付けて帰って来て下さいね」
『うん。ほな』
「おやすみなさい」
『おやすみ』


そう言って、切れた京さんとの通話。

でもいいや。
声聞けたから満足。


携帯の待ち受け画面を見て、目を細める。


本人に会う程、充電は出来ねーけど。


京さんの声を聞いて都合良く空腹を訴えた俺の身体は、俺が思ってる以上に京さんを必要としてるみたい。


あー。
早く会いてーな。


ペットは飼い主の帰りを従順に待つんで、ご褒美下さいね。

京さん。




20110714



「はい、るき」
「えぇえぇ!?マジで買って来てくれたんすか八つ橋!」
「お前が言うたんやろ。食わんかったら殺す」
「食べます!有難う御座居、ま…す?え、京さんこれ…」
「ん?ラムネ味。不味そうやったから買ってみた。全部食えよ1人で」
「……」



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