夕焼け空と君と僕/敏京




「あ、京君どこ行くの?」
「外。気分転換」
「じゃー俺も行くー」
「好きにしたら」


スタジオに籠りっぱなしの休憩時間。

いい加減室内におるんも怠なって来て、煙草と財布を持って外に行こうとしたら敏弥がついて来た。

まぁえぇけど。


各自好きに休憩時間を使っとる中、僕と敏弥は軽く話をしながら外に出る。

言うても、特にどこ行くとも決まってへんし。


「もー超疲れた。今日何時に帰れんのかなー…」
「さー。まだ出来る目処立ってへんし、また夜中ちゃう」
「早く京君とイチャイチャしたいよー」
「外なんやからくっつくなボケ」
「ちぇー」


僕の肩に腕を回して来る敏弥を振り払いながら、外に出るともう日が陰っとって。
西日が余計に眩しかった。

目を細めて手を掲げる。


外出るんも怠いなって思ったけど、ずーっと室内におるんも嫌やったし。
しゃーない。


「うわ、もう夕方か。早いなー。京君どっか行くの?コンビニ?」
「外出たかっただけ」
「そっかー。じゃ、そこの公園行こうか」
「ん」


何や僕が外出たかったから出て来たんに、敏弥が何や言うて歩き出す。
しゃーないから後ろついてった。


スタジオ近くの小さい公園。
人おらんでよかったわ。

男2人が公園とか、寒い事この上無い。


「京君こっちこっち!」
「何やねんお前煩い」


敏弥は端っこにあるベンチに座ってその隣を叩く。
敏弥の隣に座って、煙草を取り出して咥える。

敏弥に貰ったジッポで火ぃ点けて煙を吐き出す。


「あ、煙草忘れたから俺にも頂戴」
「はいはい」
「ありがと」
「…ん」


敏弥に煙草を差し出すと1本抜き取り、それを咥えて僕の煙草に近づけて火を移した。

伏せ目がちで、間近に見える敏弥の顔はいつも見とる顔やけど。
西日が当たって髪が明るく透けて、綺麗。


ジ…と火を移した敏弥の顔が離れて一呼吸置いて紫煙を吐き出した。


「…京君、空綺麗だよー」
「は?」
「空。夕方だから、赤みがかってる」
「あー…ホンマやな」


敏弥の視線を追って見てみると、ホンマ夕日が空の色を赤く変えとって。

雲とのコントラストが綺麗。

普段、空なんか見ぃひんから不思議な感じ。

1日が終わる前の空って、こんななんや。


「何か、普段こう言うの気にも止めないけどさ、見たら見たでこう…ちょっと感慨深い物があるよね、空とか」
「……ふーん」
「ま、京君と見てる景色だからって言うのもあるんだけどさー」
「……」


そう言うて、目を細めて夕焼け空を眺める敏弥。

その横顔を眺める。


ホンマや、感慨深い。

普段見とる敏弥が、違う感じに見える。


煙草の灰を地面に落としながら、敏弥から視線を写して段々と赤く染まる空を見上げる。


誰もおらん公園で。
僕がこうして夕焼け空見とるなんて、考えられへんわ。

笑える。


「でももう1日終わりかー。お腹空いたね」
「コンビニ行こか」
「俺財布持って来てねーから奢って」
「何でやねん。ほな何もナシや」
「酷ーい」


そう言うて目を細めて笑う敏弥は、僕の方に顔を向けた。
僕もつられて笑みを浮かべる。


視線だけを周りに向けて、隣におる敏弥にちょっと身体を伸ばす。

体格差の所為で、僕が伸びをせなアカン事が若干腹立つけど。

敏弥の前に身体を傾けて、軽くキスしてすぐに離した。


一瞬しかしてへんかったけど、目の前の敏弥は驚いた顔をしとって。


「…どうしたの、外だよ、ここ。嬉しいけど」
「……気分」


やって夕焼けに照らされた敏弥のが綺麗やなって思ってもうたんやもん。


敏弥とや無かったら、こんな風に公園のベンチに座って空を眺める事も。
こんな風に誰かの事を愛しいと思う事も。

その感情で、自然にキスする事も。

僕には無かったんやないかって思う。


「そっかそっか。じゃ、もう1回」
「調子乗んな」
「ケチー」
「は」
「もう、京君好き過ぎる!」
「ここは外ですよ敏弥さん」


やから、敏弥と一緒におる事、する事が感慨深い。

好きやと思うこの感情も。




20110714



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