旦那を捕まえる方法/京流
今日はいつもより早めに帰れて。
京さんも撮影だっつってたけど帰るのは早いって朝聞いたし。
久々に家で一緒に飯食えるって事で、張り切っていつも行くスーパーで材料調達。
今日煮込みハンバーグ作る予定。
圧力鍋で煮込めんのかな。
結構使ってんだけど、イマイチ使い方がわかんねーんだよなー…使いこなせたら色々料理出来んだけど。
そんな事を考えながら、キッチンで買って来た材料を並べたり冷蔵庫に入れたりして。
近くに置いた携帯で時間を確認。
京さん何時ぐらいに帰って来るんだろ。
やっぱ温かい飯出したいしさ。
鼻唄を歌いながら、京さんの事を考えて料理を進めて行くと自分の携帯が鳴って手を止める。
この着信音は京さん以外。
手を洗って、画面で名前を確認して電話に出る。
「れいた何ー」
『おぅ、今さー買い物しに来てんだけど。ルキが欲しいっつってた○○あったけど、いる?』
「マジで?買っておいて!金明日払うし」
『ん、了解。つーか今何してんの?何かゴチャゴチャ聞こえるけど』
「晩飯作ってんの」
携帯を頬と肩に挟んで、れいたと電話しながら作業を進める。
『はー…仕事やって家帰って飯作ってって、大忙しですねルキさん』
「いいんだよ。好きでやってんだから」
『今日の飯なに』
「煮込みハンバーグ」
『うわ、ルキがンなもん作るなんて想像出来ねー』
「何でだよ。結構美味いし。お前も食ってみろっつの」
『ははっ、また食いに行くよ。京さんに会うの緊張すっけど』
「何で。普通だって。慣れたら京さんよく喋るし」
『お前はもう慣れてるかもしんねーけどなぁ』
「そりゃ何年も一緒ですから」
『あぁ、胃袋ガッツリ掴んで離さねーんだろ』
「何だよ、それ」
『男は胃袋掴むらしいぜ。料理上手な奥さんの元へ帰る、みたいな』
「あぁ。ま、郷土料理の違いはあるけど京さん食ってくれるし作り甲斐あるよ」
『よかったな』
「ん」
れいたと電話しながら、フライパンで焼いた2人分のハンバーグを見下ろす。
何だかんだで京さん食ってるもんなー。
好き嫌いあんまねーし。
そうか。
男相手には胃袋掴めって事なのか。
『じゃ、これ買って明日持ってくわ』
「おぅ、また明日な」
『ん。じゃーな。あ、因みに料理上手は床上手って言うぜ』
「何言ってんだテメー」
『ははっ』
捨て台詞の様にれいたが言って、電話が切れた。
時間を確認して。
れいたとは仲良いから、下らねー話で盛り上がって結構長い時間電話してたりする。
携帯を置いて、ソースを調合して圧力鍋をセットして2人分のハンバーグを煮込む。
サラダ作ろ。
そう思って冷蔵庫を開けると、玄関の鍵が開く音。
京さん帰って来た。
反射的に手を止めて玄関へと向かう。
「京さんお帰りなさい」
「…ただいま。腹減った」
「ご飯もうすぐ出来ますよ」
「そー。今日何なん」
「きのこの煮込みハンバーグとサラダです」
「ふーん」
靴を脱いで、ゆっくり廊下を歩く京さんの後ろを付いて行く。
京さんの後ろ姿を見ながら、れいたの言葉を思い返す。
料理美味いからって、俺と一緒にいる理由の一つにってるんだったらいいな。
嬉しい。
京さんと一緒じゃなきゃ、俺はこんなに料理をする事も無かったし、スキルアップもしなかっただろうし。
つーか料理上手は床上手って。
そこらは相性じゃねーの。
どっちかっつーと、俺が京さんのセックスにハマッてんだけど。
さすがに本人にそんな事聞けねーしなぁ。
「…何ボーッと突っ立っとん。早よ飯。僕腹減っとん」
「あっ、今すぐやります」
「しんど。いつもいつもケータリングとか嫌やわ。出来合いのモンって不味い」
「味って意外と似たり寄ったりですよね。仕事の時は仕方無いんでしょうけど」
「ホンマや。やっとまともな時間に帰れたし」
そう言いながらソファに座って伸びをする京さんの後ろ姿をキッチンから見やる。
そりゃ仕事場より家が落ち着くってのは当たり前なんだろうけど。
その場所に俺がいるって事が。
その当たり前になってる日常が。
改めて嬉しい事だと、そう思った。
終
20110710
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