キス/京流




ベッドの上。
コトを済ませて上半身だけを起こして煙草をふかす。

ヤッた後、煙草を吸うのは癖でやっぱ抜けられへん。


軽く後始末をしたるきは、またシーツに身を沈めて僕の方に身体をくっつけて来た。

腰の辺りに来た、るきの顔をチラッと見下ろす。


息が整ったるきは僕を見上げて来て視線が合った。


緩い口調のるきが口を開く。


「…きょーさん、」
「んー?」
「何かね、スタッフから聞いたんすけど」
「なに」
「最近、女の子の間でキスのDVDが流行ってるらしくて」
「…は?何?」
「何かキスするシチュエーションが何パターンか入ったDVDです」
「変わったモンもあるんやな」
「まぁチラッと観せて貰ったんですけど」
「観たんかい」


るきって何でもかんでもに興味示し過ぎやろ。
何なん、キスのDVDって。

他人のキスシーンなんか観てどなんするん。


呆れながらるきを見て、ベッドサイドにある灰皿に煙草を押し付けて消す。


「男女がラブラブしてたり、不意打ちにするキスだったり、そんなのが入ったDVDでした」
「下らんモン観んなや」
「やーでもやっぱ女の子はあぁ言うのに憧れるんすかね?売れてるらしいですよ」
「知らん」
「京さんはどんなシチュエーションのキスが好きですか?」
「んなモン無いわ。気分やろ」
「えー」


煩いるきから視線を外して、寝る為に脱ぎ散らかした下着と部屋着を身に付ける。
仕事終わって一発ヤッて心地えぇ疲労感が身体を支配する中、寝に入るんは好き。


布団に入るとるきが身体を寄せて来て。

何やねん。

お前風呂入らな知らんで明日。

腹痛いー言うてもほっとくからな。


「まぁ、俺は京さんとのキスなら何でも好きですけどね」
「あそー」
「京さんの唇柔らかいし、キスする時甘噛みすんの癖なのも好きだし、押さえ付けられて激しくされんのも好き」
「……」
「キスって不思議ですよね。セックスは本能だから、する意味とかわかるんですけど、キスって何でするんですかね」
「それ言うたら、人間の本能の繁殖の意味でヤッてへんから、僕らのセックスも無意味になんで」
「あ、そっか。じゃ、セックスは愛を確かめ合う行為って事で」
「なん、それ」


隣でそんな話をするるきの方に顔を向けると。
思いの外るきの顔が近くにあって、わざと音を立てて僕の唇にキスをして、それはすぐに離れた。

今更キスの一つや二つ、何すんねんって思わんけど。

キスする意味はー言うとった矢先に何やねん。


コイツの言動はわからんわ。

結構したたかやし。


真っ直ぐ僕を見る目。
るきの所為で唇のパーツに目が行くんやけど。


キスする意味や、どうでもえぇやん。


僕もお前の唇好きやで。
柔いし、気持ちえぇ。


そんな理由でえぇんちゃうの。

する意味や、考えた事無いわ。


「理屈では、キスなんて意味ないって思うんですけど、やっぱ好きな人が目の前にいたらしたいって思うもんですよね」
「自己完結か」
「あはは。好きな人とするのに、意味があるんですね。どんなシチュエーションも」
「結論出てよかったやん。はい、おやすみー」


るきに背を向けて、寝る体勢に入る。

したら、背後でるきが起き上がる気配がして。
『おやすみなさい』って声が聞こえて、こめかみ辺りに柔らかい感触。

すぐに離れてったけど。


何やDVDに影響され過ぎなんちゃう。

お前ってこう言うキザな事とか好きやんな。

キショいなぁ、ホンマ。


文句言うたろか思ったけど、もう寝る気でおったから起きるんめんどいし。
るきが多分、風呂入る為にベッドから降りる感覚がしたから、しゃーないから黙っといたるわ。




20110707



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