ある暑い日/敏京
「暑い。何でまだ6月やのに暑いん。ありえんわ。敏弥死ね」
「んだよ、もー。仕方ねーじゃん暑いんだから」
「もー嫌や。夏嫌や暑いし」
「梅雨終わったっぽいし、これから暑くなるよね」
「ホンマやでやのに何でエアコン壊れんねん。アホか」
「それは今日修理来てくれるだろ」
「嫌や僕だけ敏弥んち行くから敏弥おって」
「ずりー!絶対ヤだ!」
昨日から敏弥が泊まりに来とって、蒸し暑いし冷房フル稼働でつけとったら朝に何や壊れた。
何でや。
少しは冷気残っとったけど、そんなんがいつまでも続くワケも無く。
窓開けても閉めても暑い。
6月やで。
やっと鬱陶しい雨も終わったと思ったら暑いって何やねん、暑いって。
去年は敏弥んちのが壊れたし、今年は僕のか。
苛めか。
クーラーつけんなって事か。
つけるけど。
白のタンクトップに黒のボクサーパンツの格好のまま、昨日買った棒付きアイスを食べる。
2個目。
パタパタうちわで扇ぎながら、テレビ観よった視線を隣の敏弥に向けると。
同じ様にアイス食っとった敏弥は手に溶けて垂れて来とったらしく、慌ててティッシュで拭いとった。
敏弥なんやトロトロ食うんやもん。
アホめ。
暑くて冷たいアイスが喉を過ぎるのが気持ち良くて、さっさとアイスを食べ終わると残った棒を灰皿に投げる。
「敏弥ーもう1個取って。アイス」
「は?京君もう2個食べたじゃん。食べ過ぎたらお腹痛くなるよ」
「ガキやないんやからならんわ。はーよー。暑い」
「もーダメ。ご飯食べなくなるでしょ」
「うっざ」
もーえぇし。
自分で動くん怠い。
敏弥もアイス食べ終わったみたいで、灰皿に棒を置いた。
あーもー暑いなー。
うちわだけやと間に合わんで。
「としー」
「なーに」
「暑い」
「俺も暑い…って、ちょ、八つ当たりしないでよ!」
「やって暑いんやもん。修理いつ来んねん」
「夕方頃って言ってたよ」
「はー?意味ないし今暑いわ」
持っとったうちわでバシバシ敏弥の腕を叩くと、苦笑いしながらうちわ奪われた。
取るなら扇げよ、僕を。
「はー…もー嫌や暑い」
溜め息吐いて、着とったタンクトップを脱いでボクサーパンツだけんなる。
「敏弥、扇いで」
「…何かその姿そそられるね!」
「…嫌やー…何で僕こんな変態と部屋で2人きりなんやろー…」
「それは俺等が恋人同士だからです」
「……なん、ちょぉ近寄らんといて暑い」
「やーだ」
うちわを置いた敏弥が、僕の方に近寄って来て。
後ずさろうとした時、腕を掴まれる。
何でこんな糞暑いのに盛れるん。
敏弥の顔が近付いて僕の首筋に吸い付いた。
生暖かい舌が、ゆっくりと僕の皮膚を這って。
「京君の肌しょっぱーい」
「汗掻いとんやから。止めろキショい」
「やだ」
「ちょ…、」
床に片手を付いて、敏弥の身体を押し退けようとしても掴まれとる手では無理で。
あーもう、何なんコイツ。
暑いし今ヤる気無いんやけど。
暑いから、ちょっとイラッとして来た。
「───ッの、止めろ言うとるやろがボケっ!!」
「ぁ痛ッ」
敏弥の頭を力を込めて叩いたると、僕の身体に半分伸し掛かっとった敏弥が、頭を押さえながら離れた。
「暑いのに盛るな!余計暑くなるわ死ね!」
「だってほぼ裸の京君がいたら盛るだろ普通!」
「知らんわ!人来る予定やのにヤリましたーみたいなザーメン臭させとけるか!」
「あ、そう言えばそっか」
「忘れんなボケ」
あぁ、もう。
へらっと笑った敏弥に暑さも相まって更にイライラした。
「あっ、じゃーシャワー浴びながらする?涼しいし洗い流せるし一石二ちょ、…っ」
「死ね」
アホな事言うとる敏弥の頭を一発また叩く。
そんなんクーラー直って涼しい中で汗掻く事するんがいいんやろ。
ボケ。
終
20110627
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