禁煙する気は無い/京流




深夜に近い時間。

仕事が終わって早よ帰りたかったからタクん乗って帰っとって。
最近タクも禁煙やし、禁煙やって思ったら余計吸いたくなってイライラして。

自宅マンションの近くのコンビニで降ろしてもらって、もう残り数本しか無い煙草の為にコンビニ店内へ入る。

特に欲しいモンは無いけど、何となく店内を回って烏龍茶とガム、それといつも買っとる煙草を2箱購入。

いつもるきがカートン買いしてストックしとるんやけど、たまに無い時あるし。
帰って無かったーとか言うオチ嫌やしな。


コンビニ袋をぶら下げて店から出ると残り少ない煙草を取り出して1本咥える。
適当なライターで火ぃ点けて、煙を吐き出すと街灯の明かりしか無い暗い住宅街で、紫煙が緩く消えてった。


…夜やのに蒸し暑い。
やっぱタク待ってもらってそのまま帰ればよかった。

いや、したら煙草吸えんしな。


明るくて星が見えん夜空を見上げて煙を吐き出す。

煙草の灰を指で弾きながら、ダラダラ歩いて自宅マンションの近くになって来る。

あーもう。

早よクーラーの効いた部屋に帰って風呂入って寝たい。


暑いから段々イライラして来た。


そんな事を考えながらマンションの階段近くまで来ると、僕の後ろから車が来てマンション前で停まった。


「………」


その見慣れた派手な車に片眉を上げて、その車を見やる。

るきに持たされた携帯灰皿を出して、吸っとった煙草を揉み消して入れる。

あ、何や溜まっとる。
るきにまた捨てさせよ。


「───京さん、お帰りなさい」
「……」


派手な車から出て来たんは、これまた派手な服着とるるきが降りて来た。


「今晩は、京さん」
「──今晩は」


そしたら運転席からよく見るるきのバンドのメンバーが降りて来て、挨拶される。

別にえぇのに。


「じゃーな、れいた!サンキュー!」
「おぅ、明日遅刻すんなよー」
「しねーよ。おやすみー」
「はいはい。京さんもおやすみなさい」
「おやすみ」


また車の中に戻って、派手な車は走ってった。

つーか、僕が暑い中コンビニから歩いて帰って来たのに、コイツはメンバーの車で悠々自適に帰って来たんか。

ムカつく。

るきが帰ってへんかったら部屋ん中クーラーついてへんくて暑いやないか。


「死ね、るき」
「…え?いや、何でですかいきなり…ッ」


るきに携帯灰皿(どやって見つけて来たんって思う有名ブランドのヤツ)を押し付けて。
マンション入り口の鍵を開けて中に入る。


るきも後からついて来て。


「うわ、京さん煙草途中で捨てましょうよ。いっぱいじゃないですか」
「知らんわめんどい。お前が持たせたんやからお前がやれ」
「もー…洗いますけど…。つーか、最近歩道でも煙草吸えない所増えましたよね」
「あー、そうやっけ。そう言えばタクシーも吸えんしなぁ」
「禁煙しろっつー事ですかね」
「好きにしたらえぇんちゃうー。僕はせんけど」


そんな話をしながら、エレベーターに乗って最上階のボタンを押す。

るきは隣で相変わらずベラベラ喋っとって。
適当にはいはい言いながら最上階フロアでエレベーターが停まって、廊下を歩く。


るきが鍵を出して、チャラチャラと手で弄ぶ。


「俺のバンドもなかなか禁煙しよーってヤツいないですね。やっぱ曲煮詰まると量増えるし」
「別に我慢するより吸いたいだけ吸うて早死にしたらえぇんちゃう」
「いやいや、まだ死にませんよ。俺の夢はジジィになって京さんと縁側で茶を啜る事なんで!」
「アホな未来に僕を巻き込まんといてくれますかー」


るきが鍵を開けて、中に入る。


やっぱ部屋ん中はクーラー効いとらんかったから暑かった。

死ね。


そう思いながら残りの煙草を咥えて、空んなったボックスを握り潰す。


お互いヘビースモーカーで。
早死にするんも潔くてえぇやん。




20110625



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