帰宅場所/京流
珍しく仕事が早めに終わったから久々に買い物に行って帰って来た。
前までやったらこんな早く終わると誰かしらと飯食って帰っとったのに今は普通に寄り道せんと帰っとんに笑える。
腹減ったな。
買い物しとったから早めに終わった言うても結構遅くなっとって。
でもイイ感じの服も見つけたし、買いよる雑誌の最新刊もあったし。
買い物で満足するんて何となく心が晴れる。
…やからるきはアホみたいに買い物するんか。
いやいやでもアイツみたいに僕アホみたく買い物せんし。
るきの気持ちはわからん。
一切、うん。
るきは夜に帰る言うとったけど、飯作るーってメール来たし。
最上階フロアやから部屋数がほとんどない閑散とした廊下を歩いて。
自宅の鍵を取り出して、鍵を開ける。
ドアを開けた瞬間、リビングの光が目に入って。
何かの料理の匂いが鼻腔を擽る。
「京さんおかえりなさい」
「ん」
僕が靴脱いどると、リビングの扉が開いてるきが顔を出す。
玄関の廊下の電気が点けられて。
眼鏡に長い前髪をピンで留めとる、いつものるきが笑って近寄って来た。
家ん中やけど、仕事行っとったままのるきは何処行くねんって格好。
まぁ、お洒落なんかなとは思うけど。
るきの格好は派手。
「腹減った」
「ご飯もう少しで出来ます」
「うん。今日なに」
「カルボナーラとシーザーサラダです。何買って来たんですか?」
「服と雑誌」
自然な流れでるきが手を差し出したから持っとった荷物と鞄を渡す。
るきが後ろを付いて来ながら廊下を歩いて、リビングに入る。
「うわ、これ○○のじゃないですか!俺も行きたいんですよね。開けてもいいですか?」
「えーよ」
何かるきがロゴを見てテンション上がって、僕の鞄をソファに置いていそいそと僕が買ったヤツを開けとった。
飯はどうしたんお前。
僕が買った服を出して、目の前に広げるるきを横目にソファに座ってテレビを点ける。
「やっぱ格好良いなー俺これサイトでは見たんですけど店舗なかなか行けなくて。いいなー」
「まぁ気に入って買ったしな」
「いいなー。ちょっとこれ試着していいっすか?」
「はぁ?やらへんぞ」
「たまに貸して下さいよー」
「たまにって…お前僕がツアー中とか勝手に着とるやろ、服」
「あは。だって背丈一緒だし京さんの服格好良いんですもん」
「自分のがアホみたいに持っとるやろ…、って着るなボケ」
「どうですか?」
「人の話聞け糞ガキ」
るきが自分の服を脱いで、僕が買って来た服を着とる。
黒いTシャツ。
着た時のフォルムも綺麗やったし、柄も気に入ったから買ってんな。
何先に着とんねんコイツは。
減るモンやないし、えぇけど。
僕も時々、コイツの服着とるし。
あんま派手でないヤツ。
背丈が一緒なんは、確かに便利。
「いいなー。俺もここの欲しいんすよね」
「ほな買ったらえぇやん」
「や、京さんの借ります」
「何でやねん死ね」
「何か、京さんのだから着たいって言うのもあるんで。『京さんの』着る事に意味があるって言うか」
「──キショ。意味わからんし」
るきが買ったばっかの服着ながら、他のヤツも見とって。
まぁどうせ、クローゼットん中に入れるんはるきやしな。
何つーか、るきの僕大好きなんてちょっとどうなんって感じやなぁ…。
一歩間違えたら頭オカシイんちゃうかって思う。
「…るき、飯は」
「あ!そうだった。今日のカルボナーラは美味しく出来ましたよー」
そう言うて汚れるとアカンからって僕の服を脱いでまた自分の服を着た。
忙しないなぁ。
るきはキッチンに向かって、何か作りよって。
きちんとたたんで置かれた服に視線を落とす。
僕の、がいいとか。
どんだけなん。
そんな頭オカシイ事言うとるヤツの所へ帰って来る僕もどうなん。
「京さーん、出来ましたよー」
「はいはい」
やって、るきの飯美味いんやんか。
終
20110618
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