構って/敏京




「よーいしょっと」


風呂場で1人きり、独り言を言う自分に苦笑いをしながら風呂掃除。

京君はまだ俺のベッドで寝てて。

オフだし、1人で暇だし。
あんま掃除とかちゃんとしてねーから、しようかなって。


ジャージを膝まで捲って、Tシャツ姿のまま浴室内を掃除用のブラシで擦る。


案外綺麗好きなんだよね、俺。


鼻唄で自分等の曲を歌いながら綺麗になっていく浴室を見て気分がいい。
泡まみれなのをちょっとずつシャワーで洗い流す。


今日の昼ご飯はどうしよっかなー。

京君いつ起きるんだろ。
寝んの大好きだもんねー京君。

昨日もお互い燃えてヤリまくったし、仕事でも疲れてるし、ね。


昨日の京君も可愛かったなー、とか。
その時の京君を思い出して口元がニヤけながらしゃかしゃかと擦る。


「……何しとん」
「あ、京君起きたの?おはよ」
「はよ。何しとんの敏弥」
「ん?風呂掃除。早く起きちゃって暇だったしさー」
「ふーん」


寝起きの京君は不機嫌そうな顔をして開けっ放しだった浴室の入り口に立ってた。
寝癖全開の頭ボサボサの髪で、ちょっと可愛い。


京君は欠伸をしながら洗面台で顔を洗って水で濡らして寝癖を直した。


その姿を見て、また掃除再開。


しゃかしゃか、ブラシで擦る音が響く。


「なぁ、」
「んー?」


綺麗にすんのに没頭してたら、背中から京君の声が聞こえた。


「腹減った」
「んー。ちょっと待って。冷蔵庫に昨日買ったプリンあるよ」
「プリンや腹膨れへん」
「もうちょっとで掃除終わるから。そしたらご飯食べに行こうよ」
「今すぐ」
「…ちょっと待ってよー」


京君の言葉に、苦笑いをしながらそっちを見ると。
京君は入り口でしゃがんでじっと俺の方を見てた。


「つーか何で風呂掃除」
「たまにはしなきゃ。京君だって汚い風呂に入るの嫌だろー」
「まぁ、そうやけど」
「あと浴槽洗ったら終わるから、ちょっと待っててね」
「嫌。早よして」
「もー」


我儘言う京君に笑って、浴室のタイルの泡をシャワーで洗い流す。

多分、今やめたらもうやらなくなるだろうから。
せっかくだから一気にやっちゃいたい。


京君を宥めつつ、湯の張ってない浴槽の中に入って洗う。


ぶつぶつ言いながらも、入り口で座り込んでる京君はホントに可愛いと思う。
マジで。


何だかんだ、一緒にいたいのかなーって。


「ニヤニヤすんなキショい」
「してませーん」
「しとった」
「してない」
「嘘吐け」
「ん?手伝ってくれんの?」
「いや?」


ですよねー。

京君が裸足のまま、浴室内に入って来た。
浴槽に入ってる俺と、その近くにしゃがむ京君と目が合う。


と。


「うわわっ!何すんだよコラ!」
「ははッ、やって敏弥掃除ばっかしとんやもん」
「だからって!ちょっ、やめろよマジ…!」


もー。

京君はシャワーを手に持ったと思ったら、いきなり蛇口捻って俺にシャワーを引っかけた。

掃除すんのに温度調節してたから、冷たくはねーけど濡れるじゃん。

京君は悪戯っ子の顔で、めっちゃ楽しそう。


湯を腕で避けながら、手を伸ばして京君からシャワーを奪い取る。
その拍子に、京君にもちょっとかかったみたい。


「うわッ、何すんねん!」
「それは俺の台詞だっつの!もーびしょびしょじゃん」


ジャージもTシャツも髪も、シャワーで濡れちゃったよ。

浴槽内の泡もほとんど無くなって、濡れた髪を掻き上げてシャワーの湯を止める。


「えぇやん。水も滴るいい男やで敏弥」
「何だよそれ」
「じゃ、掃除終わったやろ。ご飯行こ」
「…はいはい。着替えるし髪乾かすからちょっと待ってね」
「ん」


俺の言葉に満足したのか、京君は浴室から出て濡れたスウェットのズボンを脱ぎ洗濯機に投げた。


ちょっとわかりづらいけど、可愛いんだから京君。


浴室から出て、濡れたジャージとTシャツを脱ぐ。
パンツまで濡れたじゃん。

全く、ちょっとの時間も待てない構ってちゃんなんだから。


そんな所も好きだからいいんだけどね。


「とーしーやー。早よ!僕ラーメン食いたい」
「…寝起きにラーメンて濃いね」



20110614



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