雨の中、日常/京流
今日は1日中雨やって鬱陶しい。
言うても仕事中は室内でおるけど。
何やるきと仕事終わる時間が似たような時間やったから、帰りに飯食おかっつー約束してもうたんやけど。
断ればよかった。
雨やし怠い。
ちぎったろかいな思ったけど、帰る場所一緒やし後でブチブチ言われるんも鬱陶しいから一応待ち合わせを指定した場所へと向かう。
るきは着いたって連絡来とったけど…何や皆傘さしとるし、ようわからん。
タクシー降りて、事務所にあった傘さして。
よく2人で待ち合わせする場所で見渡すと、1人の男が近寄って来た。
「京さん、お疲れ様です」
「雨鬱陶しい」
「あはは。店行きましょうか。個室押さえてあるんで」
「ん」
黒い傘さしたるきが話し掛けて来て、話もそこそこに歩き出す。
足元も濡れるし、傘さしとると擦れ違う時もウザいし。
えぇ事ない。
「京さんと外食久し振りなんで、色々聞いたんすよー。あ、あそこです」
「何食うん」
「和食です。コース美味いらしいんで」
「あっそ」
この近くにそんな店あったんや。
何やるきは色々店知っとる。
人に聞いたり何やらしよるらしいけど。
僕は結構同じトコ行く方やしなぁ。
そんな事を考えとると、るきが言うとった店に着く。
傘は店員が預かってくれるらしくて渡して、案内されるまま個室へ入る。
「あー…せっかく今日髪型変えたのに雨でヘタったし」
「なん、また変えたんかお前」
「うん。ふわふわにしたんすよ。似合います?」
「……」
荷物置いて座って、正面に座って髪の毛をイジるるきを見る。
確かに、朝見た髪型とは違う感じになっとった。
ふわふわっつーか。
「チャラい」
「えー」
えー、ちゃうわ。
サングラス外してへんるきは髪型の相まってチャラい。
服装も。
軽薄そうな唇が笑って、サングラスを外すと弧を描いた目が見えた。
うん、見慣れた顔。
るきは髪型変えまくっとるから、印象がいつもちゃう気ぃする。
部屋ん中では似たような格好しとるけど。
るきは手で髪をイジって直しよるらしい。
まぁ雨やと髪型決まらんわな。
濡れるし。
僕も結構伸びたなぁ。
また伸ばして金髪にでもしよかな。
まぁそん時に気ぃ向いた髪型になるやろけど。
「もうお前髪型変えすぎやから剃れ。全剃り」
「えぇ、京さんとお揃いの坊主っすか」
「お揃いちゃうわ。全スキンやお前なんか」
「……衣装似合わなさそー…」
「全スキンでフルメイク衣装やドン引きやな。わろたるからやれや」
「笑われるんすか、俺。確かに京さんはいかつくて格好良かったですけど。何か貫禄あって惚れましたけど。男らしくて俺も真似したいと思いましたけど」
「キショいわお前」
るきの言葉に眉を寄せて、るきが寄越したメニュー表でドリンクを見る。
コース料理言うとったから料理決めんでえぇんか。
ビールでも飲も。
今ライブ無いし。
「京さん何飲みます?」
「グラスビール」
「じゃ、俺ー…カルーアにしよ」
「…甘」
「ビール苦手なんです」
「知っとる」
そう言うたら、るきは笑って、ですよねって言うて。
備え付けられとる呼び出しボタンで店員を呼んだ。
飲み物と、るきが選んどったらしいコース料理を頼みよった。
一緒に住んどって、いつもはるきの手料理か。
時間が無い時は何か買って来とったり。
でもたまにこうして外食。
るきの飯もえぇけど、お互い外食も好きな方。
海外の外食は嫌いやけど。
「はー…早くこの髪型京さんに見て欲しかったけど雨の日に変えるんじゃねーなー。もっとキマッてたのに」
「どうせすぐに変えるんやからどうでもえぇやん」
「お気に入りなんですこの髪型」
「はいはい、よかったなー」
「聞いてねー」
るきが笑っとったら、個室の扉が開かれて注文したドリンクと付きだしが来た。
「じゃ今日もお疲れ様です」
「ん」
ビールとカルーアのグラスをカチンと合わせて一口。
うん、最初の方だけ飲むと美味い。
雨は鬱陶しいし、しつこく髪型気にするるきも鬱陶しいけど。
るきのセレクトする店は基本ハズレが無い。
そこだけで、色々鬱陶しいモンも払拭されてく気ぃする。
…髪型な。
もうどんなんでもえぇよ気にすんな坊主にしたろか僕が剃ったるわ。
飽き性なるき。
常に変化するそれは、僕を飽きさせへん。
終
20110614
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