僕の知らんお前の過去より/敏京
「そう言えば敏弥って喧嘩強いん?」
「ん?どしたのいきなり」
「何かよう元ヤンの話出とるやん。喧嘩強いんかなって」
「あー…どうだろうねー。今は全然じゃないかなぁ」
「今はってどうなん」
「あはは。青臭い思い出だからねー」
オフの日。
敏弥んちでまったりダラダラ過ごす。
別にしたい事も無いから、飯食ったらベッドで敏弥とゴロゴロ。
寝転がって雑誌読んどって、不意に思い付いた事を敏弥に聞いたら。
ベッドの上で座って漫画読んどった敏弥は漫画をベッドに置いて僕の上に覆い被さるように身体を寄せて来た。
ギシッとベッドを軋ませて、僕の髪を撫でたから身体をちょっと捻って上におる敏弥を見上げる。
目を細めて僕を笑って見下ろして来とって。
こんなヘラヘラしとる奴が、なぁ。
イメージ全然無いんやけど。
僕も読んどった雑誌を放置して、敏弥が手をついて僕を見下ろす方へと身体を向ける。
向かい合う形。
「京君は、昔の俺の話聞きたいの?」
「話したくないん?」
「あんまり京君には知られたくないかなー。元ヤン嫌い?」
「別にえぇけど。もう昔やろ。どっかのアホみたく昔俺は凄かった自慢とか無いしえぇんちゃうー」
「そー?」
「ん。でもお前がなー。ひょろひょろやし背ぇ高いだけしか取り柄なさそうやのになー」
「何だとー。そんな事言う子はこうしちゃうぞー」
「うわっ、ちょ…ッ、はは…!」
敏弥が悪戯っぽく笑って、僕の脇腹に手を伸ばして思い切り擽られた。
むっちゃ擽ったくて、敏弥の手から逃げようと身体を捩るけど逃げれんくて。
部屋ん中、僕の笑い声が暫く響いた。
「ッは…、お、前…ムカつく…っ」
「京君涙目になってて超可愛い」
「っさいわボケ。あー…も、疲れた…」
笑い過ぎて腹痛くなって来たって時、ようやく敏弥が手を離して。
シーツの上に転がって呼吸を整える。
笑い過ぎて腹筋痛いし。
ムカつくわー敏弥。
何ニヤニヤ見とんねん変態。
「…何か、ヤッてる時の京君の表情に似ててエロい」
「アホな事ばっか言うなや、お前。もー触んな」
「やーだ」
「ちょぉ…、」
シーツに頬を擦り寄せる形で僕が呼吸整えとったら、敏弥が僕を見下ろして顎に手をやって無理矢理敏弥の方に向かされた。
手ぇ払おうとしても無視されて。
僕の身体に敏弥の身体が軽くのし掛かって来て、唇を覆うようにキスされる。
僕の顔の横に腕を付いて、髪を撫でる敏弥の手は凄い優しい。
柔らかい唇が、何度も角度を変えて合わさった。
キスしながら、僕の手を取って指を絡めてシーツに縫い付けられる。
僕も敏弥の手を握り返した。
僕の唇を舐めて、敏弥は顔を上げた。
「好ーき。京君」
「…うん」
「大好き」
「知っとる」
唇から、頬、瞼、敏弥の唇が音を立てて何度も吸い付く。
「擽ったいって、敏弥」
「んー…」
そう言うたけど、その擽ったさが心地えぇ。
じゃれ合うような仕草は、敏弥が飽きるまで続いた。
ガキみたいに甘えたで、その行動は可愛いなと思う。
敏弥のくっついた体温に身を任せるんも悪く無い。
コイツの過去とかどうでもえぇけど。
ホンマ、似合わん。
こんなアホで僕ん事大好きな、ひょろ高いだけの奴なんに。
ベース弾いとる姿はかっこえぇと思ってやらん事も無いけど。
化粧して衣装着たんは、綺麗とかちょっと思ったりするけど。
僕を見る、柔らかい笑顔も。
僕に触れる、優しい手も。
敏弥の、全てが好きやったりする。
やから、敏弥は今の方が全然えぇって事やんな。
終
20110609
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