僕を見るその視線B※/京流
泣きそうなツラで、僕の顔を見上げて来て。
それでも無理矢理何度も喉奥を突くと必死に吸い付いて来た。
飲み込めへんかった唾液が口から溢れて、濡れた音が室内に響く。
もうえぇか。
僕ん勃ったし。
髪を掴んで引っ張り、口ん中から僕自身を引き抜く。
苦しかったんか、むせながら口から垂れた唾液を拭っとった。
そいつを床に仰向けに押し倒し、両足を開かせて腰を割り込ませる。
慣らしてへんからキツいやろけど、まぁヤッとったら慣れて来るやろ。
「…ッ、京さん…ッ待っ…!」
「……」
僕のやる事がわかって、焦って身体を起こそうとして来たけど無視って、両足を胸元まで折り曲げてやる。
痛みをわかっとんか、諦めて衝撃に耐える様に目を瞑って顔を反らした。
入り口に宛てがって、身体に覆い被さり上から叩き付ける様に一気に突き入れた。
「ぎ…ッあ゛…!?」
「きっつ…」
あーやっぱ慣らしとらんかったらこっちもキツい。
けど、痛みに悶えるコイツを見るんは好き。
僕やったら真っ平ごめんや、こんな事。
「ッは、あ゛っ、ぁ、京、さ…!」
「煩い」
「……ッ」
全然慣れてへん中を割り開くように無理矢理抜き差しする。
組み敷かれた奴の口からは艶めいた喘ぎ声すら出て来ぉへん。
耳障りな声が僕の名前を呼ぶんにムカついて、顔を叩いてやるとそいつは泣きそうなツラして。
口元に手を持ってって口を塞いだ。
何回犯してもガッチガチに緊張しとる身体からは力は抜けんくて。
僕のを掴んで離さんって勢いの締め付けにイラついて舌打ち。
「緩めろやボケ!キツいやろがこの役立たず…っ!」
「ひッ、…ごめ、ぁっ、あ゛ァ…!!」
両足を抱え直して、そう言うと謝ると同時にまた悲痛な声が口をついて出る。
僕に言われたから、必死に身体から力を抜こうと息を何度も繰り返し吐き出す。
血ぃ出とるから、段々と動きやすくなって来た。
別にセックスを楽しむ目的でも無いから、動きやすくなったし好き勝手に腰を打ち付ける。
「や゛ぁ…っ、待っ、待って…!」
「ッ、煩い言うとるやろ…!!」
「…っん゛ン…!」
高速ピストンして揺さぶると動きについて行けへんのか首を振って制止を求めて来て。
何で僕が言う事聞いたらなアカンねんってムカついて、ギャーギャー煩い口を塞ぐ。
体重掛けて片手で口を塞ぎながら何度も何度も腰を打ち付けた。
その度にくぐもった声が聞こえて来て、息が出来へんのか顔が真っ赤んなって涙が滲んで。
はは、無様。
やから、傍におるんやけど、コイツ。
嫌がれ。
男に犯されて、プライドなんか全部無くせ。
「────っ!ッ!」
首振って手を退けようとするその顔からは涙が飛び散る。
離したらんけど。
仰け反る身体に、容赦無く突き上げる。
見つけとった、コイツのえぇ所を引っ掻く。
どこがえぇとか、反応見ただけですぐわかる。
…慣れとったから。
こんな時に、自分のして来た過去の事が思い出して嫌んなる。
思い出を掻き消す様に、乱暴に相手を揺さぶった。
部屋ん中に、僕の息遣いとくぐもった声と粘着質な嫌な音が響く。
あー、酸欠でこいつトビそう。
そんな事をぼんやり考えて。
下半身が熱い。
背中から言い様のないモンが駆け抜けてって。
頭ん中が真っ白んなりそう。
もうコイツの事なんか構ってへんくて、口塞ぐ手にも力が入る。
床でヤッとるから膝が摩擦で痛いんも気にならずに頂点を目指す。
「……ッ、は…!」
奥まで突っ込んで、最奥に白濁を放つ。
何度か腰を打ち付けて出し切って、何や大人しくなった奴を見下ろす。
何やのコイツ。
嫌嫌言うとってイっとるやん。
こんなセックスではない、ただの暴力みたいな行為をされてイくとか。
頭イカれとんちゃうん。
「はぁ…は、」
荒く息を吐きながら、塞いどった口から手を離す。
中から自身を引き抜く時に目に入った、腹に飛び散った白濁。
ケツからは僕の精液と血が混じったモンが流れて床を汚して。
自分もコイツも、何や血塗れ。
一発ヤると、嫌に頭ん中が冷静になる。
あー…怠い。
腰も、殴った手も、傷だらけの左腕も。
僕が痛めつけた、コイツを見る事も。
床に転がった、血と精液に塗れた身体を見ながらソファに座って煙草を吸う。
途中飛びやがったコイツ。
終わったんやったらさっさと帰れ汚い。
目を細めて、肺ん中いっぱいに煙を送り込む。
掲げた自分の左腕は、もう血が固まっとった。
どうせ明日のライブにはまた傷が開く。
ホンマ今日は嫌な日や。
ライブも。
アイツも。
楽屋で見られた、敏弥の顔を思い出してまた胸がザワそうで。
目を瞑って握り締めた左手で自分の頭を軽く殴る。
自分に突き付けられた現実から逃げ出したくて、呼び出せば来て殴って犯すだけの『男』を使う。
自分は大丈夫。
自分よりももっと惨めな奴おるやん。
自分の息が荒くなって来るんがわかる。
思い出さんといて。
もう忘れたい。
消えたい。
消したい。
その衝動が、自分がやったこの転がる物体。
頭を掻いて、煙草を灰皿に押し付ける。
早よ起きろやボケ。
そんで目障りやから早よ帰れ。
そいつの傍まで歩いて行って、汚れた身体で床に転がるそいつの腹を思い切り蹴り上げる。
「…ッ、あ゛…!」
ひゅぅっと息を吸い込む音がして咳き込む丸めた身体。
冷めた目で、それを見下ろす。
また元の位置に戻って、もう1本煙草を吸う。
大丈夫。
僕はまだ、大丈夫。
今日のライブも。
すみません、って謝りながらおぼつかへん手付きで服を着る、コイツの存在があるから。
僕はまだ、生きていく為に傷を付けれる。
終
20110612
自分を肯定する為にコイツにしがみつく自分はもっと惨めや。
それはずっと、気付かないフリ。
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