感情の起伏/敏京
「…敏弥、顔怖いで」
「なーに堕威君。別に普通だろ」
「普通ちゃうやん。あー…京君な、はいはい」
「…何その何でもお見通しですーって顔」
「やってお前が拗ねたり怒ったりするんて、大体京君絡みやん」
「そんな事ねーよ」
休憩中。
せっかくの休憩なのに、京君は女スタッフの人と話し込んでて。
めちゃくちゃ楽しそう。
俺は放置ですかそうですか。
話に混ざればいいんだろうけど、そう言う気分になれなくて。
苦味の効いた珈琲に口をつけながら楽しそうに話する京君とスタッフを見つめる。
正直、いい気分じゃなかったけど、やっぱ顔に出てんだなーって反省。
堕威君は俺の隣に座って、ニヤニヤしながら俺と京君を交互に見た。
「…なーに、もう」
「いや、別に」
「何それ。…あー京君何楽しそうに話してんだろ。せっかくの休憩中なのにさー」
「一緒に話して来たらえぇやん」
「それは何か嫌」
「はー…嫉妬は身を滅ぼすで」
「好きだったら嫉妬深くもなんだろ。超笑顔だしムカつくー京君やっぱ女の子の方がいいのかなー」
「それは話飛躍し過ぎやろ。スタッフと仲良いんはえぇやん。京君がよう喋るんとか珍しいし」
「だからヤなの」
普段人見知りで、嫌いなタイプの人間とは目も合わせないのになー。
京君の方をじっと見つめたまま、残りの珈琲を一気に胃に流し込む。
隣で堕威君が、我儘ーって言いながら笑う。
何とでも言えばいいよ。
「あ、話終わったみたいやで」
「…ホントだ」
スタッフと話終わった京君は、少し視線を泳がせて。
俺はガッツリ京君を見てた訳だから、視線が絡まって。
そのまま京君は俺の方に歩いて来た。
「敏弥ー」
「……何」
あ、しまった。
自分でも思いの外、不機嫌そうな低い声が出ちゃって、しまったって思う。
京君も眉を潜めて訝しげな顔。
堕威君だけは面白そうに笑ってる。
傍観キメてんなよコラ。
「何やの。もうえぇし」
「あっ、違…!」
一瞬にして不機嫌になった京君は踵を返そうとするから、慌てて立ち上がり、京君の手首を掴んだ。
「京君あんな、敏弥は京君がスタと楽しそうに話しよったから拗ねとるだけやでー、許したってー」
「は?」
「ちょ、堕威君!余計な事言うなよ!」
「やって何かおもろいんやもん敏弥。女がえぇんかー言うて百面相してなぁ」
「もう、」
「敏弥」
「…はい」
うぅ…京君嫉妬したとか言うの、嫌いなんだよー。
わかってるけど、止められないんだもん。
「またかお前…いい加減にせぇよ」
「御免、でも…っ」
「でもちゃうわ。ホンマ呆れる。大体なぁ、あのスタッフは雰囲気えぇ美味い店教えてくれただけやし。敏弥が前に食いたい言うとった料理出るトコ。それ教えてくれたのに。ふーん、敏弥そんな事言うとったんやー。へー。ほなホンマに別の奴誘って行、」
「やだやだマジで!?連れてってよ京君有難う疑って御免!」
「フン。お前の奢りやで」
「りょーかいです!」
そっかそっかー。
京君、俺が何気に言った事、覚えてくれてたんだー。
嬉しいなー。
京君の言葉に、すぐに機嫌が良くなった俺は笑いながら京君を自分の近くの椅子に座らせる。
俺をからかってた堕威君は苦笑いでその様子を見てて。
「犬も食わへんなー」
「煩いな堕威君。俺と京君はラブラブなんです」
「堕威君、敏弥の言う事は虚言癖入っとるから」
「ん、わかった」
「2人共ひでぇ」
「ははっ」
嫉妬はするよ。
だってこんなに愛しい君だもの。
ホント、俺って拗ねたり怒ったり笑ったり。
京君絡みかもしんない。
仕方無いじゃん。
大好きな京君に一喜一憂、振り回されてるんです。
そう言うのは悪くない。
「京君好き。大好き」
「知っとる」
「うわ、惚気んなや2人共」
終
20110605
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