弱点/敏京
「京君京君、こっち」
「何」
「此処!座って」
「何で」
「いちゃいちゃしたいから」
「嫌」
「嫌じゃなーい」
「ちょ、」
「はい、よいしょー」
「…アホか」
何でも無いオフの日。
当たり前のように一緒におる敏弥は、僕んちに来とって。
出掛ける予定も無いし、2人ソファに座って溜まっとった映画を観よった。
1本目が終わった時、もう1本観ようかと腰を上げると同時に敏弥に腕を掴まれる。
膝の上に座れ、と言われて顔を歪めても敏弥は気にする様子も無く僕の身体を引き寄せた。
「ウザ…」
「そんな事言わないの。もう映画1本観たからいいじゃん。ラブラブしよーよ」
「はぁ」
よいしょ、って言うて、敏弥は僕の脇の下に手を入れて身体を移動させる。
まぁ、しゃーないから渋々ソファに座る敏弥の足の上に向かい合わせで跨がって座る形。
眼鏡掛けたオフん時の敏弥の顔が、ふにゃっと笑った。
その顔に怒る気も無くなる。
「お前ホンマあほやろ…」
「休みの日ぐらいいいじゃん。仕事場ではいちゃつけないしー」
「当たり前や。仕事なんやから」
「わかってるよ。だから、ね?」
「はいはい、しゃーない奴やなぁ」
敏弥は笑って僕の髪を撫でる。
敏弥の足に体重掛けて座って首筋に顔を埋めてべったりと寄り掛かる形。
これハタから見たら間抜けな格好ちゃうの。
まぁ、僕らしかおらんけど。
敏弥の両腕が、僕の背中に回って来て抱き締められた。
僕の髪に鼻先を埋めて擦り寄る敏弥はデカい図体して甘えたで。
それが可愛いって思うんは好きやからなんやろな。
調子乗るから言わんけど。
当の本人は僕ん事『可愛い』だの『好き』だの、囁いとる。
いちいち言わんでも、知っとるわボケ。
そんな思いを込めて、敏弥の首筋に埋めとった顔をちょっと上げて、ピアスが連なっとる耳に噛み付いた。
「ぅわ…ッ、ちょ、やだやだやだ…!」
「…何やの」
「耳やだ。ダメ」
「ふーん」
「…ッあ、ダメっつってんじゃん…!」
敏弥の嫌がりようがおもろかったから、ピアスごと耳たぶから舐めたったら。
僕を抱き締めとった腕で、僕の身体を押し退けようとしとったから。
その両手首を掴んで、ソファの背もたれに押し付けたった。
敏弥のがタッパはデカいけど、僕の方が上におるし。
押さえ付けるんは簡単。
「え、京君…!?」
「なん、お前耳弱いん?」
「…ッ」
驚いた顔の敏弥の耳元で囁くとビクッと身体が跳ねた。
自分の口元が歪むんがわかる。
結構思いの外、敏弥が抵抗するから手首を掴む力が強くなって更にソファに押し付ける。
やめてやる気なんか更々無い。
こんな楽しい事。
新しい虐め方発見。
首筋から、耳裏まで舌を這わせて軟骨を甘噛みする。
逃げられへん敏弥はソファに押し付けられた手を握っとって。
形に沿って舐め上げて、耳の中に舌を突っ込む。
敏弥の身体が大袈裟なぐらい跳ねて上に乗っとるからそれがダイレクトに伝わって来た。
「や、だ…ッ京君京君ちょっと待っ…!」
「……」
頭を振って逃れようとする敏弥の耳を八重歯で噛み付く。
固まった敏弥に笑みを浮かべて、また中へと舌を突っ込んだ。
微かに震える敏弥の吐息。
敏弥の聴覚を犯しとる感じが、また興奮する。
ピアスごとしゃぶりついて、わざと音を立てて唇を離す。
「っは…きょ、く…ッ」
息を詰まらせながら敏弥が僕の名前を小さく呟く。
その吐息混じりの声を聞くと、情事ん時の敏弥を連想させて背中をゾクゾクしたモンが這い上がる。
身体を密着させて、敏弥の身体を逃げへんようにソファに拘束さしとったら。
敏弥の上に座っとるワケやから、その変化は一目瞭然で。
嫌や嫌や言うとって、感じとんやないか。
やっぱお前可愛いわ。
「あー…気持ち良かったん?」
「ッ、最っ悪…!俺ただいちゃつきたかっただけなのに」
「かわえぇなぁ、お前」
「煩い。責任取ってよ」
「しゃーないなぁ」
目を細めて、舌舐めずりをして敏弥の眼鏡を外しソファに投げる。
そのまま唇にキスをすると軽いモンやなく、舌が絡み付いて来た。
敏弥の手が僕の身体に回って来て。
服ん中に入り込んで素肌を撫でられた時の手の冷たさに皮膚が粟立つ。
オフの日。
真っ昼間からヤるって。
笑えるぐらいラブラブやん。
な。
終
20110530
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