揺るぎない、/京流+玲



東京公演2日目ともあって、予想以上に関係者が多くて。
久々に会う人とか、軽く挨拶を交わして用意された座席へと座る。


「うわー何か自分達が客席にいるとか、不思議な気分」
「確かに。2ヶ月前ここでやったのにな」


京さんから、れいたと2人分のパス出して貰って2人で来たワケだけど。

結構あっさり貰えたから拍子抜け。
俺1人で行く時嫌がんのに。


まぁ、貰ったのはいいけど『ライブ終わったらすぐ帰れ。楽屋に挨拶来んなよ』って言われたんだけどね。


「つーか俺あんま来た事ねーから緊張すんだけど」
「ライブ観るだけだから平気だろ」
「え?でも先輩のライブだし挨拶しに行かなくていいのかよ」
「いいよ。京さんに来るなって言われてるし、いつも」
「え?いつも?」
「んー。あんまライブ来んの良く思ってなさそうでさ。今日はれいたが観たいっつったからあっさりパス貰えたけど、普段は五分五分だな、貰えんの。貰えても楽屋には絶対入れてくんねー」
「…何で?」
「さぁ?挨拶してーなら俺んち来る?京さん帰って来るし」
「オフんなって俺いたら怒らねー?あの人そう言うの気にしそう」
「うん、機嫌悪いだろうね」
「行けねーよバカ」
「ははっ」


何でか、なんて俺が聞きてーよ。

普通、先輩のライブに呼ばれたら挨拶しに行くのは絶対なのに。
京さんはいつも、頑なに拒む。


俺とは先輩後輩でいたくない、とかそんな理由じゃ無くて。
メンバーに紹介すんの嫌、とか。


薫さんには自然に受け入れられてんだけど、やっぱ京さんも男の俺、しかも他事務所の後輩と一緒に暮らしてるとか言いにくいかな。


「ルキ?」
「…ん?何、れいた」
「や、何か眉間にシワ寄せてボーッとしてたから」


れいたが苦笑い気味に自分の眉間を押さえて言う。


「…何でもねーよ。お前がライブ観たいっつったんだからしっかり観ろよ」
「当たり前だろ」


久し振りのステージ上の京さんだし。
俺も楽しも。
















「ルキ、飯食って帰ろうぜ」
「ん。ライブやっぱ京さんスゲー格好良かった」
「敏弥さんのベースプレイも格好良かったなー」
「ってかれいたもあそこまでコーラスやる?俺ががっつり指導してやっから」
「…前やった時向かい合わせでレコして複雑だったからいいわ」
「はは、楽しかったけどなー、俺は」


DIRのライブが終わって、皆が捌けて行く中。
パスをスタに返して会場を後にする。


ホント、久々の京さんのステージは凄かった。

俺もライブ控えてる身だしモチベーション上がる。


れいたとあれこれ話しながら少し歩いた場所に停めたれいたの車に乗り込む。


「京さんに『有難う御座居ました』って礼言っておいて」
「うん」
「ルキ何食いてーの?そこで話しようぜ」
「今日は肉食いたい」
「肉な。焼肉?」
「何処でもいーよ」
「了解」


れいたが車を発進させる横で、携帯を取り出す。

京さんにメールしとこ。

関東のライブは終わりだし、あそこまで色んな関係者来てたらさすがになかなか帰れねーだろうな。


感想は直接言いたいし、お疲れ様です、と当たり障りの無い言葉を文字で打って。

れいたと今日のライブの感想を言い合いながら走るネオンに視線を移すと。


手の中の携帯が受信を知らせた。


……。


「れいた、やっぱ俺帰るから。マンションまで送って」
「はぁ?もう帰んの?」
「御免て、また今度飯食いに行こーよ」
「はー…しゃーねーなーお前はよー」
「ありがと、れーちゃん」
「はいはい」


文句を言いながらも、れいたは行き先を変更してちゃんと家まで送ってくれる。


楽屋入れてくんねーのとか。
多少不満はあるし俺自身がダメなのかと不安もある。


けど、私生活に入り込んだこの人はそう言うの一切抜きにして。


帰る場所が、俺の所ならそれでいい。

…かもしれない。


京さんの身勝手な受信メールを見て、思わず口元が緩む。


れいたと行くって言ったじゃん。


『疲れた。腹減った。飯作れ』




20110521



[ 121/442 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -