髪の毛/京流
風呂上がり。
だいぶ暖かくなって来たけど、まだやっぱ半裸やったら寒くて。
でも空調つけるまでいかへん室内。
半袖のTシャツにジャージ、肩にタオルを掛けた状態で冷蔵庫からペットボトルの水を取り出してソファに座る。
斜め前のテーブルには、いつもの如くるきがパソコンと睨めっこ。
ボーッと過ごしとる時もあるけど、るきはようパソコン見とる気ぃする。
水飲みながら、リモコンを取ってテレビを点けてみるけど特におもろい番組はやってへんかった。
適当にチャンネルを回して、アホみたいな歓声と共に何か喋っとる番組で止めた。
テレビの音声と、るきが時々パソコンを打つ音が聞こえるだけの空間。
疲れたしおもろいテレビ無いし。
もう寝よかと思うけど、今すぐ寝れるって気分ちゃうしなー。
そんな事を思いながら視界には捉えても何も内容が入って来ぉへんテレビを見つめる。
したら、視界の端で何かが動いた。
言うてもるきやけど。
「あ゛ー…目疲れた…」
一段落したんか、両手を上げて伸びをして眼鏡を外しながらソファの方へ倒れ込んで来た。
チラッとるきを見下ろすと、また眼鏡を掛け直してソファに上がり隣に座る。
「…京さん少し髪切りました?」
「あー?ちょっとだけな。伸び放題やったしライブあるし」
「坊主にしてから結構伸びましたよね」
「……」
少し疲れた顔のるきが、顔を緩ませて僕の濡れた髪に手を伸ばす。
髪の毛に指が触れる感覚。
坊主にしてからそのまま伸ばしとったけど、形決まらんしフォルムが綺麗に見えるように整えただけやねんけど。
コイツの洞察力って、どうなん。
僕やったら絶対気付かんわ。
僕とは対照的に、かなり伸ばしとるるきの髪。
今は邪魔なんかピンで留めとるけどな。
「…お前こそ伸び放題やん」
「あー…やっぱ前髪とかアシメにしたいんすよね。昔は短い時期あったんすけど。やっぱ伸ばしてる方が落ち着きます」
「ふーん」
「京さんは長くても短くてもどっちでも格好良いですよね」
「……」
「あーでも、あの坊主はいかつかったし京さんの新たな一面が見えたと言うか。手触りもよかったですしね」
「……」
そういやコイツ僕が坊主ん時撫でたりようしとったな。
ウザかったわ。
今も濡れた髪を軽く引っ張ったりしてウザい。
るきの手を無言で振り払うと、さして気にしてへん風で笑いながら話を続ける。
「でも京さん髪伸びるの早かったですよね。エロい人って伸びるの早いって言いますしね」
「あ?それはお前やろ。僕とお前一緒にすんなボケ」
「ッて」
何かるきがアホな事言うたから、睨み付けて頭を一発はたいてやっても楽しそうに何するんですかー言うて笑って叩かれた場所を撫でとるだけやった。
力抜けるわ、ホンマこいつ。
「でもエロい人は髪伸びるの早いって昔から言いません?」
「知らん。お前のが淫乱やしアホみたいに伸びとるんちゃうの」
「うわ…ッ」
「つーか、誰に向かってそんな事言うん。るきは」
まだ楽しそうに笑うるきにムカついて、かなり伸びた後ろ髪を引っ付かんで顔を上向かせて覗き込む。
したらるきの瞳が揺れた。
少し僕が不機嫌に言うて、乱暴に扱ったったら興奮する癖に。
僕よりお前の方がよっぽどエロいっつーか、淫乱。
変態やん。
「京、さ…」
「何」
グッと更に髪を掴んだ手を引いたると痛みに顔を歪めるるき。
すがるように、僕のTシャツを掴んで来て。
僕ん中も言い様が無いモンが掛け上がる。
「るき」
「…ッ、」
何か言いたそうな唇に噛み付いて、そのままキス。
僕のTシャツを握る手の力が強くなった。
何度も唇を噛んで舐めて。
開いたるきの唇に舌を差し込んだ。
絡めた舌を甘噛みよりも少し強く噛んだら、るきの身体がビクッと震えて。
それでも離さずに吸い付いた。
るき。
やっぱ僕も大概かも。
僕の感情を満たしてくれる、るきの痛がる顔は好き。
かわえぇから。
終
20110517
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