結局は惚れた者の負け/敏京
「あれ?京君寝てる?」
「寝とるで。起こしたらアカンよ」
「わかってるって。次薫君の撮影だろ。ハイ、いってらっしゃーい」
「何やねんな、お前…」
自分の撮影が終わると、京君は広めのソファに横になって眠ってて。
苦笑いをする薫君を追い立てて、寝てる京君のソファに近づく。
確かに京君の撮影の順番は一番最後だけど、髪もメイクもばっちりなのに無防備に寝ちゃって、可愛いなー。
いかついメイクしてても、寝顔は途端に幼くなって。
ついつい、自分でもわかるぐらい顔が緩む。
薫君に言われた通り、起こすつもりはなくて。
仰向けに寝てる京君の頭の方の空いてる部分に腰掛ける。
部屋には心夜がいたけど、端っこで静かに本読んでるし。
薫君は撮影で、堕威君いねーし。
2人きり、では無いけど、家で一緒にいる様な温かい気持ちになる。
可愛いなぁ…って思いながら、優しく京君の前髪を撫で付けた。
「……ん…?とし、…?」
「あ、御免、起こしちゃった?」
起こすつもりなかったんだけど。
京君は薄目を開けて、視線を動かした後に俺を見上げた。
にっこり笑い掛けると、京君はもぞもぞ動いて手を付いて、身体をちょっと起こしたと思ったら。
頭を俺の太股に乗せてまた目を閉じた。
「……ッ」
何、この可愛い子。
確かにソファで寝ると枕なくて寝にくいだろうけど。
寝惚けて家と勘違いしてんの?
咄嗟に心夜に視線を移すけど、相変わらず本読んでるし。
1人心の中で悶える。
可愛い。
可愛すぎる。
俺の衣装太股出てるから、セットされた髪がちょっとチクチクするけど。
頭が一番いい位置に来る様に、ちょっとずつずらしてく、その仕草をする京君に思わず笑みが零れた。
「…ってか何でお前生あ、し…、ッ!?」
「あ、ダーメ。此処には俺等しかいねーから、いいじゃん」
なんて。
心夜いるんだけどね。
膝枕されてる可愛い京君を逃してなるものか。
起き上がろうとした京君の肩を押して、また俺の太股の上に頭を戻す。
「眠いんだろ。寝てなって」
「んー…お前の膝枕固いんやもん」
「余分な脂肪が無い綺麗な足だからねぇ」
「自分で言うなや。アホか」
「あはは。痛いなぁ、もう」
京君は大人しく俺の太股に頭を乗せたまま、ペシッと素肌が出てる部分を叩いて来た。
大して痛くは無いし、その仕草がまた可愛くて笑いながら京君の髪を優しく撫でる。
そしたら、京君は俺の太股を撫でて来た。
「つーか、お前よう足出すよな」
「女形だからね。似合うでしょ」
「嫌やわぁ、ナルシスト」
「せっかくやるなら綺麗な方がいいじゃん」
「ま、そやけど」
「どうせなら此処にキスマークつけてくれてもいいよ」
「アホか。足の皮膚や固くて無理」
俺の言葉に、京君は呆れながらもぺちぺちと剥き出しの太股を叩いて来た。
「大丈夫だよ。内側は柔らかいから、京君の太股にも付いてるよ」
「おま、そんな事しとんか」
「見えない所だったらいいでしょ。まぁ俺は京君にキスマーク付けられたら撮影は見える様に足開くけどね」
「やめろや変態。どんな写真になんねん」
「痛いって。コラ」
さっきより強く叩いて来る京君の手首を掴んで止めさせる。
そのまま、京君は身体を動かして俺を見上げる体勢になった。
メイクが施された顔は、いつもと全然違う。
幼い顔が隠されてんのに、意地悪く笑う京君の顔はとても可愛い。
ラブラブだね!
いいね!
「…京君って敏弥の前やと甘えるんやね」
「しん…ッ!?」
「あー心夜喋っちゃダメじゃん」
本を読んでた心夜が口を開いたから。
京君がめちゃくちゃびっくりした顔をして身体を起こした。
残念。
「おま、え、いつからおったん」
「最初からおったよ。京君が敏弥の膝枕して寝とる時から」
「…ッ、死ね!!」
「いったぁ…ちょっと今本気で殴っただろ!」
「当たり前や!ホンマ最悪!死ね!」
「そんなに照れなくていいじゃん!」
京君は怒った顔をして、思い切り俺の頭を殴った。
痛い。
もー心夜と京君は付き合い一番長いから、見られんの恥ずかしいんだろうけど殴る事ねーじゃん。
「敏弥嫌い。もう知らん」
「やだやだ。御免ってばー。膝枕したかったんだもん」
「……」
「やーだー!京君無視しないで!」
「……」
「…アホや」
心夜の呆れた声を耳に、不機嫌になって黙った京君を宥めるべく思案する。
こう言う、拗ねた時も可愛いって思う俺は。
相当好きなんだろうな、京君の事。
当たり前だけど。
終
20110507
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