5秒後、はたかれます/京流
朝かどうかもわかんねー時間、自然に目が覚めて布団の中で伸びをする。
手探りで眼鏡を探すと、視界がクリアになった。
でも布団あったけーし、起きんの面倒だなーとかそんな事を思いながら少し離れた隣で寝てる京さんの方へと身体を移動させる。
俯せで、枕の下に腕を突っ込んで寝る京さんの身体に寄り添う様に、頭をぴったりと腕に擦り寄せる。
今日、この人オフだっけ?とか。
京さんの匂いがするなー、とか思いながらベスポジを探すべくごそごそ身体を移動させてると。
寝てる京さんが身じろいだ。
「………邪魔」
「おはようございます、京さん」
俺がくっついた気配で起きたらしい京さんは枕に半分顔を埋めたままで俺を睨み付けた。
それに笑いかけると、京さんは舌打ちをして乱暴に寝返りを打つ。
「…ウザ。今何時」
「えーっ、と…あ、あった。10時過ぎです」
「あー…怠い…」
京さんの言葉に、枕元に置いた携帯を探して時間を見る。
昨日は比較的早めに帰れたから、起きる時間も早めだった。
つっても、普通からしたら遅ぇんだろうけど。
つーか今って。
「京さん京さん」
「あ゛?」
「今日ってゴールデンウィークですよ。京さんオフですか?」
「あー、うん」
「マジっすか。俺、夜から仕事出なきゃダメなんすけどオフなら買い物行きません?」
「えー…ゴールデンウィークて自分言うたやん。どうせ人多いんやろ。嫌やわ」
「あー…まぁ確かにそうっすけど」
せっかくの連休。
俺達の仕事に連休なんて関係ねーけど。
どうせなら京さんと出掛けてーんだけどなー。
最近服とか店頭に見に行ってねーし。
京さんは俯せで肘をついた状態でサイドテーブルに腕を伸ばして。
煙草とライターを手に取った。
まぁ、こう言う連休は人多いのは確かだし。
京さん人混み嫌いだし仕方ねーか。
「…あ、京さん東京来て芸能人とか会った事あります?」
「は?」
煙草に火を点けて煙を吐き出した京さんは、俺の言葉に『何コイツ』とでも言いたそうに眉を寄せて俺を見た。
「ほら、東京だと芸能人に会う確率高いらしいじゃ無いですか。俺一回も会った事無いんすよね」
「知らん。そんなん気にして歩いてへんし」
「確かに。いるって思いながら人間観察しねーと気付きませんよね、普通」
「逆にファンに見つかるしなぁ」
「あれ不思議ですよね。帽子被ってサングラスしててもバレるって」
「お前アレやねん。私服派手過ぎて『うわー…』って感じに見られてまうんやって」
「ちょ、それいい意味に聞こえ無いんすけど」
「当たり前やん。誉めてへんし」
「もー、京さん!」
目を細めて笑う京さんの腕を軽く叩いて。
そのまま、少しだけ入れ墨が見える腕にくっつく。
自分だって入れ墨まみれで夏とか超見られてんじゃん。
格好良いけど。
「あー、でも昔テレビ出た時にアイドル言われとるヤツ見てんな」
「はい」
「楽屋って他人がリハしよるトコとか見えるんやけど、本番と同じ事するやん」
「まぁ、そうっすね」
「でも本番ん時、そいつ特殊効果見て『こんなの初めてでビックリしました』とか抜かしてん」
「ははっ、マジっすか」
「初めてちゃうやん、お前リハで見たやんって思ったわー」
「アイドルも頑張ってんすね」
「ま、やからあんま素は見るモンちゃうでな。るきの素っぴんやって見たらファン泣くわなぁ」
「大丈夫です。化粧落とす気無いですから」
「はいはい。頑張りやー」
そう言って、京さんは俺の頭を煙草を持って無い手でぐしゃぐしゃっと撫でた。
ヤバイ。
何か超幸せかも。
言ってる事アレだけど。
その素っぴん眼鏡の寝起きの顔に、笑いかけてんのは誰ですか。
ゴールデンウィーク。
京さんと2人でまったり過ごせんなら、何処に出掛けなくても全然いい。
寧ろ出掛けたら勿体無い。
勝手に今日はまったりタイムと決めて。
本格的に甘えるべく肘を付いてる京さんに腕を絡めた。
終
20110504
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