腕の中の熱源/京流



今日は夜でもちょぉ熱かったから、毛布無しでもうえぇやろって思って寝たんやけど。

朝方?
何時かわからんけど何となく肌寒くて目が覚めた。

風呂上がりで速攻寝たし、調子乗って半袖のTシャツで寝たんがアカンかったか。


軽く舌打ちをして、ゆっくりと身体を起こす。


夜中寝たん遅かったし、朝方かと思ったけど遮光カーテンの間から漏れる光は結構太陽が上がっとる時間の感じやった。


枕元に置いた携帯を探って見る。

…ま、今日の集合は夕方からやし、まだ寝とってもいけるやろ。


被らへんかった毛布何処にいったん。


そんな事を思いながら隣を見ると、僕が寝る時にはおらんかったるきが隣で寝とった。

コイツもライブ近いし、リハとか撮影とか曲作りとか色々あるらしいな。


布団を身体に巻き込んで顔半分を少しだけ出して寝るるきの寝顔をじっと見つめる。


何、当たり前の様に一緒のベッドで寝て、一緒に暮らしとんやろ。

いや、此処に住めって言うたんは僕やけど。


時々、るきが隣におる事が不思議になる。


ゆっくり手を伸ばして、るきの前髪を緩く掻き上げる。
髪型を何度も変えるるきの髪質は指通りが悪くキシキシした感じがする。

るきは飽き性で、髪型でもインテリアでも、料理でさえコロコロ変える。

時々僕にも理解出来ひんのやけど。


そんな人間がよく飽きもせずに僕にくっついて回るわ。


髪を撫でとっても、全く起きる素振りを見せへんるきは相当疲れとるらしい。

男の癖に手入れされた肌の、指からの感触が気持ちえぇ。


僕が肌寒くて起きたのに、アホみたく寝とるるきの顔がちょっとムカつく。


一回起きてもたら、何や寝るタイミング逃してもうて。

暫くじっと寝顔を見とったけど、溜め息を吐いて煙草でも吸おうかと視線を外した。


その瞬間。


〜♪〜♪〜♪


「…ッ」


携帯の着信音が鳴って一瞬固まる。

僕のやない携帯。

つーか、るきの。

しかもコイツの着信音、どっかで聞いた事ある思ったら僕んトコの着うたやないか。
朝っぱらから自分の声聞かされて胸糞悪いわ。


したらるきの頭が動いて、手探りのまま携帯を探して手が枕元を這う。

何となく、るきの髪を触っとった手を引っ込めて意味もなく視線を逸らして煙草に手を伸ばす。

1本咥えて、火を点けた。


「……何」


るきは、枕に顔を突っ伏したまま手に取った携帯をディスプレイを確認して耳に押し当てた。

寝起きでるきの低い声が更に低くなって不機嫌そうな感じ。


枕に突っ伏したまま、めんどくさそうなるきが、僕に気付かずに髪を掻き上げて顔を上げた。


「…寝てたっつの。いーよもう、何」

「あ゛ー…それは今日行ってから確認すっから。うん、うん」

「は?知らねーよ馬鹿。心配だったらお前電話して起こせよな」


メンバーと喋っとる時のるきは僕ん時とは全然違う。


ホンマは我が強くて我儘なんやろなってわかっとる。


でも、そう言うるきが僕の前では二重人格かって思う位、また違う態度を取るんがかわえぇなって思う。


あ、つーかコイツが僕の分まで毛布巻き込んどるやないか。

腹立つわー。


「はいはい。宜しくね、れーちゃん。おやすみー」


話が終わったらしいるきは、電源を押して携帯を枕元に投げる様に置いて。
また俯せで枕に突っ伏して寝ようとしとった。


別に、いつも聞く名前やし。

メンバーと長い間過ごしとる中で信頼関係と仲間意識が強いるきのバンド内。


るきが甘えんのは、仲間やから。


あんま吸ってへん煙草を灰皿で揉み消して。
二度寝しようとしとるるきの布団を引っ張る。


「おい」
「…ッ、え?あ、京さ、」
「寒いねんお前毛布取るなや」
「え?あ、御免なさ…?」


寝惚けた顔で戸惑ったままのるきの横に身体を潜り込ませて。
るきの体温で暖かくなった布団と、寝て体温の高いるきの身体を抱き締める。


るきの腕が、僕の身体に回って来た感触。


疲れとったんか、すぐにるきの寝息が聞こえて来た。


腕ん中に暖かさを求めて寝る様になったんはいつぐらいからなんやろ。


溜め息を吐いて、さっきまで僕が撫でとった髪に顔を埋める。


そんな自分に舌打ちをして、肌に感じる温かい感覚に目を閉じた。




20110501



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