オフの日のデートの一コマ/敏京
「あ、待って敏弥。アイス食いたい」
「え?アイス?」
「あれ。あそこのアイス」
「あぁ、はいはい。じゃ、行こっか」
「うん」
敏弥とオフん時に買い物行こうー言われて出掛けて。
先に昼飯食ってどの店行くー?って話しながら敏弥と街中歩きよったら、チェーン店の有名なアイスクリーム屋を見つけて。
腹いっぱいになったけど、デザート食ってへんし見たら食いたなるやん。
敏弥を連れて店内に入る。
平日やからあんま客おらんし。
大体、女しかおらんしなこう言う店。
客おらん方がえぇわ。
サングラスを外して、何種類もあるアイスをガラス越しに選ぶ。
「京君どれにすんの?」
「んー。敏弥は?」
「俺あんま甘くねーヤツがいいかなー」
「うわ、これとか色グロいやんなぁ。何入っとんやろ」
「どれー?あぁ、すげー色のゼリーとか色々入ってんね。これにすんの?」
「嫌や僕甘いんがえぇし。この味とこの味にする」
「食べねーのかよ。ダブルにすんの?」
「うん」
「俺はチョコミントにしよっかなー」
「歯磨き粉の味やんソレ」
「ちげーよ。大人の味だよ、大人の」
「アホ言うとれ」
ショーケースの前で敏弥と話しながらアイスの種類を決めて、店員にそれぞれ注文する。
男2人並んでアイス買っとる姿とか、笑える。
ま、そんなん気にしとったってしゃーないけど。
「どうする?店内で食べる?」
「や、歩きながら食べる。行きたい店まで結構歩くし」
僕がダブルで、敏弥がシングル。
2人共が注文したアイスを受け取って、店から出る。
丸いアイス2個も乗っとったら、予想外にデカかった。
ソレにかじり付きながら敏弥と並んで街中を歩く。
あ、美味い。
腹いっぱいと思っとっても意外と食えるモンやんなー。
「京君美味しい?」
「うん」
「一口ちょうだい」
「ん」
「ありがと」
敏弥は備え付けられとったスプーンで、僕が差し出したアイスをすくって食って。
美味しいねって言って、サングラス越しに笑った。
「俺のもあげよっか」
「いらん歯磨き粉の味やから」
「だからちげーって。それが美味いんだよ」
「知らーん」
「…京君子供舌だから大人の味が無理なんだよね」
「……何やとコラ。おい敏弥のアイス寄越せ」
「はい、どーぞ」
使ってへんかった自分のアイスに刺さっとったスプーンを手に取って。
敏弥が僕に差し出して来たアイスをこれでもかってぐらい抉り取る。
乗せられとんはわかっとんやけど、何かムカつくやん。
「ちょ、どんだけ食べんだよ」
「煩いわボケ」
苦笑いする敏弥を余所にスプーンにすくったチョコミント味のアイスを口に入れる。
「……やっぱ歯磨き粉の味やん」
口ん中には歯磨き粉の味とちょっとだけチョコの味が広がる感じ。
やっぱ甘い方がえぇわー。
眉を寄せて直ぐに自分のアイスをかじると、敏弥は笑って僕を見る。
「ちょ、今の顔ちょー可愛かった!外じゃ無かったら絶対ちゅーしてた」
「煩い。外でよかったわホンマ」
「京君が許可してくれれば今ここでもちゅー出来ますよ」
「もうお前帰れ」
「いや無理。せっかくの京君とのデートです。しかもアイス食べたいとか可愛い事言っちゃってアイス頬張る顔も可愛いしチョコミント不味そうに食べる顔も超可愛い」
「…眼科行け。死ね」
「ま、俺目ぇ悪いけどねー」
「……」
「京君は愛の力でバッチリ見えるからね。大丈夫」
「何が大丈夫やねん。頭沸いとんちゃうか」
どんな会話やコレ。
平日で人が混んでへんでよかったわ。
敏弥どこでもイチャつこうとすんねん。
他人に見られて何か言われたらヘコむ癖にな。
僕の事を思って。
チラッと敏弥を見上げると、敏弥のアイスはシングルやから、もうワッフル部分をガリガリかじっとった。
甘くあらへん敏弥のアイス。
本人はあんなにべったべたに甘い癖に。
「ん?何、京君」
「別に」
やっぱアイスもコイツも甘い方がえぇやん。
な。
終
20110427
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