昼寝タイム/敏京
「敏弥、寝るんやったらベッドで寝ぇや」
「んー」
「とーし、重いって」
「やぁだー」
「嫌ちゃうわボケ」
オフの日、京君が借りて来たDVDを観てた昼間。
昼ご飯も食べたし、俺は眠くなって来ちゃって。
床に胡座掻いて座る京君の隣で寝転がって、京君の太股に頭を乗せて寝る体勢。
位置が気に入らないから、床を這って自分が寝やすい京君の足の位置に移動する。
京君は苦笑いをしながら、俺の頭をぺしぺしと叩く。
京君がDVD鑑賞好きなの知ってるからいいんだけどさー。
ベッドに行っちゃったら京君と別々になっちゃうじゃん。
昼寝にベッド行くのもアレだし。
俺は京君の膝枕で寝たいのー。
そんな事を思いながら、絶対離れねぇって思ってグリグリと京君の足に頭を擦り寄せる。
あー。
眠ーい。
いい感じに寝れそう。
映画はスプラッタ物だったけど、今の俺にとったら子守唄みたいなもんだね。
「……ホンマしゃーない奴やな」
「ん、」
溜め息を吐いて諦めた様に呟く京君。
その声色は穏やかで優しい。
京君は自己中我儘だけど、俺の事甘やかしてくれんだよね。
そう言うのって、愛されてんなーって思う。
大好き。
おやすみ、京君。
目を閉じたままで、眠りの世界に入ろうとした時。
京君の手が俺の髪の毛を優しく梳いて。
あー気持ちいーって思った。
どの位寝てたかわかんないんだけど、何となく意識が浮上して来て。
それでもまだ俺の頭を撫でる京君の手の感覚があって。
あんま寝てねーのかなって思った。
まだ起きるにはめんどくさくて、夢と現実の境目の意識が浮遊する中、京君の指先の感覚が心地良かった。
でも、京君が観てたDVDの音声が消えてて。
あれ、あの映画って観始めた最初の方に俺寝たよね。
ずっと京君、膝枕しててくれたんだ。
あの京君が、そう思ったら嬉しくなって思わずニヤける。
ヤベー嬉しすぎて意識覚醒しちゃった。
「…ッ、うわ」
「わ、京君近ッ」
狸寝入りするのもアレだしパッと目を開けたら思いの外、京君の顔が近くて一瞬ビビる。
京君もビックリして、さっと身を引いた。
「…なーに、ちゅーしようとしてた?」
「違うわアホ。ニヤニヤしとったからキモいなーって思って見ただけやし」
「またまたぁ、ちゅーしていいよ。ほらほら」
「ウザ。つーか起きたなら退いて。足重い」
「やーだー」
「ちょ、ムカつく」
そう言いながら俺の頭退かそうとしない癖に。
超可愛い、京君。
京君の足の上で身体を反転させて仰向けに寝転ぶ。
京君の顔を見上げる形で、腕を上げて京君の髪に触れた。
京君は舌打ちをして、少し視線を逸らした。
「ちゅーは?」
「ちゅーとかキモい」
「じゃ、キスしてよ」
「敏弥が足から退かな無理。体勢キツい」
「…やっぱさっきキスしようとしてただろ」
「やからちゃう言うとるやん。しつこい」
目を細めて京君を見上げて、つんつんと京君の髪の毛を引っ張ると。
うざったそうに俺の手を払うから、その手を掴む。
可愛く無いなー。
そう言う所が可愛いけど。
だってそれが京君だもん。
「…何」
「んー?俺どのくらい寝てた?」
「あー…2時間、ぐらい?」
「マジか。結構寝たなー」
「疲れとったんちゃう」
「昨日の夜激しかったしねー?」
「ホンマにな。お前しつこいねん」
「京君も大概だろ」
もうテレビは電源が点いてなくて。
掴んだ京君の手に指を絡めて恋人繋ぎをして、また下ろす。
にぎにぎしたりして、内容はえげつなくても京君とゆるーく会話。
こう言うまったりした午後、幸せ。
「敏弥、もう足痛い。退け」
「あっ、御免ごめん。ちゅーも出来無いしね」
握ってた手で、俺の肩辺りを叩いて。
手を離して床に手を付いて起き上がる。
笑ってそう言うと、京君は「そうやな」って言って。
起き上がった俺に顔を近づけて唇にキスして来た。
音を立ててすぐに離れたけど、その行動が可愛すぎて思わず京君を抱き締める。
「ッ、あーもう。可愛い!大好き、京君!」
「うわーウザー」
言葉と行動が別々なんだからこの子。
昔は戸惑ったけど、今ならわかる。
わかりにくい京君の愛情表現は、気付けばいつもわかりやすい。
終
20110421
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