今年の桜デート/敏京
「京君、何買うの?」
「んー。これ」
「あ、美味しそー」
「敏弥これ」
「え?これ?」
「ん。そんでこのオカズ頂戴」
「はいはい、そう言う事ね。なら京君のも何か頂戴ね」
「えー」
「えー、って」
久々のオフん時。
昼まで寝て、起きて腹減ったって事で敏弥とコンビニ。
弁当コーナーの前で、敏弥と話しながら選ぶ。
僕が選んだんをカゴに入れて苦笑いする敏弥。
えぇやん。
食い切れんかったらやるって。
敏弥ガリの癖に意外と食うしな。
僕から選んだ2人分の弁当を入れる敏弥を見て、お菓子コーナーに向かう。
今日は出掛ける予定も無いし、敏弥んちに引き込もってゲームしよって約束やから。
美味そうなんとか、いつも買っとるお菓子を手に取る。
「京君お菓子決まったの?」
「ん。なん、敏弥またビール買うん」
「もうストック無かったからねー」
「そない美味いモンちゃうやろ」
「そう?美味いよ」
「ふーん」
飲み物のコーナーから来た敏弥が持つカゴん中には缶ビールが何本が入っとった。
僕が好きな烏龍茶も。
それを見ながら選んだお菓子をカゴへ放り込む。
よう飲むよな、コイツ。
オフやから別にえぇけど。
…いやでも、オフで無くても飲んどるな。
「もう買う物無い?行く?」
「うん。あ、あと煙草」
「了解」
レジのコーナーに行って、敏弥と僕の煙草を言うて会計をする。
合計金額の半分ぐらいの札を出して。
店員が詰めた袋の弁当が入っとる方を僕が受け取って。
敏弥は缶ビールとか入っとる方を持った。
また下らん事を話しながら、帰路に着く。
「あ、桜咲いてるー」
「ホンマや。もうそんな季節になんねや」
「最近あったかくなって来たもんねー」
「せやな」
その道のりにある敏弥んちの近くの小さい公園。
そこにはまた今年も桜が満開になって咲いとった。
行く時は気付かへんかったんやな。
平日の昼間っつー事もあり、花見しよる奴らもおらんし閑散とした公園内。
並んで歩いとった敏弥は、歩みを止めて目を細めて桜を見上げる。
「1年経つのは早いね。去年は夜中見に来たよね」
「あーそうやったっけ」
「うん。…ね、今年もまた桜一緒に見えたね」
「……ん」
桜から僕に視線を向けて、そう言いながら敏弥は袋を持って無い方の手でさりげなく僕の手を握って来た。
昼間から何しとんねん外やでって思ったけど。
今は誰もおらんし、敏弥が凄い嬉しそうに笑うから何も言えんくなる。
ホンマ、1年経つんは早い。
花見行きたいだの、デートがしたいだの、敏弥はいつも煩いけど。
何だかんだ、偶然的にこう言う状況になっても嫌や無い辺り。
僕は敏弥の事が好きなんやなぁって思う。
でないとずっとは一緒におらんか。
オフの前日は絶対お互いの家に泊まって。
キスしてヤッて一緒のベッドで寝て。
1日中、ダラダラ過ごして。
たまにこう言う風にコンビニ一緒に行って、そんで季節モノの景色を見て。
当たり前の日常。
やけど、敏弥が告白して来んかったらありえへんかった日常。
仲良いメンバーから、恋人になって。
風が吹いて、桜吹雪が舞う中。
敏弥の横顔を眺める。
「此処で弁当食べる?」
「嫌や昼間から公園で弁当食っとったらリストラされたサラリーマンみたいやん」
「そうとは限んないよ。あ、」
「ん?」
「桜ついてる」
「あぁ…」
繋いどった手が離されて。
敏弥の手が、頭に伸びて来て、軽く髪を撫でつけられた。
僕を見る真っ直ぐな偽り無い視線は。
好きで好きでどうしようもないって言葉にする敏弥の感情を如実に表しとって。
お前やって、花びらくっつけとるやないか。
身長差がある、この距離がもどかしい。
「今年も2人きりでお花見出来たし、来年もまた見ようね」
「はいはい、しゃーないなぁ」
「ふふっ」
敏弥は嬉しそうに笑いながら僕の肩に腕を回して頭に擦り寄って来た。
敏弥の匂い。
優しい手。
視線。
仕草。
『愛しい』
その言葉がしっくり来る。
お前も。
お前と見る、この景色も。
終
20110410
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