敏弥くんのお誕生日の朝/敏京




「…きょーくーん、朝だよー」
「んー…」
「病人よりよく寝てるよ…」
「……」
「…可愛い」


風邪引いた俺の誕生日。
でもまぁ、夜中にナースのコスプレした京君見えたし。

何か襲われたし。

京君って俺の事、変態って言うけど風邪引いてる俺見て欲情する京君だって大概変態。

ノリノリだったしね。

淫乱具合が堪らなく好き。


まー俺も最後はしんどいよりも性欲の方が勝ったんだけどさ。


俺風邪引いてんのに、いつもの様に狭いベッドで一緒に寝て。


もう、風邪移ったらどうすんのさ。

俺もナース服着て襲っちゃうぞー。


少しやっぱ、咳が出るなーって思いながら。
少し身体を起こして隣で寝てる京君の顔を見つめる。

手には、京君が乗せてくれたのか、額から落ちた濡れタオルを持って。

もう温かくなって、意味をなさない物だけど。
京君のこう言う所を知ると嬉しくなるって言うか、きゅんてなる。

惚れ直す。


あー…喉渇いた。

今日は俺の誕生日だから、ご飯食べたりプレゼント買ってもらったりする予定だったのに。


でも昨日よりマシだから、今日出掛けちゃダメかなぁ。


また枕に頭を預けて、寝てる京君を見つめながら京君の髪を掻き上げる。


「……」
「──あ、京君おはよ」


何度かその仕草をしてると、京君が薄目を開けて。
何度か瞬きをして視線を動かす。


にっこり笑い掛けると、京君がゆっくりと手を伸ばして来て俺の額に当てた。


「…だいじょうぶなん」
「え?」
「ねつ」
「うん。昨日よりマシ。京君の看病のおかげだね」
「あたりまえやん…ねむー…」


俺の額から手を離して、京君は欠伸をしながら伸びをした。

猫みたい。
可愛い。


「ッあ゛ー…今何時…」
「えーと…12時過ぎ、だね」
「そうなんや。腹減った」
「俺もー…ね、マシんなったから出掛けたり…」
「はぁ?アカンやろ。昨日熱高かった癖に。今日1日中寝とれ」
「…今日買い物する予定だったのに…」
「また元気な時でえぇやん」
「あんまオフねーし…」
「でも無理して完治してへんのに出歩いたらぶり返すかもしれへんやろ。仕事に影響出たりするし、我慢せぇよ大人なんやから」
「…だよねー…」


はー…つまんねーなー。

軽く咳をしながら、布団を被り直して。


京君はベッドから降りて洗面所に行ってた。

俺のスウェット着てる京君可愛いなー。
デカイんだもん。

京君が着たらブカブカだよマジ。


あーぁ、せっかくのデートがー…誕生日なのにー…。


溜め息を吐いて、京君がいる所を見つめてると。
顔を洗ってすっきりとした顔をした京君が戻って来た。


「きょーくーん、腹減った」
「僕も。何か無いん」
「今日出掛ける予定だったし、何もねー」
「ふーん…ならコンビニ行って来るわ」
「えっ、俺も、」
「アホか。お前は寝とけアホ」
「…そんなアホアホ言わないでよー」
「えぇから、ちゃんと寝とけよ」
「早く帰って来てね」
「知らんわ」
「とっち寂しくて死んじゃうからね!」
「キモ」


京君は話しながら私服に着替えて。

もう元気だから俺も連れてってよーって思って身体を起こしかけたけど、京君に睨まれて仕方無くまたベッドに寝転がる。


「ほなな。ちゃんと寝とけよ」
「ん」


京君はさっさと着替えて、財布と携帯を持って玄関へと向かう。

声を掛けられて、そのまま靴を履いた京君は出てっちゃった。


何か寂しいなー。

ま、京君が1人でコンビニ行くとか。
いつもは俺が行ったりすりから、京君なりに気を使ってんだろうな。


でも京君がいなくなって、1人でいると一気に身体が怠くなる。
やっぱまだ本調子じゃねーんだなー。

ってか、京君いないと何もかもしんどくなる。

早く帰って来てー。

お腹空いたよー。
喉渇いたよー。















「…ただいまー」
「京君!おかえり!」
「うわ、寝とけ言うたやろお前」
「やだ。京君がいなきゃ寝れない。遅かったじゃん」
「ガキみたいな事言うなや。飯食って薬飲んで寝ろ」


京君が帰って来たら、起き上がって靴を脱いでる京君に抱き付く。

はー、京君好き。

夜中は一緒にいても京君に気を回せなくて、風邪移すって思ったし余裕無かったけど。

やっぱ京君いなきゃヤだ。

落ち着くなー。


コンビニ袋を手にした京君は、俺をまとわり付かせたままテーブルのあるトコまで移動した。


「ね、ご飯あんの?」
「ケーキ」
「えぇ!?」
「嘘。一応コンビニのレトルトのお粥買って来た。食う?」
「うん、食べる。あっためて」
「えー…」
「あっためて」
「はいはい」


京君は袋の中からお粥のパックを取り出して。

一応、俺の事を考えてくれてんだって思うと嬉しい。

何だかんだ、京君は動いてくれるし。

優しいなー普段は口悪いけど、こう言う時に嬉しい事してくれるよね。


京君を抱き締めたまま、京君が移動するのについて行く。


あんま使ってないキッチンで、鍋に水入れて湯を沸かす様子を見ながら京君の髪に顔を埋める。
俺んちのシャンプーの匂い。


濡れタオル作ってくれたりコンビニ行ったり温めてくれたり。

何気無い事だけど、俺の為にしてくれる京君が愛しくて仕方無い。


「あれ、マジにケーキ買ってんだ」
「うん、敏弥の誕生日やから。僕の昼飯」
「俺のじゃねーのか」
「僕が食べたかってん。敏弥はまた今度な」
「残念。いただきまーす」
「…ます」


俺のお粥を温めて、皿に移してテーブルに移動した後。

コンビニで買ったらしいケーキをいそいそと取り出す京君。

2個入りのパックで。

1人で食べる気満々じゃん。

俺の誕生日って口実だろ。
可愛いからいいけどね。

お粥を口にしながら、ケーキを食べる京君を見つめる。


「あ、」
「ん?」


京君の顔に顔を近付けて、口の端に少しついた生クリームを舐める。

甘い味が口の中に広がった。


「あっまいね、これ」
「美味いやん」
「うん」
「…こんなコンビニのより、ちゃんとしたん食いたいわー」
「……」
「やから、さっさと治せよアホ。早よプレゼントとケーキ買いに行こや」
「うん。薫君からオフもぎ取らなきゃね!」
「ははっ。薫君怒るやろなぁー」
「いーじゃん俺誕生日だもん」
「今日だけな。やから今日だけやで、風邪で我儘聞いたるん」
「えー!」


楽しそうに笑う京君に、俺も嬉しくなる。

京君といると、風邪でしんどいのもわからなくなる。


そのくらい、大好き。


「嫌やったら、早よ治したらえぇやん。そんで僕の我儘聞いて」
「ん…っ」


そう言って俺にキスして来た京君の味は、ケーキの所為でめっちゃ甘かった。


可愛いなー。

だって京君の我儘は、俺に対しての『甘え』だから。




20110406



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