京さんと俺/京流
一応、締め切りでやらなきゃいけない山積みだった事が終わって。
比較的ゆっくり出来る時間があって。
ま、自宅に帰っても京さん仕事でいねーし、夜中だから買い物行けるワケもねーし。
する事無くてやっぱり仕事でパソコンに向かう。
つーか仕事してた方が落ち着く。
「あ゛ー…珈琲飲も…」
眼鏡かけて、ずっとパソコン画面見てたから目が疲れた。
独り言を言いながら伸びをして、珈琲を淹れるべく立ち上がる。
そしたら、玄関で鍵の開く音がしたから。
方向転換して玄関へ。
玄関に繋がる廊下への扉を開けると、京さんが玄関で靴を脱いでる途中で。
「京さんお帰りなさい」
「あー…うん、ただいま」
「ご飯食って来たんですよね」
「うん」
「珈琲飲みます?」
「ん、淹れて」
「わかりました」
俺の脇を抜けて、リビングに向かう京さんにまとわり付きながら話し掛ける。
京さんは、上着を脱ぎながらソファに座ってテレビのリモコンを手に取った。
俺はキッチンへ行って、2人分のマグカップを取り出す。
白と黒のお揃い。
ま、珈琲は朝の残りなんだけどね。
夜中だからミルク淹れて甘めにするか。
冷めた珈琲とミルクをカップの中に淹れてレンジで温める。
あんま熱いの飲みたくねーから、適度な時間で止めて。
「京さん、珈琲。ミルク淹れましたけどいいですか」
「うん」
京さんはテレビに視線を向けたまま、黒いマグカップを受け取る。
俺もカップに口をつけながら京さんの隣に座る。
京さんはリモコンを操作して、録画予約してたらしい番組を選んで決定ボタンを押した。
「あ、これやってたんですね。京さんこの人好きですよね」
「やっておもろいやん」
「DVDとかも持ってませんでしたっけ?」
「うん。まぁどの道DVDも買うんやけどな」
「やっぱ話で食ってる人達だけあって、なる程って思う部分もあるし面白いですよね」
「うん」
ミルクを淹れて、少しだけ甘くなった珈琲をちびちび飲みながらテレビ画面を観る。
京さんがお笑い観んのってあんま結び付かなかったけど、ただ単に好きって言うよりも色々拘りがあって好きって言うのもわかったし。
隣の京さんをチラッと見ると、肘掛けに肘を付いて珈琲を飲みながら真剣にテレビを観てた。
あー、何か。
そう言う横顔も好き。
キスしたくなる、けどしたら怒られんだろうなー。
「きょーさーん…」
「……」
ちょっと名前呼んだら、煩いって感じに視線だけで言われた。
…仕事しよ。
カップを持ったままソファから降りて。
床に座ってまたパソコンにかじり付く。
後ろに京さんの気配があるってだけで、気分が何か浮上した感じ。
「────るき、風呂沸いとん」
「…っえ?」
「風呂。沸いとん」
「沸いてますよ。終わったんですか?」
「ん」
「面白かったですか」
「うん、まぁ」
「あー…」
「…何やねんくっつくな」
「だって京さんテレビ観てる時にくっついたら怒りそうだったんです」
「それとこの行動は何なん」
京さんの声に、はっと気付いてパソコン画面から顔を上げる。
テレビはもう観終わったらしくて。
両手を上げて伸びをしながら、京さんの足元にベターッと倒れる。
ま、京さんに思い切り睨まれたけど。
「観終わったから、くっついていいかなって」
「いいわけあるか。邪魔」
「あー…もうこんな時間なんすか。俺も風呂入って寝よっかな」
「聞けやボケ」
「痛…っ」
京さんの足に顔を寄せて擦り寄ってたら、痺れを切らした京さんに蹴られた。
まぁそんな痛くねーけど。
「不細工なツラして甘えんなキモい」
「ひでー!じゃ、整形したら甘えていいんすか!」
「お前は自分が無いんかアホ」
「京さんの事なら何でもします」
「……」
すっげぇ呆れた顔されて見下ろされる。
だって京さんお笑い観てんだもん。
嫌がってても何でも、観てねー時の方が俺の方向いてちゃんと俺に構ってくれるから。
そん時に甘えねーでいつ甘えんだよ、ってね。
諦めか慣れか。
何だかんだ、京さんは甘やかしてくれんの知ってるから。
人間、甘えられる雰囲気とかわかってやるからそこは狡いよな。
「退け。風呂入る」
「あ、俺も」
「1人で入る」
「俺も!」
「死ね」
「やです」
「死ね不細工」
「整形しますよ」
「整形ぐらいや無理やろ。顔面大工事せな」
「俺そんなにヤバイんすか」
「うん」
「………」
すっげ楽しそうに笑いながら、そんな事を言う京さん。
そう言う所も好きなんですけどね。
でも毎回不細工言うのはどうなんですか。
自分だって、お笑い番組とか観るの絶対似合わないって思われますよ。
牛乳が無理なのに、ココアや珈琲に淹れたら飲めるって何その可愛い事って思いますよ。
考えただけで、この人愛しいな。
やっぱ好き。
そんな夜中。
終
20110404
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