恋人達のある意味惚気話/鬼歌
ラジオを終えた深夜。
挨拶も終えて、ゲストで出てくれたGacktさんとも写真を撮りつつ。
メンバーも各自帰路に着いて。
淳くんが終わるの待ってるねって言ってたから、何処にいるんだろうと思いながら携帯を取り出し外に出る。
スタジオを出ると街灯の下、淳くんが座り込んでて僕の姿を見つけると立ち上がる。
近寄って来るその顔は笑顔で、雰囲気も一発で機嫌がいい事がわかる。
「鬼龍院さん、お疲れ」
「うん、淳くんもお疲れ。ってかこんな所で待ってたの?寒くない?」
「大丈夫だよぉ。待ってるのも楽しいもん」
「そっか」
「ねーこのまま鬼龍院さんち行っていい?」
僕もそのつもりだったけど。
女の子っぽい所作で僕の服の袖を少し引っ張るその姿は、付き合う前は何も感じなかったのに今は可愛いとさえ思う。
うん、って頷くと眼鏡の奥の目が三日月になって嬉しそうに笑った。
「じゃぁタクシー拾うまでちょっと歩こうよ」
「ん。…淳くん機嫌良いね」
「えぇー?そりゃー嬉しいもん」
淳くんと2人、タクシーを捕まえる大通りまで歩く。
街灯がいくつかある道、深夜だから人通りはなく閑散としてて。
まぁ機嫌のいい理由は何となくわかるけど。
だって淳くんは僕の事、音楽に対する姿勢なんかは一番に考えてくれて理解してくれる。
それはやっぱ僕自身にもわかってて、素直に言っただけなんだけどな。
「あ!でもアレ言うの止めてよね。馬鹿かと思ったよマジで」
「アレって何」
「下の毛の話!」
「あぁ、淳くんがパイパンだって言う事ね」
「『アンタが剃ったんだろ!』って言いそうになったんだから」
「言っても大丈夫なんじゃない?ネタだって思うでしょ、皆」
「やだよ何その放送事故」
「パイパンなのは事実じゃん」
ちょっと前に剃ってみたくて頼み込んで淳くんの下の毛剃らせて貰ったんだよね。
あ、でもアレから何日か経ってるからちょっとは生えてるか。
「…、僕はやだって言ってんのに鬼龍院さんが剃ったんじゃん。変態」
「うん、可愛かったよね、赤ちゃんみたいで興奮した」
「ちょ、バッカじゃないの!?何で普通に出来ないの?大体さ、」
歩きながら淳くんが喋ってる最中、自販機を見つけたから淳くんを横切ってそそくさとそっちに寄って行ってお釣りが出る所に手を突っ込む。
ま、お釣りがある時なんて滅多にないんだけどさ。
息を吐いて顔を上げて、淳くんの方を見るときょとんとした表情で僕を見てた。
何となく後頭部を掻きながら、また淳くんの隣に戻る。
「……」
「……」
「あははっ、もう鬼龍院さん何してんのいきなりやられたらビックリすんじゃん」
「いやー」
「ははっ、もういいや、うん、鬼龍院さんはそうだもんね、うん。変態で気持ち悪いのが鬼龍院さんだからね」
「それ程でも」
「誉めてないから。馬鹿じゃないの」
何か1人で納得して笑った淳くんに言葉を返したら、瞬時に冷めた目で見られた。
淳くんのその表情は劣情に結び付いてゾクゾクする。
「今って下の毛生えかけだよね?」
「…まぁね」
「じゃ、次は伸ばして久々にツートンにしよっか」
「はぁ?」
「だって僕は見た事ないし。誘い文句の為だったんでしょ?ツートンにして僕を誘ってよ」
「ヤだよ何言ってんの」
「いいじゃん。僕以外見ないんだから」
「……。それは、そうかもしんないけど…」
「じゃ、伸ばしてね。淳くんがパイパンにしたいって言うなら剃ってあげるけど」
「…何で普通じゃダメなのさ」
「自ら下の毛ツートンにしてた子が何言っちゃってんの」
「煩いなぁ、モテたかったの!若かったの!」
「うん、だから今回はプレイでツートンね」
「……」
にっこり笑いかけて言うと、淳くんは嫌そうな顔をして視線を逸らした。
きりゅーいんさんの顔、気持ち悪いって呟いたけど。
淳くんが僕の事を一番理解してくれてる様に。
僕も淳くんの事を理解してるつもりだよ。
押しに弱いって事もね。
ちょっと拗ねた表情になった淳くんに、早く帰ろって言ったら。
拗ねながらも僕の後ろを付いて来る、僕より背が高い淳くん。
そんな可愛い恋人です、ね。
終
20120616
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