日常/玲流




仕事帰り。
俺の車で来て、また一緒に帰るんだけど今日は早めに終わったしルキが飯作るから、近所のスーパーに寄り道。

似合わないのはわかってる。
が、真剣に野菜を選ぶ全身お洒落にコーディネートされた服装のルキがスーパーにミスマッチ過ぎて、それはそれで面白いからいい。

カートを押すルキの後をついてく。
早めと言っても夕飯作りには遅い時間帯だから、仕事帰りのサラリーマンとか、客層もまばらな感じだった。


「れいちゃん何食べたい?」
「野菜以外なら」
「…野菜炒めと納豆ね」
「オイコラ俺が食えるモンねーだろ」
「大丈夫、れいたなら食えるよ気合いで」
「そんな気合いねーよ」
「はー。仕方ねー野郎だな。じゃ何がいいの」
「肉」
「……」
「え、ダメ?ステーキとか買えばいいじゃん」
「うちのエンゲル係数高める気ですか」


呆れた顔をしたルキが、しょーがねーな、とか言いながら手に取って選んだ野菜をカゴの中に入れた。

結局野菜は買うのか。


いやルキも一応バランス考えて作ろうとしてくれてんのはわかるんだけどね。
最近はちょっと食うようになったけどさ。


ルキがカゴの中に商品を入れてくのを見ながらそのまま精肉コーナーへ。


「つーか最近さぁ、昔より食えなくなって来てね?」
「あーそれはあるかも。昔の胃はブラックホール並みだったよな。ルキは昔からあんまり食わねーけど」
「食べる事は好きなんだけど、あんま量入らなかったからね」
「なのに太ってたっつー」
「うっせぇな。食う時間帯が悪かったんだよ」
「今も結構バラバラだけどな」


あ、マジでステーキにしてくれるんだ。

ルキと話しながら、俺の希望した肉をカゴに入れてくれるルキは、可愛いと思う。


ハタから見るとその状況が似合わない男なんだけど。
でも一緒に暮らす様になって自炊も増えたし、見慣れた光景。


昔と比べてルキは痩せたな、なんて後ろ姿を見ながらぼんやり考える。

間食多かったもんなー、ルキ。

そんな事を思いながら歩いてると、ルキがピタッと止まった。


「あ、米もう無くなるから買うわ。カートに置いて」
「何キロ?」
「んー。ツアーあるしなー。何キロ持ちたい?」
「いやいや、ウエイトじゃねーんだから」
「え、れいたの筋肉は米を運ぶ為につけたのかと」
「…米を運ぶ為の筋肉じゃ無いんですけどね、ルキさん」


どっちかっつーと趣味です。
ルキぐらい軽々と持てるし、これはこれで意味ある筋肉です。

笑うルキを見やり、いつも選んでる米を取ってカートに置く。


「だって俺、そんな重いの持てねーし」
「どこの姫だよ、お前」
「あはは」


あはは、じゃねーよ。
可愛いな畜生。


…あ。

棚に置いてある物を発見して、ルキが押すカートの上に置いてあるカゴをがしっと掴んで止めさせる。
その中に、目当ての商品を入れて行く。


「…おい」
「何」
「プリン買うなとは言わねーけど、何個買う気だテメェ」
「あー…食べ比べ?」
「減らせ」
「いーじゃん、ルキにも分けてやっから」
「当たり前だろ1人で全部食ったら殴る」
「ルキさんバイオレンスは無しの方向で」


目についた新商品やらお気に入りやら、数種類のプリンをカゴに入れるとルキは眉を潜めた顔をしたけど。
何だかんだで買うの許可してくれるっつーか、スーパーと言う場所的にあまり口論したくないってのもあるんだろう。
言っても無駄だからね、俺も。


台所事情は大体ルキが握ってるから。
俺も任せっきりだし。


「お前さー。プリン以外に好きになるもんねーの?よく飽きねーな」
「ルキ飽き性だもんな」
「うん。ブーム過ぎたら美味しく感じてたのが不味く感じる」
「俺は一途に貫く愛なんで」
「プリンごときで何言ってんだ、お前」


ルキが目を細めて俺を見て、レジに向かう。
もう買うモンないっぽい。


飽き性のルキが、何年もお付き合いしてる俺。
こんな似合わない場所に当たり前の様に一緒に行くぐらい。


日常として培った関係が、何より愛しいと思う。


「れいた、米持って。早く」
「はいはい」


我儘だけどな。
そこが好き。




20120703



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