38度5分の熱と恋人/敏京




『…としや"…』
「あ、はよ。京君。どうしたの?声が…」
『風邪。休む』
「えぇ!?だ、大丈夫…!?熱は…」

プツッ
ツーツー


何か敏弥が言うとったけど、風邪で熱やししんどいし声出すんも嫌やし、無視して携帯切る。
しんどい。
ほんましんどい。
何やねん風邪とかフザけんなや。

布団被っとんのに寒い。
でも顔は熱い。
喉渇いた。
でも無理や。
起きるん怠い。

もう寝るしか無いって事で、目ぇ閉じて無理矢理寝に入る。










暫らくすると、ガチャガチャと鍵が開く音。
何やねん頭に響くうっさいわ死ね!!
寝れんやんか!!

でも声出すんめんどいし、誰かはわかるから無視。


「京君!大丈夫!?薬とか冷えピタとか飲み物とか買って来たよー!!」
「…………」
「熱は!?体温計は!?」
「…………」
「喉渇いて無い?うわ、京君のおデコ熱ッ!」
「………ちょ…うっさい…うざい…」


ガサガサと袋の音をさせて、やたらテンション高い敏弥が僕が寝とるベッドんトコまで来て騒ぐ。
めっちゃウザイ。
何でコイツ大人しく出来んの。
余計熱上がるわ。


「あ、御免ね?大丈夫?」
「無理」
「熱は?」
「……」


計っとらんから、わからんし。
首を横に振ると敏弥の冷たい手ぇが額撫でて、敏弥の額とくっつけられる。
ちょ、敏弥の顔アップやねんけど。
でも振り払う元気も無いから大人しくしとく。


「かなり熱い…しんどいよね。冷えピタ貼るね」
「ん…」


敏弥が買って来た冷えピタを額に貼られる。
めっちゃ冷たぁて、気持ちイイ。
目を瞑って、荒く息を吐くと優しく敏弥の手が髪を撫でる。


「喉渇いてない?飲める?」
「んー…」


喉は渇いとる。
けど、起きるんめんどい。
敏弥がキャップ外したスポーツドリンクのペットボトルを差し出して来るけど、寝とったら飲みにくいし。
ストローか何か無いんかい。


「無理?じゃぁ飲ませてあげる」
「?…ちょ」


コイツ…!
口移しで飲まして来よった…!
何しとんねん。

あー…でも、喉渇いとったから身体が求めとったモンが入って来て、気持ちえぇ。
抵抗するんもしんどいし、されるがままになっとっちら濡れた音立てて敏弥が唇を離した。


「もっといる?」
「ん」
「かーわいい」


まだ喉渇いとったから、素直に頷くと何かホザきよった。
けどもう何か全部がどうでもえぇ。

喉を潤す、その行為を何回か繰り返して、最後は口移しで飲ませる事よりもお互いの舌を貪っとった。
自分の舌が熱い分、敏弥の舌が冷たぁて気持ちえぇし。


「寝てなよ。お粥作るからね」
「…ん」


唇を離して頭を撫でられ、囁かれると静かに目を閉じる。
あー…何か、風邪引くと人間心細くなるってホンマなんやな…敏弥の存在が有り難いとか。
いつもならありえへん。

さっきよりも幾分落ち着いた呼吸になって、意識を手放す。







「ん"ー…」


ちょっと寝た。

不意に目が覚め、瞬きしながら辺りを見回す。

…ら、敏弥の顔が間近にあってビビッた。
何か手ぇ握っとるし。
なん、ずっと傍におったん?


「あ、起きた?お腹空いてない?薬飲まなきゃいけないからお粥食べるよ」
「…いらん」
「ダメ。ちょっとでも食べて。レトルトのお粥だけどね」


そう言って手を離して、敏弥はキッチンへ。
その姿を目で追いながら、寝返りを打って横向きになる。

あー…何で風邪ん時ってこんな動きた無いんやろ。
めっちゃしんどい。


「はい、京君。お粥だよー」
「………」
「ふーふーするからね。ちょっとでも食べてね?」
「…欲しない…」
「体力付けなきゃいけないから、食べて。ね?」
「ん…」


敏弥が口元に冷ましたお粥を持って来たから、横になったままゆっくり口を開けるとお粥が流れ込んで来た。
柔らかいから、噛まんでも飲み込めた。

でも味が全然せん…。


「イイ子。ね、もうちょっと食べて?」
「…んー」


何度か繰り返される、ちょうどイイ温度のお粥が口ん中に流し込まれる。


「も、いらん…」
「無理?」
「ん」
「そっか。じゃぁ薬飲もうね」
「……」
「口開けてー」
「あー…」
「素直な京君も可愛いね」
「ッん」


薬が口ん中に入れられて、また敏弥が口移しで水を飲ませて来る。
また可愛い言うたし。
ムカつく。
でも怒る気力も無いからしゃーない。

ってかコイツ…。


「………仕事は…?」
「ん?大丈夫だよ。薫君に京君が風邪引いたから看病するから休むって言ったから」
「…は」
「だから1日中付きっきりで看病するね!」
「…アホがおる…」
「何なら俺に移してよ。風邪。移した方が早く治るよ?」
「んッ」


そう言いながら、またキスして来る敏弥。
うん、風邪めっちゃしんどいから、本気で移してやろって思ってキスに応じる。
何度も角度を変えてのキス。
キスが気持ちえぇから、目ぇ閉じると、また睡魔が襲って来た。


多分、敏弥は僕が寝とっても近くにおる。
そんな確信があったから、安心して寝れた。




次の日。

熱はマシんなったし身体も楽になった。
敏弥は自分のおかげやとホザいとってんけど、ムカついたから無視っとったけど。


ってか。
僕の看病1日中やっとったのに、風邪移らんかったって事は。

敏弥ってやっぱり馬鹿やったんやな。




20090124


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