贈り物 | ナノ



「ん〜っ、やっぱアイスは暑い日に食べるに限る!」

「名前とアイス屋来るの久しぶりね」

「そうだね。一緒に帰るのも久しぶりだよ」


晴香は最近彼氏と帰るからね。
私は今日、部活が休みの日なので晴香と一緒にアイス屋さんに来ていた。
今は、アイスのダブルを選ぶともう一つおまけしてくれるという嬉しいサービス期間。
そのせいか学生が多く来店しており、店の中のテーブルは空いてなかったので外のベンチに座って食べていた。


「ダブルの値段でトリプル食べれるんだからお得だよね」

「お金がない学生には嬉しいわね」


お喋りをしている最中も、アイスをどんどん食べ進める。
外は暑いから溶けるのが早いのだ。


「やっぱり中は空いてなかったね」

「まあ、当然と言えば当然だよね」

「何言ってんの二人とも!!アイスは外で食べてなんぼでしょうが!!」

「……この声」


晴香の言葉に、私はお店の入り口付近を見やる。
同じ高校の制服を着た男の子たち。
その内の一人の子と目が合った。


「あ」

「どうしましたか、要くん?」

「いや、別に…」

「おーい、あんたたちー!!」

「晴香!?」


晴香があの5人に向かって突然叫んだ。
私は驚いてアイスのスプーンを落としそうになった。


「あ、川村さんと名字さん発見!!!」


5人は晴香に呼ばれたために、私たちのいるベンチへと歩いてやってきた。
みんなもアイスを買ったようで、それぞれの手にカラフルな色のアイスがあった。


「あんたたちもアイス食べに来るのね」

「そりゃーサービス期間だからね!!来ない方がおかしいってもんよ!」

「悠太ー、オレ座って食べたい」

「はいはい。えーっと…、あーダメ。ベンチも空いてないよ」

「えー…」

「祐希君、隣座っていいよ」


3人掛けのベンチに二人で座っていたので、私は晴香の方に詰めて座り、もう一人座れるスペースを作った。


「わ、ありがとう名字さん」

「いえいえ。どういたしまして」


祐希君はストンと隣に座り、アイスを食べ始めた。
祐希君はトリプルで、私たちと同じ様にカップで食べていた。
悠太君はダブルでコーン、松岡君はトリプルでカップ、塚原君はシングルでコーン、橘君はトリプルでコーンだった。
え?
トリプルでコーン?


「橘君、それ大丈夫なの?」

「え?何が?」


私がそう問いかけると、橘君はきょとんして首を傾げた。


「だから、アイス…」

「ああ、千鶴、コーンなのにアイス3個も乗っけて大丈夫?って聞いてるんだよ名字さんは」


隣の祐希君が私の言いたいことを察したらしく、アイスを食べながら助け舟を出してくれた。


「あー、大丈夫大丈夫!!オレならこんなの余裕だね!要っちじゃあるまいし」

「どういう意味だよそれ」

「要くんはそんなヘマはしませんよー」

「…100%そうってわけじゃないけどね春」

「そうね。私はヘマ希望」

「おい川村」


隣に座っている晴香はにやにやと塚原君を見上げた。
そんなにヘマしているところを見たいのか。


「橘君が大丈夫って言うなら…いいんだけど。今日はいつにも増して暑いし気をつけてね」

「なーに!この橘千鶴、暑さなんかに負けねーってのよ!!」

「…あ」

「え?」

「あーあ…」

「ああああぁーっ、オレのアイスーーー!!!」


ベチャッという音を立てて、橘君のアイスは地面に落ちた。
しかも可哀想なことに3個全部…。


「うおおお…」


橘君は地面に崩れ落ち、アスファルトの熱によってさらにどんどん溶けていくアイスを見つめて涙を流していた。




暑さには勝てません。





(橘君…)
(暑さに負けたな)
(完敗だね)
(くっ…こうなったら…!みんなのアイスもらうからいいもんー!!ね、春ちゃん!)
(えっ、ごめんなさい千鶴くん…。僕もう食べ終わっちゃいました…)
(……)
(あ、ちなみにもう全員アイス食べ終わってるからね、千鶴)
(速っ!!)
(オメーが遅いんだよ)







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