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「サック、言ったのかい?」
「…言ってねえよ」

≠赤信号の奇跡

「ハハハっ!まだ言ってないのかい?」
「あのなぁ、お前にどうこう言われるような事じゃないんだよ」

余計なお世話だ、そう告げて俺はロッカールームを出た。扉の向こうから聞こえるジーノの高笑いに舌打ちしつつ俺は小さな恋人の待つ駐車場に足を運んだ。

「あ、堺さん!遅いっスよー」
「悪いな」

車に乗り込むなり小さな恋人、世良は俺の横でマシンガンの様に話し始める。椿が赤崎にいじられてただの黒田に怒られただの、一向に話しを止める気配はみられない。
俺はそんな世良を横目に先日のジーノとの会話を思いだす。

「サックはセリーと付き合ったのかい?」
「んだよいきなり…」
「今日二人とも調子いいじゃないか」
「だったらなんだってんだよ」
「へぇ!とうとうサックも好きっていったの!」
「は?言ってねえけど…」
「……なんだって?」
「それって付き合ったって言えるのかい?」

その日一日俺は考えていた。あの時世良に好きだと言われた、だから俺は返事の意味をこめて世良を抱きしめた。確かに、抱きしめものの好きだとは一言も言ってない。しかしそんな事は言わなくても伝わると思っていたからであって。

「…いさん、堺さん信号赤っ!」
「っ!」

世良の声を聞き我にかえった。即座にブレーキを踏む。急な衝撃に耐え切れず世良の膝に乗っていたバッグが前方へ飛んだ。

「っはぁ!あっぶね!」
「わ、悪い…」
「堺さん!運転中はボーッとしないでくださいよ!」

死ぬかと思った、なんて涙目で言う世良にもう一度悪いと言って頭を撫でた。
注意をはらいながら暫く車を走らせる中またも考えるはジーノとの会話だった。きっと俺の中で答えは出てるはずだ、ただその答えを言葉で表すのが出来ないだけで。
(言わないままで、付き合ってるっていえんのか?俺は自分の気持ちすら伝えることができねぇのか?)

「ちげぇよ…」
「へ?なんか言いました?」
「…好きだ」
「え、あ…え?」
「世良、愛してる」

赤信号で止まった車の中で二つの影が重なった。

「さささささ、堺さんん!?」
「…」

俺は目を丸くし赤面する恋人の頭を撫で車を発進させた。

≠赤信号の奇跡

(へぇ、言えたのかい)
(ありがとよ、ジーノ)
(…明日は雪かな)
−−−−−−−−−−−−
「遠ざかる影」の禅様より素敵文を頂きました!
ジーノが男前過ぎます。お節介をやくジーノも素敵!
告白の返事を言葉でなく行動で示す堺さんはロマンチスト過ぎて可愛いです。好きだ、と言った上に愛してるまで!世良ではなく私が倒れそうです。
禅様ありがとうございました!




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テーマ「人外ファンタジー」
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