朝晩は冷えるようになってきたね、と首をすくめて笑った横顔は、鼻の頭と頬をちょっと赤くしていて、確かに寒そうだった。指先を伸ばしかけて思いとどまる。俺たちの関係はなんて不自由なのだろう。一番ちかしいお前に、触れたい時に、その瞬間に、触れることさえできない。

ハロウィンだって、とデパートのディスプレイを見て言う。オレンジとむらさきと黒。お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞ、と、歯をカチカチさせておどける。ねえ寄って行こうよ、ここのデパ地下でモロゾフのパンプキンプリン買って行こうよ。じゃなきゃイタズラしちゃうよ。

しろよ。

アハハ。

高く青く遠い秋空に、他愛ない会話が吸い込まれていく。ポケットに手を入れたまま、肩をぶつけ合う。それくらいなら不自然じゃない。全然。手を繋いで寄り添って歩く恋人たちとすれ違う。彼らとおんなじなのに、俺たちの触れあいは誰にも分からないよう、密やかに行われる。そんな自分たちを卑怯に感じることもあれば、哀しく思うこともある。まれに、優越感を抱きもする。奇妙でいびつな優越感を。

ね、寄って行こう、とまた促して、銀髪を揺らし、お前が踊るような足取りで一歩前に出る。なあ、きれいだろう。硬さと柔らかさが矛盾なくその内にある、枯れ葉を踏み、コートの裏地の青を翻して振り向いて笑う、彼はきれいだろう?

俺の恋人だ。わかってくれなくてもかまわない。馬鹿だと言われてもいいさ。お前さえそうして笑っていてくれるなら。

坂田、と呼んだら、俺を見て、微笑んだ。まるで、わかっているよと言うように。










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