人を愛したことはあるか?

そう聞かれたらなんと答えるだろう。もとより、イエスかノーかで答えられる問題でないことは分かっている。そもそも、愛ってなんだ?どこまでが欲望で、どこからが愛だ?自分より相手が大事だと思うこと?たわ言だ。誰だって、いざとなれば何を犠牲にしてでも自分を守る。それが人間の本能だ。

逆に聞きたい。人と人は理解し合えるものなのか?どこまでいっても他人は他人だ。結局人間は、誰しも独りで立っている。分かり合っていると思い込んで、繋がったと錯覚して、死ぬまで錯覚していられればそれはそれで幸せだろう。だが、幸せな夢から醒めた時の喪失感はどうすればいい?まるで世界が色を無くしたような感覚を味わうくらいなら、最初から、たとえ覚束なくとも独りで立っている方が幾らかマシだ。

たぶんお前は笑うんだろう。素直になれよと言うのだろう。寂しいくせにと、子供を宥めるような口調で言うだろう、きっと。お前は青いねなんて、偉そうに。

−−俺は、人を愛したことがあるよ。

お前がそう言ってから、ずっと俺は考えている。お前の言う愛とはなんだろうと。俺とお前の関係について、お前はどう表現するのかと。これは愛か?愛ではない何かか?

答えは簡単には出ない。もしかすると永遠に。いつかお前が俺を見離す時、聞いてみたい。俺はお前に愛されたのか。これは愛と呼ばれるものだったなのか。それとも、俺はただ、やはり独りで立っていただけなのか。

どうでもいいか。愛のなんたるかを知ったところで、それはたまたま駄菓子についてきたおまけのようなものだろう。少し得をした気分になれるだけ。

だがひとつだけ、俺は願わずにはいわれない。俺がくたばる時、お前がいつもの飄々としたツラで立っていてくれることを。たとえ独りでも、悲しみを抱いていても、俺より先にくたばることの、ないように。










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