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ミントゥが立ち去ってからもリャンチィは動く気配がなくて、俺は一旦入っていた浴室から顔を出して首を傾げて見せた。
「どうかした?」
「……ばれてたのか、と思って」
何をいまさら、って言うのが俺の正直な感想だけれど。
そういえばリャンチィは俺が夜に誰と何を話しているのか知らないから、意外と情報量が限定的なんだ。
鈍感というのもちょっとはある。
これはきっと、ラオシェンが気づいているのもまだ知らないんだろうな。
「一定の範囲内にある知り合いには大体バレてるんじゃない? 隠してないし」
「一定の、というと……」
「ユウはもちろんだし、ラオシェンとか親衛隊のみんなとか」
途端、ぼわっと顔が真っ赤になったのに、俺は心置きなく笑わせてもらった。
「まぁ、ほら、近日中に結論を出さなくちゃいけないとかいう決まりもないんだし、ゆっくり考えたら良いよ。そんなことより、俺のリャンチィ切れを満たしてよ」
「切れた?」
「もう、何日も禁断症状に悩まされてます。ね、頂戴」
しなだれかかっておねだりすれば彼が拒否するはずもない。
がっしりと俺を支えて、俺だけ半裸なその上半身をかちっと制服をまとった自分自身に引き寄せ、顎に手を添えて深く口付けてくれる。
もう、それだけで腰が砕けそうなキスに酔わされ、自分で立てる気がしない。
一応大人の男として人並みの体重はあるはずなのだけれど、リャンチィは随分軽々と俺をお姫様抱っこに抱き上げて、ようやく一緒にお風呂に入った。
この世界の風呂は排水溝はかろうじてあるものの、水道の蛇口とかもなくて汲み上げた水を桶にためて持ってきて移し変えるっていう面倒な作業の末に供される贅沢品だ。
それを知らされてから、風呂好きだった俺は少しだけ遠慮して二日に一度にしてもらっている。
庶民は共同浴場が一般的だし、王宮内でも専用の浴室をもらっているのは国王か鳳王くらい。
後宮でも大浴場一室の交代制だ。
さすがに何度も足し湯をしていたら不経済だから追い炊き用のボイラー室のような部屋が隣に併設されている。
そんな贅沢品だからこそどんなに裸で触れ合っていても浴室内で行為になだれ込んだりはしたことがない。
後片付けが大変なのは想像するという手間も要らないわかりきったことだから。
洗い場でお互いにお互いを洗って、頭まで綺麗に汚れを落とす。
ついでに、俺のほうは中まで準備する。
俺は恥ずかしいから自分でしたいのだけれど、こればっかりはリャンチィが譲ってくれない。
ついでに中まで擦られてあられもない声をあげてしまうのは、まぁ成り行きというか。
「……っふ、んっ……」
「声、我慢するな」
「や、だって……」
「聞かせろよ、シン。欲しいんだろう? 俺を煽れ」
「も、バカ……んぁあっ」
ぎゅっと抱きついて意地悪な恋人に甘えて詰って我慢し切れなくて声を上げて。
浴室を出てざっと水気を拭き取ったくらいでベッドになだれ込んで、そのまま連続何回戦か。
始めてしまうと箍が外れるのは多分、まだ二十歳か二十一歳かって年齢のせいというより普段が抑圧されているからだと思うんだ。
こんなにラブラブだってのに、半年付き合ってまだ回数を数えられる程度だってんだから、我慢しすぎだと思うんだよね。
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