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過去を振り返っても異質な存在の鳳王を、側で守り支える役目を担った護衛官、リャンチィは、シンの自室でその不思議な色の肌理細やかな肌を直に撫で、幸せなため息をつく。
確かに、よく無茶もするし、行動は突飛だし、考え方も独特だ。
けれど、だからこそ側にいてまったく飽きない人。
それが、自分が一生仕えることになったその主人である。
王族として生まれ、親衛隊で頂点のすぐ側まで上り詰めたリャンチィだが、そんな特別な生まれ育ちをあっさりと凌駕する波乱万丈な現状に、満足していた。
普通なら、一生の仕事が定まってしまったのだから、もっと穏やかな日常を過ごしたいと思うところだろう。
だが、この鳳王に仕えていると、穏やかな日常では物足りないのだ。
もっともっと振り回して欲しいと思う。
そんな主人だからこそ、そばにいることが楽しい。
「私は幸せ者ですね」
「……あぅ、ん。……な、に?」
「貴方に巡りあえて、貴方にこうして身も心も捧げることができる。私はこの国一番の幸せ者です」
「? どうしたの? 突然」
肉体の快楽に身を委ねていたシンが、恍惚とした表情のまま恋人を見上げ、不思議そうに首を傾げる。
そのきょとんとした表情が可愛くて、リャンチィはくっくっと喉を鳴らし、シンの心臓の真上に口付けを落とした。
「愛しています。シン様」
きっと、シンがこの世界にやってきてくれたことこそが、リャンチィにとっての奇跡。
そして、フェンシャン王国にとっての奇跡に違いない。
その生きた奇跡は、自覚もなく、ただ恋人に身を委ねて快楽に浸っている。
楽しそうに翼を広げて飛び回る彼の、唯一頼ることの出来る止まり木になれれば、リャンチィの一生は幸せのまま幕を閉じることだろう。
願わくば、生涯添い遂げることが出来るよう。
祈るばかりだった。
おしまい
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