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 外はまだオレンジ色の空が見える時刻だったけれど、俺は自分の部屋の寝室で、ベッドの上に仰向けに寝転がっていた。
 俺を押し倒すように、リャンチィが俺の上に馬乗りになって、見下ろしてくる。
 優しい視線に、勝手に力が抜ける。

 おでこに触れるだけのキスを落とす彼の仕草が、ちょっぴりもどかしい。

「本当に、良いんですか? 逆でなくて」

「良いの。リャンチィ、優しいから、気持ち良いんだもの」

 ちなみに、俺って結構小柄で、百七十に届かないくらいの身長だから、軍人として惚れ惚れするくらい立派な体格の彼の鼻先くらいしかない。
 剣道とか合気道とかくらいしかしてなかったから、貧弱とは思わないけれど、筋肉のある方でもないしね。

 自分より大きい人を抱くのは、結構重労働だと思うんだよね。

 せっかく気持ち良いのを知ってるんだから、してもらいたいと思う。

 そりゃね、もちろん、俺は男だし、男としての自負もプライドもあるから、ただ組み敷かれるだけなのは落ち着かないけれど。
 彼くらい大事にしてくれると、まいっか、って気になっちゃうんだよね。

 おねだりするように、彼の首の後ろに手を回して、引き寄せる。
 近づいた唇に口付ければ、喰らいつかれた。
 息まで吸い尽くすほどの、彼からは想像もできなかった深いキスに、頭がぼうっとする。

 唇が離れた隙に息を大きく吸うけれど、途中で口を塞がれてしまう。
 離れて行ってしまう舌を追いかけて、俺も彼と息を共有する。
 ちょっと苦しいくらい。

 キスをしながら、そっと頬を撫でる手が、それだけなのに快感だった。
 身体中性感帯になったみたい。

 頬を撫でていた手が下に移動していく。
 撫でて移動するからキスに夢中でも感触を追いかけられた。
 胸の飾りを弾かれて、喉が鳴る。知らず、息も弾んだ。
 快感に喘いだのと一緒に離れてしまった唇を、リャンチィが俺の耳元に寄せてくる。
 味見をするようにペロリと舐められて、背中がぞくぞくする。

「気持ち良いの?」

 ヤバイ。
 俺、耳が弱いみたい。
 耳元に囁かれるだけで、気持ち良い。
 声も返せなくていっぱい頷いたら、楽しそうに笑われてしまった。

「俺に身を任せてて。もっと気持ちよくしてあげる」

 リャンチィって、オフの時は一人称が「俺」なんだね。
 いつも「私」だから、なんだかちょっぴりワイルドな感じ。

 ついでに首もとも舐められて、それがまた快感に感じる。
 もう、本当に全身性感帯状態かも。

 鍛えられた身体が俺の肌の上を滑っていく。
 一般的に性感帯だといわれているところでなくても、触られたところすべてが反応するみたい。

 やんわりと、俺の一番大事なところを握られて、のけぞった。
 先の方がぴちゃっと音を立てる。
 舐められた?
 
「リャン……」

「昨日のお返し。じっとして」

 舐められるだけだってすごく敏感に感じるのに、先の方をすっぽりと覆われて、歯が立てられたみたいで、なのに痛くなくてすごく気持ち良い。

 いつの間に香油を使ったのかわからないけれど、つるりと滑るように後ろにも手が忍び込んでくる。
 結構深いところまで指が入ったのがわかるのに、全然痛くないんだ。
 気持ち悪くもないし。
 それどころか、気持ち良いくらい。

 昨日は俺がしたことをされ返されているだけなのに、彼の口に含まれていると思うだけでも興奮してしまって、長くもちそうにないんだ。

「や。ダメだよ。いっちゃう」

「もう?」

 えーん、リャンチィ、意地悪ぅ。

「ふふっ。嘘嘘。いっちゃって良いよ」

 ほら、って促しながら、ダメだって、そんなに吸っちゃ。

「や、いや、いっちゃうぅっ!」

 いつの間にか俺の手の届くところにリャンチィはいなくて、両手をぎゅっと握っていたんだけれど、そのまま、身体が硬直する。
 ぴくぴくって痙攣するのを止められない。

 って、リャンチィ、口に咥えたままじゃなかった?

 コクリ、嚥下する音がやけに大きく聞こえた。

「ごちそうさま」

 お粗末様。
 って、そんなもの飲むなよ。

 突っ込みたいのに、俺自身はすごく荒い息をついていて、そんな余裕はないんだ。
 くそぅ。悔しいぞ。

 やっと息が落ち着いて、むすって不機嫌にして見せたら、なんか、笑われちゃったし。

「イヤだった?」

「飲まないでよ」

「どうして? 貴方のだもの、吐き出すなんてもったいないじゃない」

 逆の立場だったら?って考えれば、確かに俺も飲み込むかも。
 吐き出すなんて、もったいない。
 
 確かに似たもの同士だとは思ってたけど、こんなところまで意見が一致しなくても良いのにね。
 恥ずかしいよ。

「もっと恥ずかしいことするんだから、こんなことで怒らないで。ね?」

「……怒ってないもん」

 ただ拗ねてるだけだもん。
 ちょっとだけ幼児退行。
 抱きしめてくれるから、素直に抱きしめられる。
 背中に腕を回して。

 そういえば差し込んだままだった指がもぞもぞと動き出すのに合わせて、落ち着いていた快楽が呼び戻されてくる。
 指先で撫でられたそこがすごく気持ちよくて、勝手に腰が動くんだ。
 ぴくん、って。

「ここが、気持ち良いんだね」

 質問じゃなくて、確認だった。
 俺はといえば、頷くしかない。
 だって、気持ち良いんだ。
 これがあれだね、前立腺ってヤツだね。

 指で押し上げるように強く押されて、出したばかりで萎えていたはずのモノがむくむく元気になる。
 あんまり正直すぎて恥ずかしいんだけど、リャンチィは嬉しそうに撫でてくれた。
 子供を誉めるような仕草で、なんか、それ自身も俺なのに、嫉妬してしまう。

 前も後ろも、物欲しそうに涎を垂らしてくちゅくちゅいうから、耳を塞ぎたいくらいなんだけれど、そんな音に煽られちゃってるのもまた事実で。

「リャン……」

「シン様。良い?」

「嫌」

 え?

 ちょっとびっくりしたみたいに、リャンチィの動きが止まる。
 俺の言葉の意味がわからなかったのか、あまりにも想像と違ったのか。

 でも、俺の答えは「良い?」の答えじゃないから。

「様、イヤ」

「シン……?」

「そ。良いよ、して」

 これだけ煽られれば、俺だって欲望に正直にもなるさ。
 良いよ、じゃなくて、して?だよね。

「愛してる」

 耳元に囁かれて、一緒に覚えのある太さのモノが俺の中に入り込んでくる。
 嬉しいのと、生理的なものと入り混じって、目尻に涙が浮かんだけれど、流れ落ちる前に彼が舐めとってくれた。

「あぁっ」

 途中までゆっくり入れてくれたくせに、最後の一押しで一気に押し込まれて、我慢できずに声を上げてしまう。
 気持ち良くて、痛みなんてまったく無くて。幸せで。

「リャン、チィ! 好きっ」

「シン、シン。愛してる」

 その言葉、すごく嬉しい。
 もっと言って。

「気持ちいいの?」

「んっ。良いよ……っ。あぅっ!」

 向き合って抱き合うなんて、結構アクロバティックな姿勢なんだけれど、でも、彼本人にしがみ付いていたかった。
 ぴったり結び合ったそこをもっと強く打ち付けて、ぎゅっと抱きしめてくれる腕の力強さが嬉しくて。

 この人だけは、絶対に手放したくない。
 ずっと、そばにいて。
 抱きしめていて。

 愛してる。

 幸せに包まれて、すごく素直にそう思った。

 頭が真っ白になる寸前の、記憶。





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