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 結局、警視庁で一週間すったもんだの会議を繰り広げた挙句、値引き交渉を重ねて一千万円と引き換えに開放された。

 値引きに、内心では快く、外面は押し付けがましく、応じた理由は、紛れもなく、その差額を武人が身体で支払ったおかげだったが、その事実を警察機関が知ることは、今後一切ない。




 そんなわけで。




「どぉも。災難ですね」

 そんな声のかけられ方に、貴文は少し驚いた表情で振り返り、思ったとおりの人物を見つけて、少し嬉しそうに一瞬表情を綻ばせた。

 場所は品川警察署の窓口。
 酔っ払いに絡まれた挙句、何もしていないのに留置所に放り込まれた災難な手下の引き取りに、大所帯で押しかけたところだった。

 一方の武人は、分厚いファイルを抱えて、いかにもそこを偶然通りかかったような格好だ。
 どうやら、この管内で起こったヤクザがらみの事件に引っ張り出されてきていたようだ。

「また、ごねてるんですか? すみませんね、いつもお手を煩わせて」

「いやいや、これも仕事のうちだ。今回はこっちに非はねぇからな」

 やいのやいのと窓口で騒いでいる手下たちから一歩はなれて、貴文は話しかけてきた武人に近寄っていく。
 武人も、情報収集のチャンス、というふりで貴文に寄っていった。
 隣り合って立つのは、互いに警戒しているポーズのためだが、その会話の内容はまぎれもないプライベートで。

「今夜は雄太の希望で鰻だぜ。来るか?」

「いいね。今日は定時で帰れそうなんだ。事務所に寄ったほうがいい?」

「定時なら、もうすぐだろう? この先のスタバで待ってる」

「了解」

 まぁ、そういうことだ。





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