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気がついたとき、僕は瓦礫の中に無傷で埋もれていた。目の前には学年主任の教師の顔があって、心配そうにこちらを見ていた。
「あぁ、気付いたね。木村くん、大丈夫かい?」
「……はい、内藤先生。大丈夫、で……す……!?」
答えながら周りを見回して、驚いた。辺りには瓦礫の山、見上げれば校舎が崩れて鉄筋がむき出しになっている。元はコンクリートの屋根だったらしい塊には、血がべっとりと付いていた。
僕には幸いなことに何の怪我もなく、ただ気を失っていただけだった。けれど、僕の周りには、身体の何処かに傷を負って手当てを受けているクラスメイトが大勢いた。
突然、近くで救急車のサイレンが鳴り始め、びっくりして肩を揺らす。
「見たところ外傷はなさそうだが、頭を打っているかもしれないから、病院に行って検査を受けてきなさい。今、重傷人から救急車で搬送しているから、それが済んだら病院に連れて行こう。立てるかい?」
頭を打って、と言われたが、別に頭も痛くないし、立ち上がってみればふらつくことも無かった。ただ、少し動悸が激しいだけだ。
少し離れたところで、比較的軽傷の生徒に手当てをしていた保健医の相原先生に、内藤先生が僕の症状を説明する。と、そこでちょうど手当てを受けていたクラスメイトの一人が、突然喚きだした。
「この、化け物! お前、一体何をしたんだよ。ただふざけてただけだろう! 何でこんなことになるんだよ!!」
それは、周囲の人間の手を止めるのに十分な、問題発言だった。僕を相手にふざけていた、というのもそうだが、そもそもこの校舎崩壊事件を起こしたのが僕だというのなら、その根拠は一体何なのか。
けれど、その生徒はただ、僕を化け物呼ばわりし続けるだけで、一向に要領を得ず、僕と彼を引き離すことで事態の収拾を図るしかなかった。
少し落ち着いたところで改めて校舎を遠くから検分してみれば、その校舎は更衣室の、僕が倒れていたところを中心にして、半球を描くように綺麗に抉れていた。
原因不明の私立中学校舎崩壊事件は、大いに報道番組を賑わす事となった。
テレビ局が取材した結果、その現象を学外から目撃した近所の人の話では、突然校舎の一階の一角が半球状に光ったと思ったら、ガラガラと派手な音を立ててその部分がすべて崩れ落ちていた、という実に曖昧で、科学的に説明のつけようが無い状況だったらしい。
その場面をビデオや写真に収めた人はさすがにいなくて、人によって表現はバラバラだったものの、そこが光ったことと、気がついたら崩れる音がしていたというところだけ、一致していた。
それは、更衣室のある学習棟一階に教室がある一年生の証言も似たものだった。廊下の男子更衣室方向が突然光り、光が収まると同時にガラガラと崩れる音がして、授業が中断されたのだそうだ。
その時、男子更衣室にいた二年一組の男子生徒二十人は、全員が病院に運ばれ、うち五人は重傷だという。
その事件が発生した瞬間、男子更衣室で起こっていたのは、僕を相手にした悪ふざけ。火元も無く、爆発物の痕跡も無い。まさに、原因不明。
これは、もしかして、僕が原因なのだろうか。
でも、どうして?
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