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 きのこと山菜の天ぷらに舌鼓を打った後、僕はドラゴンに変身したディグダに乗せてもらって、空中遊泳と相成った。ちなみに、ディグダのお達しもあって、隣にルフィルが寄り添っている。

 本当は、置いていこうと思っていたんだ。帰る場所になっていて欲しかったし、何かあった時に外にいてくれた方が助けてもらえるし。

 けど、その役目は他の皆に委ねられることになった。それが、ディグダの判断だったから、僕にも異論を唱えられなかった。

 ハーンならまだしも、僕程度の経験量しかない若造の判断なんて、ろくなものじゃないのは痛感してるし。

 空からの来訪者に、城の警備兵たちは一斉に警戒態勢を取った。まぁ、無理も無い。この世界でドラゴンなんて、ディグダだけだろうし、人間と一般的な動物たち以外はみんな混合種だと思って間違いないこの世界では、ドラゴンという異形の生物は警戒の対象だ。

 ディグダのドラゴン姿は西洋風で、恐竜に蝙蝠の羽をつけたような形に近い。東洋の龍のように長い体ではなくて、大きな顔にでっぷりとした体格、身体の三倍はありそうな大きな翼。手が身体の大きさに比べて小さい分、足はがっしりと大きい。

 表現としてはでっぷりとした体格である彼だけれど、全体的な印象で見ればやっぱりスマートでカッコイイ姿だ。その背中に乗せてもらえたのだから、感動もひとしお。

 ディグダは警備兵の見守る中、悠然と中庭に降り立ち、僕たちを下に下ろして、いつもの人間の姿に戻った。僕の手から服を受け取ってささっと着込む。

「シィン王にお目通り願いたいのですが、お取次ぎいただけますか? 僕はハンペータと言います」

 剣を僕たちに向けて警戒しつつ近寄ってきた、警備兵の隊長らしい人に、僕は取次ぎを頼む。僕の名前を知っていたのか、顔を見て気がついたのか、彼は急いで武装解除すると、僕たちにここで待っているように言って、一目散に王宮の中へ戻っていった。

 待つこと、一分足らず。

 やってきたのは、シィン本人だった。

「お待ちしておりました、大賢者様。ようこそお越しくださいました。ささ、どうぞ、中の方へ」

 シィンが自ら案内する相手と知って、隊長が大慌てで出て行ったことで困惑の表情のままどうしたものかと困っていた警備兵たちが、一斉に武装を解除し最敬礼をとる。

 大勢の警備兵が見守る中、僕たちはシィンに促されて、初めて来たときにも案内された会議室へと通されることになった。





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