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 ルフィルの手は、器用には出来ていない。猫の手だから、ただ押さえつけるか、引っ張りあげるか、そのくらいが関の山だ。

 でも、着ている服がゆったりした形に出来ているから、中にもぐりこんで捲り上げるくらい簡単に出来るらしい。

 小さい、ただの飾りでしかないような乳首を、手とは違ってとても器用な舌で舐められて、僕は身を捩った。こんな小さいものでも、気持ち良いのは気持ち良いらしい。

「ルフィル……。どうしても?」

『嫌なら、逃げ出せ』

「……ルフィルには、嫌われたくない。だから……」

 ぴたり、とルフィルの動きが止まった。

 僕は、言うべき言葉が続けられず、ただ視線をそらす。

 焦らしていれば、いずれルフィルの目前にそれは晒されるだろう。だから、言っても言わなくても結果は同じ。

 そして、その後のルフィルの反応が、恐いんだ。

 黒豹の姿であることは、もう十分に理解している。ハーンの恋人だったことも、彼とそういう関係だったことも。そして、僕にも同じ関係を望んでいることも。

 そのこと自体に対して、僕はもう、ほとんど抵抗する意思を持っていなかった。ルフィルなら、良いや、って。そのくらいには、受け入れていたんだ。自分で気付かないうちに。

 けれど、僕が持っている根本的な問題は、気持ちの問題で片付けられるものじゃないから。

「ルフィルが好きだから、嫌われたくないから、知られたくないんだよ」

『何か、隠し事があるのか?』

「……うん」

 本当は、否定しようと思った。別に隠し事なんてないよ、って。

 でも、ここまで意味深な反応をしていて、それでは説得力が無い。だから、素直に頷くしかなかった。

 ルフィルは、その返答に納得してくれたらしくて、僕の捲くっていた服を元に戻し、隣に寝そべった。それじゃあ、仕方が無い、って感じで。

『話しては、くれないんだろう?』

「ごめん」

 今は、無理だ。

 もちろん、ずっと一緒の共同生活だから、いつかは皆に打ち明けなくちゃいけないけれど。今の僕の精神状態では、ルフィルに気味悪がられた時、立ち直れないと思うから。

 ルフィルは、困ったようにため息をついて、もう一度僕にキスをくれた。

『それは、ハンペータの体臭が女性フェロモンを含んでいることと、関係があることか?』

 ……ふぇ!?

「え、え、あの、な、何で?」

『なんだ、図星か』

 僕がビックリして慌てふためく事こそが返事になったらしくて、ルフィルは喉を鳴らして笑った。僕はと言えば、茫然自失。だって、ホントに、図星なんだもの。

『忘れたか? 俺は、耳と鼻が普通より数倍良いんだ。そのくらい、嗅ぎ分けられる。ただ、まぁ、ハンペータのいた世界ではそれが普通なのかと思っていたから、問いたださなかっただけのことだ。何しろ、俺が会った相手はハンペータ一人だからな。比較材料が無い』

 それが普通、か。確かに、異世界だもんな。あり得る。

「普通じゃ、ないけど」

『そのようだな。ハンペータがそこまで隠そうとするのだから、珍しいことなのだろう。で、どういうカラクリか、教えてはくれないのか?』

 そこまで言い当てたのだから、隠す必要は無いだろう、というわけだ。それは、僕もそう思う。

 けど、今までだって誰にもバレないように必死で隠してきたことだから、いざ説明しようと思うと、言葉が出ない。

 僕は、ベッドの上に起き上がると、ズボンを止めていた腰紐を解いた。百聞は一見にしかず、って言うし。言葉で説明できないんだから、見せるのが一番。

 見られてしまったら嫌われると思ってたものだから、それが普通なのかと思ってた、っていうその言葉が、僕を楽にしてくれたんだ。

 ズボンを下ろして、ルフィルに手招きをする。ルフィルも、僕がそれを見せようとしているのは当然わかって、そっと近寄ってきた。





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