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 いかに貧乏くじを引かされたかを怒り交じりに力説するゴルトの話を聞いて、セレは呆れた表情だった。

「そもそも、アザークには目ぼしい地下資源もなく、貧しい国だ。その神殿となれば、ほとんど何もないのも当然だろ?」

「普通、神殿って奴は金銀財宝の宝庫なんだ。国中の金持ちが競って高価な財宝を奉納するからな。あんなに何もないなんて詐欺だぞ」

「そんなもん、国庫の財政をちょっと調べれば予測がつくだろ。自業自得ってもんだ」

 両手を上に向けて広げ、首を振って呆れてみせるセレに、ゴルトはそれ以上反論もできず、チッと舌打ちした。
 腕を組み、乱暴に背もたれに身体をもたせ掛ける。

 とにかく、この海賊たちの事情は理解したセレは、改めてソファに座りなおし、ゴルトを見つめた。

「それで? 神子を攫う理由は聞かなかったのか?」

「聞かねぇよ。下手に裏事情を知ってると、雑念が入るからな。余計な色気は出さない主義だ。
 それに、王家の一族で、しかも神子なんて立場の人間を欲するんだぞ。政治的な思惑が絡んでるのは間違いないだろ。
 そんなもんを知った日にゃ、奴らと一蓮托生ってことになっちまう。俺はゴメンだね、そういう面倒くさいのは」

「じゃあ、騙された、ってのは?」

「うちの副船長に、さ。俺が大失敗して失脚するように仕組んだんだろ。陰険なあいつのやりそうなことだ」

 あ、そう。

 期待はずれを隠しもせず、肩を落とす。結局、セレにとっては何も有益な情報は得られなかったわけだ。がっかりもするだろう。

 そんなセレに、ゴルトは励ますように笑って見せ、その薄い肩を叩いた。

「乗り込むんだろう? 手を貸してやっても良いぜ」

 目的地も主語もない。だが、それだけでセレにははっきり伝わるのだ。この話の流れで他の選択肢はない。

 そのゴルトの押し付けがましい台詞に、セレは上目遣いに視線を返し、あからさまにため息を吐く。

「貸してやっても?
 そっちにはそっちの思惑があるんだろう?
 俺が男なのは見ればわかる。何食わぬ顔して依頼人の前から無事に退出できるとは思えないけどね?」

「……是非協力させてください」

 負けたのは、ゴルトの方だった。





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