III-1




 III


 この辺りは、昔とほとんど変わっていなかった。

 マキたちが溜り場にして宏紀もそのあと溜り場としていた空き地は、今もまだ空き地のまま残っている。家並みも電信柱もみなそのままで、ただ、明るかった電灯が点滅しているくらいの物だ。

 宏紀の自転車の隣にひいてきた自転車を置いて、忠等は懐かしい玄関をくぐった。

 家はきれいに片付けられて、昔と変わらずきれいでこざっぱりとしていた。昔から家事一般は宏紀の仕事で、このあたりに性格が表れるのだろう。

「変わらないな。昔と」

 二階に行ってしまった宏紀を居間で待ちながら、忠等はそう呟いた。変わったのは成長した彼らだけのように思えた。家具の配置もそのままで、まるで四年前に帰ってきたかのようだ。

「お夕飯、どうする?」

 いつのまにか戻ってきた宏紀に耳元でそう言われて、忠等は彼を振り返った。ポロシャツにカーディガンを羽織ったジーパン姿の宏紀は、昔と違って大きくなったことを実感させた。大きくなったなりの色気のようなものがあった。

「お腹すいた?」

 こいつを抱きたい。抱きしめたい。腕の中で思いっきり悶えさせてやりたい。そう思って聞いた。

 意地悪な聞き方だったかもしれない。だが宏紀にはその心が伝わったようだった。忠等に近づいた宏紀は、耳元に囁いて答えた。

「何食べたい?」

「宏紀」

 いいよ。軽く答えて、宏紀は笑った。その笑顔は天使のようで。

 昔のような、ガキの頃と同じ性急さで、忠等は宏紀をソファの上に押しつける。びっくりして忠等を見つめた宏紀は、やがてその身体を引き寄せた。

「ごめん、もう待てないらしい」

「それ、こっちのセリフ」

 きっとすごく無理をしているのだろう。その答えに忠等は感謝した。

 四年間の御無沙汰。きっとあそこは処女も同じだろう。ただでさえ、女のように受け入れるようにはできていないのだから。

「ごめん、サッカーしたから汗臭いかも」

「何言ってんだか」

 宏紀の言葉に笑って返した忠等は、宏紀の首筋に優しくキスをした。大好きな宏紀の匂いがした。




 甘い快感を必死に噛み殺す宏紀を見ながら、忠等はあれ?と思った。

 ある一部分だけ、触られるのを嫌がっているようなのだ。なぜか愛撫の手が横流しされてしまう。

 きっと、離れている間に大人になってしまったことを、宏紀は知られたくないのだろう。

 けれど、それこそ、今更だ。当時小学生だった宏紀が、今は高校生。まったく可能性がないわけではないのだろうが、いまだに子供のままでは、その方が驚いてしまう。

 忠等は意識してそれを握ってやった。愛撫を与えると、それはしっかりと張り詰めた。昔はなかった現象だ。あの当時、待ち望んでいた反応が、今手の中にある。

 知られたくないと、あの当時のままで抱いて欲しいと、そう思ってくれたのだろう。宏紀のそんな健気さが、愛しく思えた。

 昔、宏紀がしてくれたように、それをくわえて、優しく吸い上げる。宏紀は嫌がりながらも、あの甘い声を聞かせてくれた。

「愛してるよ」

 囁いて、宏紀を少しずつ高みに追い詰める。嫌だと宏紀は悶えたが、許してなどやらなかった。やがて耐えられなくなる。

 そもそも、耐えることを知らない身体なのだ。しかも自慰行為でないだけでなく、愛されているのだから、余計に煽られてしまうのも無理もない話。

 ガクガクと震えて、忠等の口の中に解放して、恥ずかしくて宏紀は目をつぶった。その頭を忠等が優しく撫でてやる。

「どう? 気持ち良かった?」

 目元に少しだけ涙を浮かべて、宏紀は小さく頷いた。嬉しくて、忠等は満面の笑みを浮かべて宏紀を抱き寄せた。





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