3 R
肌をすべるように胸から腹へなぞる手の感触を追って、ゾクリとしびれる感覚に息をつめる。
その手で自分のふくらみを下着の上から覆われた。
魔王との名乗りからは想像もつかなかった手の暖かさが快感で、深いため息に伴って声が洩れる。
「……あ……」
それは、他人の手で触れられたおかげで自分自身の変化も自覚させられることだった。
わずかに勃ち上がりかけたそれは、快感を感じ始めている証拠だ。
和磨の反応に気を良くして、魔王はそれを緩く握った。
やわやわと軽く揉まれただけで固くなっていくのは、若さのせいもあるがそれだけとは言い切れない。
別に相手が好きということでもないのだから、きっと魔王がコツをわきまえているせいなのだろう。
それにしても自分でするより断然気持ちが良い。
その理由だけでも、この目の前の男に身体を委ねてしまって良いと思えた。
唇が再び乳首を捉え、下着が器用に剥ぎ取られる。
感覚で追えるその動きは紛れもなく貞操の危機以外の何物でもないのだが。
一体何の根拠があるのか、和磨の本能が身を任せることを選択したらしく、理性で抑えられないはずの嫌悪感すら微塵も感じなかった。
それは、前を弄っていた魔王の手がその奥に隠された秘所に到達しても同様で。
蕾をあからさまに無理やり押し開こうとしているのに、身体は抵抗するどころかその手の動きを助けるようですらあった。
自分でも理解のできない本能の判断だが、まぁ、吐き気やら何やらを堪える破目になるよりはずっと楽なことは確かだ。
手の大きさに比例して太い指を、本来は排泄器官であるはずの後腔に受け入れて、BL小説で学んでいたように意識して身体の力を抜く。
確かにその方が痛みは薄れるらしい。
「一つ聞き忘れていた」
どうしても浅い呼吸しかできず少々酸欠気味の和磨に、腰に直撃の低い声で魔王が話しかけてくる。
促されて、脳内が疑問符に満たされた。
深く考える余裕もなく、思い浮かんだそのままに問い返す。
「んあ……ん、な……に……?」
「名前を、聞いて良いか?」
「ん、か……カズ……マ……」
「カズマ、か?」
こくこく。
声を出すことも辛くて、何度も頷いて返す。
それで肯定の意味は伝わったらしい。
「カズマか。なるほど不思議な響きだ」
その感想こそ不思議だったが、和磨に問い返す余力はなく。
枕を握り締めていた手を魔王の首の裏に移動させられて、素直にしがみつく。
探しもせずにわかっていたらしく、入り込んだ一本の指に前立腺を引っ掻かれて悲鳴とともに仰け反った。
「んあぁっ」
「そうだ。素直にその可愛い声を聞かせてくれ」
すかさず誉められて、身体に力が入らない。
まだ太いとはいえ指一本しか受け入れていなかったそこに、指の変わりに太いものが押し当てられても、まったく警戒心が湧いてこないことには自分自身が戸惑ってしまったが。
「……! あぁっ……」
いくらなんでも無理だろう、とどこかで冷静な自分が突っ込みを入れていても、和磨の腕は魔王にしっかりとしがみついて、拒否の仕草など微塵も感じさせない。
だがそれ以上に驚くのは、随分と奥まで太く長いものが挿し込まれているにも関わらず、痛みの欠片も感じていないことだろう。
魔王自身がどこかから分泌しているのだろう、自ら濡れることのないはずのその場所が、抜き挿しのたびにくちゅりと濡れた卑猥な音を立てている。
それが潤滑剤となって痛みを軽減しているのだろうが、果たしてそれだけが原因なのか。
「……はっ……あ、……ま……まお……さま?」
「ルーファウスだ」
乱れた息遣いで切れ切れに呼ばれて、魔王は自らの名を再度名乗る。
つまりはその呼ばれ方が気に入らなかったのだろうが、思考能力の低下している和磨はその分素直で、慈しむような声色で教えられたその名を繰り返す。
「ルー……ファ……ス」
「あぁ。どうした?」
「……キモチ……い……?」
「あぁ、もちろんだ。お前の生気は極上の味だよ。
そら、もっと良くしてやろう」
「ひぁんっ」
ベッドの上に座り込んだ魔王にグイと抱き上げられて下から深々と突き上げられて、その背にしがみつきながら背を仰け反らせて喘ぐ。
そろそろ、もう和磨の意識は保ちそうにない。
「っん……あっ、あぁっ……んっやぁっ……るぅっ……イッ……ちゃうぅ……っ」
「遠慮しないでイッて良いぞ。お前の最高の味を、俺に喰わせてくれ」
激しく攻め立てられて、快感だけを際限なくおしつけられて、和磨はさすがに少し苦しそうに眉間を寄せる。
それが嫌がっている証ではないことを良く理解している魔王は、似合わない眉間の皺に口付けを落とし、決定打のように一際深く突き上げた。
「んああぁっ!」
自分を陵辱する相手にすがりついて、甲高く悲鳴を上げ、強く目を閉じ天を仰ぐ。
ぎゅっと後腔がすぼまって魔王のモノを咥え込み、中で精がはじけたのを実感して、和磨はそのまま意識を手放した。
その瞬間、和磨の背中で大きな鳥の羽音が聞こえていたのだが、和磨がそれを知覚することはなかった。
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