終章にかえて




 ……結局、翌日の昼にようやく起き上がれるようになった俺は、最上位魔族の面々から改めて寿ぎの言葉をもらってしまった。
 もう、絶対みんな面白がってるのに違いないんだ。

 ちなみに、その日の昼ごはんは地上世界で食べたこの世界のオリジナル料理をアモンがアレンジしてくれたものだった。
 メフィストから俺が気に入っていたと聞いていたらしい。

 そうそう。
 メフィストは責任を感じてしまっていたらしくて、二ヶ月の不在の間、三日と空けずに魔王城を訪ねて来てくれていたそうだ。
 お礼を言ったら反対に謝られてしまった。
 地上の皆にも心配されているそうなので、そのうち挨拶に行かなくては。

 といっても、一番に心配してくれていたルーファウスの許可が下りるまではお預けだけれど。

「……何を書いているのだ? カズマ」

 ノートを覗き込んだルーファウスに首を傾げられてしまった。
 俺にこの世界の言葉を翻訳する力を授けてくれたルーファウスだったが、彼自身が日本語を読めるまでには至らないらしい。
 秘密を持つのに役立つ言語を覚えたものだ。
 あの世界に生まれたのは俺にとってはプラス要素だらけで嬉しい。

「こっちに戻って来てから今までの冒険の記録をつけてたんだよ」

「日記みたいなものか?」

「ん〜。いや、物語の形式で。もうおしまいなんだよ。異邦人カズマの冒険はこないだ終わっちゃったからね」

 これからは、漆黒の天使カズマの華麗な日常ってわけで。
 物語としては面白くないから、こちらには言及するつもりがない。

「ならばそれは書庫行きだな」

「そんなにちゃんとしたものじゃないよ。俺の部屋でお蔵入り」

「なんだ、もったいない」

 ブツブツと文句ばかり言われているけれど気にしない。
 こんなものをアスタロトあたりにでも読まれたらと思うと、背筋が凍る。
 くわばらくわばら。




 以上が、俺の身に降りかかった異世界トリップファンタジーの顛末だ。




おしまい





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