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 裏庭にいたのは、赤毛を伸びるに任せたようなボサボサのまま無造作に結わえた同年代ほどの少年だった。
 施設で教育を受けてから卒業してすぐ職に就くと聞いていたので、もっと年上を想像していたため驚いた。

 彼は自分の作業に集中しているようで、師匠がそこに姿を見せてもまったく気付く様子がなかった。

 そこにどっかりと置かれた岩に手をかざし、何事か念じている。
 何をしているのか見た目には不明だが、じっと集中して動かないその姿は鬼気迫る勢いがあって、圧倒されて声をかける隙もない。

 ところが、その師となる人にとっては声をかけ辛いとは思わなかったらしい。

 岩と彼の間に火花が散り、放電したようなバチバチッという音が響く。
 その火花に少し焼かれてしまったようで、彼は慌ててその場から数歩後ずさり、両手を痛そうに振りつつ周りを見回した。
 そこにいたのが師匠でしかも客人連れなのに気付いて、改めて走り寄ってくる。

「すみません、師匠!」

「魔力使いなら常に周囲に気を配れと何度言えば理解するのだ。
 魔力使いの役割は災害救助だぞ。
 二次災害を防ぐためにはまず自分の身の安全が何をおいても先だ。
 そのように周りを見られないほど集中していては自分も他人も守ることなどできん」

「はい。すみません」

 もう何度も同じことを注意されているのだろう。しょんぼりと肩を落としている。

 メフィストのその説明を聞いて、和磨はようやく災害救助の指す意味を理解していた。
 つまり、消防隊の役割なのだ。
 火事やら大雨やらで被災した民の救助が主な仕事で、いざという時に力を発揮するように日頃から修行を欠かさない。

 つまり、その大事な修行の時間に邪魔をしに来てしまった所だと理解して、和磨は申し訳なさそうに眉尻を下げた。
 紹介するために振り返ったメフィストには、気にすることはないと笑われるのだが。

「カズマ。これが私の弟子で、ユーリといいます。見ての通りまだ未熟者でしての」

「いえ。俺も若輩者ですから、どうかお気遣いなく。カズマです。お邪魔してすみません」

 相手が誰であろうと自分がどんな扱いを受けていようと常に謙虚であることを意識している和磨は、ここでも素直にペコリと頭を下げた。
 見た目から同年代か年下だろうとはわかるが、自分にできないことを為せる人物はそれだけで尊敬の対象だ。

 師匠の前では反発心も押さえつけられているようで、紹介されたユーリはただ軽く頭を下げて見せるだけで見るからに不機嫌だ。
 自分とそう変わらない若い男が師匠に敬語で話されて平然と受け入れているところが我慢ならないのだ。

 そんな弟子の心中を理解しているのかどうなのか、街へ出るのに少し準備があるからとメフィストは和磨をそこに残して家に戻っていく。
 和磨はそれを見送ると、家のすぐそばにポツンと残された腰かけるのに丁度良い岩を見つけて腰を下ろした。
 ユーリの邪魔にはまずならない位置で抗議もできず、ユーリはそれを無視することにしたようだ。





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